ダークパターンに惑わさられないで!シンポジウムの紹介
公正取引委員会委員長の記者会見より
◆ 国際シンポジウムの開催について
本日は、本年3月14日の金曜日に競争政策研究センターが東京都内の会場で開催いたします第23回国際シンポジウムについてご紹介いたします。本シンポジウムのテーマは、「ダークパターン~人を欺くウェブデザインに対し競争政策が果たす役割~」です。
まず、「ダークパターン」とは何かですが、「ダークパターン」について明確な定義はないようであります。しかし、OECDが2022年に出した報告書によれば「消費者を誘導し、欺き、強要し又は操って、多くの場合、消費者の最善の利益とはならない選択を消費者に行わせるもの」とされています。
「ダークパターン」と呼ばれる行為には様々な行為がありますが、例えば、商品の閲覧や購入を行う際に、消費者に対して会員登録を強制する行為や、消費者にとって重要な情報を見えにくくさせる行為、また、サービスへの登録は簡単にできるものの、解約することを困難にすることで、消費者の行動や選択を妨害する行為などが「ダークパターン」と呼ばれております。
こうした「ダークパターン」は、消費者などの利用者に不利益をもたらす側面があるだけではなく、ダークパターンを利用する事業者と、そのような手段を利用しない事業者の間における公正かつ自由な競争を阻害する懸念があり、独占禁止法や競争政策の観点からも、どのように対応していくべきかなどについて検討することが必要であると考えております。
本シンポジウムでは、「ダークパターン」という概念の提唱者であるハリー・ブリヌル氏や、米国の競争法の専門家、日本の消費者政策の専門家などをお招きいたします。これらの皆様には、「ダークパターン」の現状、国内外における規制の動向や今後の課題などについて講演してもらうとともに、「ダークパターン」に対する競争政策からのアプローチの在り方などについてパネルディスカッションも行う予定であります。
本シンポジウムは、日本経済団体連合会の後援を得て、日本経済新聞社、公正取引協会の共催により開催するものです。参加申し込みにつきましては、本日から受け付けを開始しておりますが、開催場所や登壇者、各講演のテーマなどにつきましては、ウェブページにも掲載いたしましたので、御参照いただければと思います。オンラインでも御参加いただけますので、奮って御参加いただきますようお願い申し上げます。
私からは以上です。
◆ 質疑応答
(問)シンポジウムでは、ダークパターンに関して、独占禁止法や競争政策へのアプローチについて検討するということですが、アメリカなどの動向では、アマゾンプライムなどに関してもFTC法で提訴等がされていると理解しています。FTC法と日本の独占禁止法では違いがあると思いますが、現時点で独占禁止法の中でダークパターンについてアプローチ可能な条文が存在するのか教えていただけますでしょうか。
(事務総長)ダークパターンと呼ばれる行為といたしましては、様々なものがあると承知をしております。競争政策研究センターの事務局においては、ダークパターンと呼ばれる行為にはどういうものがあって、それらの行為が独占禁止法で不公正な取引方法として禁止されている行為、例えば欺瞞的顧客誘引などとの関係でどのように考えられるかなどについて検討しております。
(問)独占禁止法の不公正な取引方法として禁止されている行為は今後検討されると思いますが、例えば、欺瞞的な行為だと認定する場合は、今後新たにガイドラインを作成されるのでしょうか。
(事務総長)まず、どういう行為がそもそもあって、それが現行の法律で適用でき得るものなのかという辺りを、まずは考え方を整理する必要があると考えております。
(問)シンポジウムを経て、今後、公正取引委員会の中で考え方を整理するという流れでよろしいでしょうか。
(事務総長)そうですね。現在でも事務局ではいろいろ考え方は整理しているところですが、シンポジウムにおける議論なども踏まえて、今後の対応を考えていきたいと考えています。
(問)先ほどの質問への追加の形になりますが、競争政策研究センターではダークパターンについて既に何らかのペーパーを出しているのでしょうか。
(事務総長)現在はまだそういうペーパーを出してはいないです。
(問)確かに独占禁止法の中に欺瞞的顧客誘引という条項がありますが、欺瞞的顧客誘引で執行した事例は余りないと理解しています。公正取引委員会のダークパターンに対する現在の考え方としては、ダークパターンの中身を学び、独占禁止法上どのような課題があるかを検討していくということでしょうか。
(事務総長)現在のところ、ダークパターンはそもそもいろいろな行為があり、独占禁止法上違法にならない行為もあるでしょうし、なると思われる行為もあるかと思います。仮に独占禁止法を適用するに当たっては、どういった行為がどの類型に当てはまり得るのかということは、よく整理をする必要があると考えておりますので、今回のシンポジウムにおける成果なども活用いたしまして、今後の独占禁止法の運用などを検討することとしたいと考えております。
(問)消費者庁でもダークパターンに対する関心が強く、公正取引委員会と消費者庁が共管している部分もあると思いますが、役割分担と今後のそれぞれの連携などについて教えていただけますか。
(事務総長) 消費者庁においては、私ども承知している限りで、素案という段階のようですけれども、先般、意見募集手続に付された次期消費者基本計画の素案において、ダークパターンについての記載がされているようでございます。ダークパターンについて消費者庁とは、その研究について意見交換を行うなど、現在連携をしているという状況であります。
[事務総長定例会見ページ]
・令和7年2月12日付 事務総長定例会見記録
(URL)
https://www.jftc.go.jp/houdou/teirei/2025/jan_mar/250212.html