託送料金上乗せ訴訟 続報 待たれる最高裁の英断

託送料金裁判は2020年10月15日に福岡地方裁判所に提訴後、電気料金の決め方だけでなく国民に関わる重要なことが国会審議を経ずに一省庁の独断で決定・施行されていく異様さなど、この裁判を通して見えてきたことについて、グリーンコープ共同体での取り組みは大手マスコミからの取材に加え、下級審での判決に対して批判的な学者からの評釈が出るなど、世論を巻き込んだ関心が高まってきています。

年明けには判決が出るのではないかと言われている中、訴訟の事務局の中心である東原さんの2026年1月22日のグリーンクラブ第37期新春のつどいでの挨拶を紹介します。

最高裁判決への期待 

グリーンコープ共同体 東原 晃一郎 さん

昨年7月、皆さんに、本訴訟は最高裁へ上告し、半年程後に判決が出されるであろうと、ご報告しました。それが近づいています。あらためて、お手元にある『共生の時代 第499号号外』をご覧なさってください。

託送料金裁判 最高裁へ〜問われる原発政策の危うさと電力システム改革の行方を問う!

最高裁に何を問うているか。それは「司法は法を守り抜いてほしい」ということです。普通に生きる人の普通の考え―この訴訟でいえば、事故を起こした者が事故の賠償を行なうべきであり、事業を営む者が事業施設を廃止すべきであること、経済産業省が国民に分からないようにその責任を負わせる仕組みをつくったのはおかしいと思うこと―が踏みにじられてませんか、法はそんなことを許していないのではないですか、ということです。その判断を回避して(第一審)、国ですら言わない理屈をこねて(第二審)これを許した原審は間違っていると、法を守る最高裁に判示してもらいたい、ということでした。

また、最高裁上告を通して、これまで以上に多くの人たちにこの問題を知ってほしいと考えました。

お手元にあるもう一つの冊子「知って作ろう未来!! ワクワク託送料金取消し訴訟」もご覧ください。静岡のお母さんたちが学生と力をあわせて作ってくださったものです。これを読む人たちが静かに広がっています。

加えて10月に、岩波書店が刊行する『環境と公害 第55巻第2号』で「グリーンコープ訴訟が提起する原発の費用負担問題」という特集が掲載されました。その中から。

〇適切に法令解釈を行えば、あらゆる意味で、託送料金に、賠償負担金と廃炉円滑化負担金を含ませて徴収するという経済産業省の措置・省令改正は誤りである。しかし、深刻な問題となっているのは、経済産業省がその誤りを認めるどころか、現在、新たに、省令改正だけで、原子力発電の新規建設コストなど発電事業のコストを、託送料金に含ませて徴収しようとしていることである。発電事業のコストを、発電事業者でなく、託送料金に含ませて徴収することは、電力自由化による効率化のメカニズムを破壊する。

《弁護士 小島延夫》

〇これらはいずれも、通常の会計では特別損失として処理されたものを営業費に含めるようにする電気事業会計規則(注:省令のこと)改正の結果として、従来は料金に含まれなかったものが料金原価に算入されている項目である。グリーンコープでんきは、これらが本来託送料金に入るべきではないという考えのもと、契約者から徴収することはしていない。

《立命館大学 金森絵里》

〇グリーンコープ訴訟で争点となっている経産省による原発の支援策は、電力システム改革の本来の趣旨に矛盾する。自由化によって市場機能や消費者の選択権を発揮させ、原子力から再生可能エネルギーなどの分散型電源への移行を推進する改革の趣旨に反して、市場機能を歪め、商社の選択権を狭め、原子力という電源とそれを所有する既存事業者を特別に優遇するものである。

《法政大学 高橋洋》

〇グリーンコープの皆さんが問題提起を、市民サイドからされたことが非常に重要な意味を持っていると思います。…今のエネルギー問題で、常になぜか安定供給で、脱炭素というとすぐ原子力と結びつけるというこのあり方が、実は、研究者としても、解き明かさなければならない課題です。市民からの率直な問いかけは、実は社会を動かす重要な論点であることが多いのです。…最高裁で勝利されるよう祈っておりますし、私たちも応援したい、今後も一緒に頑張りたいと思います。

《龍谷大学 大島堅一》

その他の媒体においても。1つは、本日刊行された、別冊NBL№197『民事判例研究3(2025年上期)』の「注目裁判例研究 環境」から。

グリーンコープでんきが指摘するとおり、被告原判決がその根拠として挙げる「電気事業審議会基本政策部会報告」(平成11年1月21日」)、平成11年の電気事業法改正における議論(原判決の別紙3参照)において、公益的費用を託送供給制度によって回収することが想定されていたと結論づけることは困難であると思われる。……本判決は、「託送料金を通じて需要家から賠償負担金を回収することは、[原賠]法3条において原子力事業者が責めを負う原子力損害の賠償のために備えるべきであった資金をどのように確保するかという問題であり、需要家に対して原子力損害の賠償の責めを負わせるものではない」と判示する。しかし、原賠法は、損害賠償責任の所在のみならず、損害填補費用の終局的負担者に関するルールも定めていると解されることから(原賠法5条参照)、損害填補原資の終局的負担者の変更は、法律によらなければならないと解される。前述の原賠機構法は、損害填補原資の終局的負担の分散を図ったものであるが、賠償負担金の仕組みは、経済産業省令によって創設されたものであり、法律に基づくものではない。原賠法・原賠機構法によって設定されている費用負担ルールを省令によって変更し、需要家一般から強制的に損害填補原資を徴収することは許されないと思われる。

《京都大学 島村健》

昨年12月12日に開催したグリーンコープ脱原発大集会でのパネルデスカッションからの発言として。

〇「何か、おかしい」ということが、グリーンコープでんきさんの託送料金訴訟の始まりになったとお聞きしました。この「何か、おかしい」は、まさにその実質的な、実際的な市民感覚だったと思います。そして、その市民感覚のおかげで、電気事業会計が信頼できない、歪んだものになっていることが広く知れ渡ることになりました。私も今後30年は、命のあるかぎり、この問題を発信していきたいと申しましたが、それは、市民感覚を電気事業会計規則に反映していきたい、ということでもあります。今の電気事業会計規則は、日常の生活に基づく市民感覚に、不安や心配を与えるものになっていますから、これを変えていかなければならない。…原発会計や電気料金の問題は、専門家の問題でもあり、また一般の人の問題でもあります。一見、会計や料金やお金のはなしは、私たちの日常生活から見るととるに足らないことかもしれません。もちろんお金は大事ですが、子供の成長をみること、季節の移ろいを感じること、大切な人と最後の時間を過ごすこと、などにくらべると、どうでもいいことだとも言えます。原発会計や電気料金は、その計算方法をちまちま(?)考えている会計専門家に、まかせておけばよい、と思われるかもしれません。ですが、専門家というものは以上申し上げたような様々な限界をもっていますから、放っておくと制度は信頼できない歪んだものになり、私たちに不安や心配を与えてしまいます。ですから私たちは、原発会計や電気料金の問題を専門家に任せるのではなく、市民感覚から問題提起をしていくということが大切ではないかなと思います。これを実行したのが託送料金訴訟です。私はこの意味で、グリーンコープさんの訴訟は、社会にとって、非常に重要なものだったと、いくら強調してもしすぎることはないと思っています。

《立命館大学 金森絵里》

ともあれ、最高裁判決は近づいています。勝てばこう言えるでしょう。

間違いは正されました。賠償負担金(原発事故の賠償費用)も廃炉円滑化負担金(原発廃炉の費用)も、そうしたものを新たに設ける必要があるかないか、あるとしたとき原子力発電事業者ではない全国の新電力事業者とその利用者である国民が負担すべきものなのか、それを決めるのは今を生きて、未来をつくる自由と責任をもっている国民自身であり、その国民が選んだ国会によらずに、国民が選ぶことのない経済産業大臣や経済産業省の人がそれを決めるのは間違っている、となりました。法律や社会、いわば主権者と主権者から業務やときに権限を委託される者の関係の根幹について、信頼できる判決をもらえました。これは、「わたしが生きることに関わる決定を、わたしの意思によらず、他者がすることは認められない」という、グリーンコープがもっとも大切にしていることともつながるものです。

負ければこの逆となるでしょう。

そして、勝とうが負けようが、次のように考えるでしょう。

これからも、おかしいと思うことがあれば話しあい、問題提起を続けていきます。そして、私たちの大切なグリーンコープでんきを通して、地域に寄り添い根ざす自然エネルギー発電所づくりを進め、原発によらずCOフリーの電気を使う仲間を増やしていきます。脱原発を願う人たちと手を携えて歩んでいきます。

国、経済産業省は原発回帰を進め、託送料金を通じて「既存原発の安全対策工事費(数千億円単位です)」を国民に負担させる(東京電力柏崎刈羽原発6号機もその対象となるようです)策も動きはじめ、さらに「新設原発建設費用の融資(兆円単位です)」に充てる国民負担ということまでも画策されているようです。前者は省令ですらなく、他方、後者はさすがに国会で法制定を考えていると聴きます。

これらの他、たいへん大きな問題と考えられるのが、これからの脱炭素世界の構築に関わって、発電における<COフリー(二酸化炭素を排出しないこと)>というのが重要になっていきますが、現在、経済産業省は、太陽光発電が二酸化炭素を排出しないにも拘らず、「FIT適用を受ける太陽光発電はCOフリーと呼んではならない」とする省令をつくり、理不尽な規制をかけています。これは、あるものが何ものであるかについて正しく自分を表現することを禁じ、かつ、太陽光発電をおこなう事業者への多額の経済負担をもたらすものとなっています。

これからも、これらを予断も油断もなく注視していきたいと考えています。


(参考)

*2026年1月20日、託送料金訴訟の弁護団長である小島延夫弁護士の阻止ネットでの講演のレジュメ

託送料金訴訟

*原価参入に異議を唱える論文

商事法務(NBL) 2025年上期 注目判例研究/環境 京都大学教授 島村 健

*環境と公害 第55巻第2号

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