フッ素曝露と IQ 等(ADHD など神経発達や認知機能) の関係の NTP(米国毒性プログラム)報告の要約(紹介)
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本文とは関係ありません。
斑状歯とは ↑
フッ素洗口とと虫歯率は非相関関係
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故秋庭賢司さんが懇意にしていた、コネットさんの裁判には関心を寄せられている方が多くいらっしゃったと思います。
コンシューマネット・ジャパンでも以前のHPでご紹介しましたし、フッ素研究会の集会でも経過報告がされてきました。
https://web.archive.org/web/20220819023155/https://consumernet.jp/?p=8459
北海道の旭川市で歯科医院をされているフッ素研究会共同代表の清水央雄さんのレポートをご紹介します。フッ素研究会のHPにはフッ素問題についての有益な情報が掲載されています。
https://www.fluoridejapan.org/about-1
コネットさんの裁判の結果についての報告です。
フッ素曝露と IQ 等(ADHD など神経発達や認知機能) の関係の NTP(米国毒性プログラム)報告の要約
北海道かたくり歯科 清水央雄さん
2024 年 8 月に NTP 報告が出たのでわかりやすく要約して紹介します。 https://ntp.niehs.nih.gov/publications/monographs/mgraph08
(注:NTP は公衆衛生のため、有害物質に関して試験・研究・分析を行う 米国保健省公衆衛生局内の省庁間協力組織で、1978 年に設立された)
【背景】 フッ素は、さまざまな供給源から人へ曝露される。主に飲料水、食品、飲料、医薬品、歯科製品等に含まれるフッ素による。米国学術会議(NRC)による 2006 年の評価では、 飲料水に含まれる高濃度の天然フッ素は、脳神経への悪影響を認め、さらなる調査が必要 とされた。その根拠は、中国のフッ素症流行地域における歯と骨への影響であった。 NRC の評価以来、ヒトにおけるフッ素の IQ 等に対する影響を検討する研究は、かなり増 加している。最近は、北米における出生前のフッ素曝露に関する「前向きコホート研究(追 跡疫学調査研究)」もある。
2016 年、NTP は、IQ に対するフッ素の影響に関する動物実験から得られたシステマテ ィックレビュー(体系的評価)を発表した。そのシステマティックレビューでは、フッ素 に曝露されたヒト以外の哺乳動物において、IQ の低下が生じるという証拠の確かさは、 低~中程度のレベルであるとした。
【目的】
ヒトにおけるフッ素曝露と IQ 等(IQ や認知機能、あるいは ADHD などの神経発達)
の関係を評価するために、世界中の多数の研究報告をまとめてシステマティックレビュー (体系的評価)を行う。
【方法】
ヒトにおけるフッ素が IQ 等に関係する信頼できる研究は 100 あり、健康評価を実施するための標準化された OHAT システマティックレビューアプローチに従って、システマ ティックレビュープロトコルを作成し利用した。
【結果・成人】 最も一般的なフッ素曝露評価指標は、飲料水フッ素濃度および尿中フッ素量などから推定される総フッ素曝露量であった。成人では、認知機能の影響を検討した質の高い(バイ アスリスクが低い)研究は 2 件(フランスの Jacqmin 1994 と中国の Li 2016)のみであっ た。
ともに高齢者集団(60 歳以上、または 65 歳以上)だった。2 件ともフッ素曝露が多いほど、認知機能の障害が強かった。
質の低い(バイアスが高い)研究は 8 件あり、そのうち 5 件が、フッ素曝露と認知機能
障害の関係があった。質が低いのはアルミニウム曝露や喫煙の影響などのバイアスである。
【結果・小児】 1、フッ素曝露と IQ との関係
小児におけるフッ素曝露と IQ との関連の論文は 72 あった。ほとんどの研究は飲料水 フッ素濃度、または尿中フッ素濃度を指標とした。72 のうち 19 件は質が高いと考えられ、 19 のうち の 18 件は、フッ素曝露量と IQ との間に逆相関(フッ素曝露が多いと IQ に悪 影響)があると報告した。18 の研究は、5 つの国(中国・メキシコ・カナダ・インド・イ ラン)で実施された。(Bashash 2017, Choi 2015, Ding 2011, Cui 2018, Green 2019, Rocha-Amador 2007, Sexene 2012, Seraj 2012, Sudhir 2009, Till 2020, Trivedi 2012, Wang 2003, Yu 2018, Zhang 2015)
例えば、Bashash の報告では、母親の尿中フッ素濃度が 1ppm 増加すると、生まれた子 どもの IQ は、5 ポイント下がるとした。
また、Green の報告では、母親の尿中フッ素濃度が 1ppm 高いと、生まれた子どもの IQ は 4.49 ポイント下がるとし、母親が 1 日に摂取するフッ素量が 1 mg多くなると、生まれ た子どもの IQ は 3.66 下がるとした。
なお、1 つの研究のみ、相関関係を認めなかった。(Soto-Barreras 2019 メキシコ)
上記 19 件以外の残り 53 件(10 か国で実施)のうち 46 件も、フッ素曝露量と小児の IQ との間に逆相関(フッ素曝露が多いと IQ 等に悪影響)があった。53 件の研究が質が低い(バイアスが高い)としたのは、ヒ素の影響を考慮してない、あ るいはフッ素入り歯磨剤の影響を考慮してないからである。
2、フッ素曝露と ADHD 等の神経発達または認知との関係 バイアスリスクが低い(質の高い)フッ素曝露と ADHD 等の神経発達または認知機能との関係の研究は 9 あり、中国 3、メキシコ 4、カナダ 2 の研究だった。ほとんどは飲料 水または尿中フッ素濃度(小児または母親)を指標とした。
9 研究中 8 研究が、フッ素曝露量と ADHD 等の神経発達または認知機能との関係を認 めた。例えば Bashash 2018 では、Conners Rating Scales-Revised(CRS-R)を用いて 6 ~ 12 歳を観察すると、母親の妊娠期間中の尿中フッ素濃度が 0.5ppm 高いと、子どもの ADHD 様症状は 2.84 ポイント増加した。
【結論】
1フッ素の摂取量と IQ は逆相関関係がある(フッ素の摂取量が多くなるほど IQ が低下 する、悪影響が大きくなる)
2フッ素の摂取量と ADHD 等の新駅発達または認知機能と関連がある(フッ素の摂取量が増えると ADHD 様症状が増加する。
(資料1 NTPレポート本文の日本語訳)
フッ化物曝露と神経発達および認知に関する科学の現状に関するNTPモノグラフ:系統的レビュー
報告日:2024年8月発売
要約
バックグラウンド
フッ化物は、さまざまな発生源から来ている私たちの環境での一般的な曝露であり、その歯科および全体的な口腔の健康上の利点のために広く宣伝されています。個人の総曝露に占める割合は、主に飲料水、食品、飲料、歯科用製品に含まれるフッ化物によるものです。全米研究評議会(NRC)による2006年の評価では、飲料水中の高濃度の天然フッ化物の消費とヒトの神経学的悪影響との関連が支持されていることがわかり、さらなる調査を推奨した。その時点でレビューされた証拠は、中国の歯と骨格のフッ素症流行地域からのものでした。NRCの評価以来、ヒトにおけるフッ化物の認知的および神経行動学的影響を調べる研究の数と場所は大幅に増加しており、これには出生前のフッ化物曝露を評価した最近の北米の前向きコホート研究がいくつか含まれている。
2016年、National Toxicology Program(NTP)は、フッ化物が学習と記憶に及ぼす影響に関する実験動物実験の証拠の系統的レビューを発表しました。このシステマティックレビューでは、フッ化物に曝露された非ヒト哺乳動物に学習と記憶の欠損が生じるという、低レベルから中程度の証拠が見つかりました。
目的
ヒト、実験動物、および機構に関する文献の系統的レビューを実施して、フッ化物曝露とヒトの神経発達および認知への影響を関連付ける証拠の範囲と質を評価すること。
方式
システマティックレビュープロトコルは、文献に基づく健康評価を実施するための標準化されたOHATシステマティックレビューアプローチに従って開発され、利用されました。このモノグラフは、フッ化物曝露と認知的または神経発達的な健康への影響を関連付ける証拠の現状を示し、研究の質と信頼水準の事前定義された評価を組み込んでいます。口腔の健康に関するフッ化物の利点は、このモノグラフでは取り上げられていません。
業績
実験動物実験の本体とヒトの機構的証拠は、フッ化物曝露とヒトの認知的または神経発達的な健康への影響との関連を明確にしていない。人間の機構研究は、生物学的な妥当性について決定を下すには、あまりにも不均一で数が限られていました。
このシステマティックレビューでは、成人と小児の両方において、推定されるフッ化物曝露と認知機能または神経発達への影響との関連を評価した研究を同定し、別々に評価した。最も一般的な曝露評価尺度は、尿中フッ化物などのバイオマーカーに反映されているように、飲料水濃度と総フッ化物曝露の推定値でした。成人では、認知効果を調べた質の高い横断研究は2件しか利用できなかった。小児を対象とした文献はより広範で、知能指数(IQ)を評価する研究と、その他の認知または神経発達のアウトカムを評価する研究に分かれていた。他の認知または神経発達のアウトカムを調べた9件の質の高い研究のうち8件は、推定フッ化物曝露との関連を報告していた。72件の研究で、小児のフッ化物曝露とIQとの関連が評価された。これらの研究のうち19件は質が高いと考えられていた。これらのうち、18人は、推定フッ化物曝露と子供のIQとの間に逆相関があることを報告しました。3つの前向きコホート研究と15の横断研究を含む18の研究は、5つの異なる国で実施されました。小児を対象とした53件の質の低い研究のうち46件では、推定フッ化物曝露と小児のIQとの間に逆相関の証拠が見られた。
議論
既存の動物実験では、フッ化物への曝露がIQに影響を与えるかどうかという問題について、ほとんど洞察が得られていない。さらに、ヒトにおけるフッ化物曝露と機構的データを評価した研究は、生物学的な妥当性について決定を下すには、あまりにも不均一で数も限られていた。成人を対象とした研究から得られたエビデンスも限られており、フッ化物曝露が成人の認知機能への悪影響と関連しているという確信度は低い。しかし、子供のフッ化物曝露とIQとの関連については、多くの証拠があります。また、フッ化物への曝露が子供の他の神経発達および認知への影響と関連しているという証拠もいくつかあります。ただし、アウトカムの不均一性のため、これらの他の効果に関する文献の信頼性は低い。このレビューでは、中程度の信頼性で、推定フッ化物曝露量が多い場合(例えば、飲料水のフッ化物濃度が世界保健機関(WHO)の飲料水品質ガイドラインであるフッ化物1.5mg/Lを超える場合など)は、小児のIQ低下と一貫して関連していることがわかった。フッ化物への曝露が少ないことが子供のIQに影響を与える可能性を完全に理解するには、さらなる研究が必要である。
国家毒物学プログラム(NTP)。2024. フッ化物曝露と神経発達および認知に関する科学の現状に関する NTP モノグラフ: 系統的レビュー。ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク:国立毒物学プログラム。NTPモノグラフ08。https://doi.org/10.22427/NTP-MGRAPH-8
ウェブページの最終更新日2024年8月22日
NTPは、国立衛生研究所の一部である国立環境衛生科学研究所に管理本部を置いています
資料3 コネット裁判、コネットさんからのメール報告
2017年アメリカカリフォルニア州で、1つの裁判が始まりました。原告は「フッ素化に反対する母親の会」。フッ素入り水道水が、子どもの健康に害を与える可能性を巡って起こされた裁判でした。弁護士となったのはポール・コネット氏とその息子のマイケル・コネット氏。親子2代にわたってこの裁判を戦い続けました。
判決が出るまでに時間がかかり、日本をはじめ世界中のフッ素研究者がその推移を見守っていました。
そして2024年9月。カリフォルニア州北部地区連邦裁判所で判決が言い渡されました。そしてその結果は、マイケル・コネット氏からのメールで、日本フッ素研究会のメンバーに伝えられました。
以下はそのマイケル・コネット氏からのメール(翻訳)です。
勝った!連邦裁判所、フッ素添加化学物質が健康に「不当なリスク」をもたらすと判決
親愛なる友人の皆様、
歴史が作られた。 水道水へのフッ素添加が脳の発達に及ぼすリスクをめぐり、米国環境保護庁(EPA)に対して7年間に及ぶ訴訟を起こした後、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所は、 連邦裁判所は、先例となる裁判でフッ化物アクションネットワークと原告の代理として判決を下しました。米国連邦裁判所は、フッ化物添加は子供の健康に対する「不当なリスク」であると判断、EPA はフッ化物添加をそのように規制せざるを得なくなります。判決は私たちに非常に有利な内容で、明日全文をお伝えします。以下は判決の序文からの抜粋です。
「本裁判所が審理する争点は、原告が証拠の優越性によって、米国で一般的なレベルの飲料水のフッ素化が、改正TSCAの意味において公衆の健康に不当な危害を及ぼすリスクを生じさせることを証明したかどうかである。以下に述べる理由により、本裁判所はそう判断する。具体的には、米国で現在「最適」とみなされているレベルである1リットルあたり0.7ミリグラム(「mg/L」)の水道水のフッ素化は、子供のIQを低下させる不当なリスクを生じさせると本裁判所は判断する。本裁判所は、そのような危害の不当なリスクがあり、EPAが規制対応に取り組まなければならないほどのリスクがあると判断する。しかし、本裁判所の判断を前にEPAができないことが1つある。それは、そのリスクを無視することである。」
この瞬間、私はマイケル・コネット弁護士がこの訴訟を追及し、あらゆる段階で努力を先導してくれたことを称えたいと思います。彼は、FAN の私たち全員にとって真のスーパーヒーローです。共同原告や、寄付をして訴訟を広めてくれた皆さんを含め、他の多くの素晴らしいチームメンバーもこの訴訟の実現に関わっており、彼らには大きな感謝と感謝の意を表します。今晩、どこにいても、この記念すべき瞬間を少しだけ祝ってください。7 年経った今、私たち全員がそれに値するのです。
フッ素研究会にご参加希望の方は下記にお問い合わせください。
umineko@seagreen.ocn.ne.jp(清水さん)