第42回日本フッ素研究会 全国集会の報告 フッ素で IQ低下の事実 血清Ca低下、歯磨き剤等の複合摂取
2022年11月23日午前10から午後4時まで、第42回日本フッ素研究会が開催されました。主催者であるフッ素研究会の秋庭賢司さんのご報告と当日の冊子のご紹介をします。
フッ素研究会 秋庭 賢司
第42回日本フッ素研究会・全国集会は、2022年11月23日午前10から午後4時まで
80名が参加し、昨年に引き続き今回もネット上での開催となった。今回のプログラムは午前中に、米合衆国から3人が講演し、午後はフッ素洗口によるカルシウム濃度の低下、フッ素入り歯磨き剤などの多重摂取への批判、そして札幌市でのフッ素洗口を推進するための条例反対運動など、多彩な内容であった。
また参加者には、事前にフッ素研究第41号のPDF版が配布されていた。(注文方法は末尾)
開会の挨拶の後、前セントローレンス大学教授で化学物質の毒性学が専門のポール コネット氏により、昨年日本フッ素研究会で講演した内容の短縮、改訂版の報告があった。
フッ素が子どものIQを低下させる
コネット氏は、細菌や真菌類などのある種の下等生物は、高濃度フッ素が“フッ素搬出タンパクを産生する遺伝子のスイッチをオンにする:フッ素を排除し身を守るシステムがある” (FEX-proteins, 参照Breaker et al. 2012)、ヒトは骨などにフッ素を蓄積固定化させ血中濃度の上昇を防いでいる、また取り込んだフッ素の半分は尿などから排泄している。フッ素は排除すべき物質である、と述べた。さらにフッ素化された水道水で溶いた人工乳で育てると
母乳の300倍フッ素を摂ること、ハーバード大学研究(2012年、システマティックレビューとメタアナリシス)では、フッ素は発育中の脳に悪影響を与える、との報告をされた。
その後、フッ素がIQ低下やADHDを引き起こすというカナダ、メキシコ、合衆国の疫学研究を紹介し、これらは合衆国政府の資金で実施されている、との詳細な説明がされた。
結論として、子どものIQの1点の低下を防ぐには母親の尿中フッ素濃度は0.2mg/Lを超えてはならない(Grandjean, 2021)。合衆国の水道水フッ素化の濃度である1ppmはこの5倍であり、0.7ppm(CDCの推奨レベル)はこの3.5倍である、と訴えた。
次の講演者であるクリス ノイラス博士(合衆国環境団体の科学顧問、国際フッ素学会誌編集委員)は、フッ素の神経毒性に関するNTP( National Toxicology Program’全米毒性プログラム)レポートの論評をした。全米毒性プログラムは、フッ素の神経毒性について、全てのエビデンスに関する複合的で系統的な評価を行ってきている。新報告ではフッ素は神経毒として分類された。
①フッ素暴露と神経発達及び認知機能への影響に関する系統的評価として、ヒトでの149研究のうち質の高い研究を選択した。
②質の高い27研究のうち25研究で統計的に有意な副作用を確認した。内訳は0.7mg/L(0.7ppm)以下または相当へのフッ素暴露研究(11)、1.5mg/L以下または相当へのフッ素暴露研究(4)、1.5mg/L以上または相当へのフッ素暴露研究(10)。
③メタ回帰分析によるベンチマーク用量評価: BMR では、IQが1ポイント下がるフッ素濃度は0.3 mg/L(0.3ppm)であるとした。コネット氏の結論(0.2ppm)とほぼ同じである。
さらにマイケル コネット弁護士がEPA(米国環境保護庁)を提訴した最近の裁判に関する進展を報告した。実際はコネット氏の講演を途中で切り上げて、マイケル氏の合衆国連邦地裁での裁判経過コメントがされ、登場した。予定にはなかったサプライズである。
合衆国連邦地裁での裁判経過
虫歯予防の水道水フッ素化は違法として、科学者、環境団体や母親グループが訴えた裁判はすでに4年が過ぎ裁判の引き延ばしにあっている。裁判所は、フッ素が脳の発育に与える影響をまとめたNTPレポート(政府刊行物)の最終出版を2年も待っているが、未だ明確な理由もなく発行されていない。
以下裁判のまとめ
10/27(木曜日)日本時間で朝7時30分から45分間カルフォル二ア北連邦地裁で
フッ素裁判のヒアリングがあった。
原告側代理人のマイケル コネット弁護士(コネット氏の子息)が今までNTPレポートが出版されない理由を問うた。EPAの代理弁護士は明確な回答を保留した。
裁判官の指示による以下の要請
- EPAは責任を持ってNTPレポートが出版されない理由を明らかにすること。
- 裁判官は未だレポートのレビュー(査読)が終わらない理由を、ワーキンググループの責任者に問うこと。
③ 原告側はNTPレポートの草案が出た2020年9月以後の 論文新情報 を報告すること。
次回の裁判は2023年 1/10 午後2時30 開廷。少しは進展があったが、判決はまだ先になりそう。
- 原告側は、NTPレポートの最終版の出版を待たずに、2020年以後の論文を根拠に新たな裁判を起こすことも検討している。
(米国で始まり米国で終わらせる、フッ素洗口はもともと水道水フッ素化の次善の策)。
注)NTP(National Toxicology Program’s Review:フッ素が脳に与える影響を調べた全米毒性プログラム)政府刊行物(HHS:厚労省に相当)である報告書:
NTP報告書をもみ消そうとする被告
フッ素がヒトに及ぼす神経毒性の科学的評価をまとめたNTP報告書は、2023年に出版されそうだ。裁判の原告代表(弁護士)は、報告書の査読は今年の5月に終えているにも拘わらず、今日なお公開されていないことをつい最近になって知った。裁判所は来年1月の正式審理準備手続のための会合(*status hearing= pre-trial meeting) でNTPの最終報告書を請求している。NTPレポートでは低フッ素濃度暴露による首尾一貫性のある害作用が示されている。そして被告達は最近、最終報告書が公開されるのを恐れて報道発表を忌避し、その信用性を貶め、死に物狂いでもみ消そうとしている。
*アメリカでは,法律と事実認定に素人の市民で構成される陪審で裁判をするのが原則であるために長期の審理が不可能である。そこで,トライアルtrial(正式審理)では集中審理,直接主義,口頭主義が貫徹され,これを可能とするために,ディスカバリーdiscovery(トライアルの前に相手方や第三者から証拠等の情報を得る制度)やプリトライアル・コンファレンスpre‐trial conference(正式審理準備手続のための会合)等,トライアル準備の制度が設けられている。また,西ドイツでは,訴訟促進のために〈簡素化法〉を制定(1977施行)した。
コネット氏の講演で引用されたハーバード大のグランジーン教授が、国際子どもと環境学会のHerbert Needleman賞を受賞した。受賞理由は、永年の低濃度化学物質(メチル水銀、鉛、PFAS,フッ素など)が発育中の脳に与える影響の研究、及び科学者としての誠実さに対してである。氏は昨年6月のフッ素裁判の集中審議でも証人として証言している。また受賞に際して、ハーバード大学公衆衛生学部と歯学部からフッ素の脳に与える影響に関する論文を撤回するよう圧力を掛けられた、と話している。
虫歯予防のフッ素応用に伴う唾液(血清)中カルシウムの減少とそのメカニズム
質疑の後、1時間の休憩を挟んで、午後は、秋庭による「虫歯予防のフッ素応用に伴う唾液(血清)中カルシウムの減少とそのメカニズム」と題する講演で、その内容は
- カルシウムの分布と生理学的意義 ②フッ素洗口に伴う唾液中カルシウムの減少
- フッ素症の増加 ④血中フッ素濃度濃縮のメカニズム、であった。
フッ素洗口(週1回法、450ppm)による保育園児の口腔内カルシウム濃度は、1年後に19.3%減少しており、血中カルシウムの減少が推定され、歯フッ素症等の害作用が危惧される。そもそもWHOは、6歳以下のフッ素洗口を禁忌としている、との報告であった。
フッ素含有常用薬品からのさらなる追加摂取の危険性
続いて、清水央雄氏による「フッ素の多重摂取問題」では、虫歯予防フッ素の重複(歯磨き剤、洗口、ゲル塗布など)よるフッ素の過剰摂取、またフッ素含有常用薬品からのさらなる追加摂取の危険性が報告された。また日常生活で摂取する有機フッ素の影響も話題にされた。米軍基地をはじめ水汚染が問題となっているが、虫歯予防の無機フッ素とは桁違いの少量で有害性を認め、日本では環境省が水質濃度を見直すとことを発表している(12/2)。
札幌市での条例制定反対への取り組み
最後に佐藤典子氏による「学校等での集団フッ素洗口に向けた札幌市議会における条例提案を止めるための取り組みについて」が報告された。2021年9月、札幌の「集団フッ素洗口を考える市民の会」を立ち上げ、署名活動、市議会、市長、教育長への要請活動を展開し、札幌市議会には5月の第2定例議会で議題になり、市民の意見をしっかり聞いてほしいと3団体で議長に陳情書を提出した。残念ながら6月6日の本会議で条例は可決成立してしまった。今後も集団フッ素洗口が強制的に実施されないよう活動、監視していくとの報告であった。
その後、古賀真子氏により昨年逝去されたコンシューマーネット・ジャパンの理事として
ワクチン問題に取り組まれてこられた母里啓子さんを偲んで「母里啓子さんとフッ素研究会」とする思い出の報告があり、質疑の後、閉会となった。
評議員会では、次期会長も成田さんに引き続いて頂き、特別講演はフッ素による生殖毒性の中国の研究者にお願いする予定となった。 (文責 秋庭 賢司 12/9/2022)
本講演について、歯科新聞が記事を掲載しました。歯科新聞は歯科医師会のコメントをとっていますが、これに対する秋庭賢司さんの反論をご紹介します。
歯科新聞相田氏のコメントについて
相田氏が述べているように、最も信頼できる「システマティックレビュー・メタアナリシス」により、質の高い多くの疫学論文を解析した結果、フッ素によるIQ低下が起こることをコネット氏とノイラス氏が報告している。フッ素とIQ低下は無関係、というオーストラリアの研究(Loo、2022)こそ、対象が小数集団であり交絡因子を調整していない。
疫学調査の限界は、動物実験の結果等で総合的に判断するのは当然である。
新聞社への抗議により、フッ素のネガティブ情報は単独では掲載されず、推進情報と併論することが記事掲載の条件となってしまっている。
添付の厚労省の第14回「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」策定作業に影響するとの危惧があるのかもしれない。
基本的事項は令和6年から開始予定で、専門家委員会では2023年1月をめどに最終案のとりまとめを目指している。
内容は、「15歳未満でフッ化物応用の経験のある者の増加」フッ化物応用等のう蝕対策事業、フッ化物応用に実施、健康格差の縮小など、となっている。
フッ素研究会冊子のお申し込み方法
https://consumernetjp.stores.jp/items/637dc10b211ac31e421bdb55
代金送料込み1500円
pdf版はこちら
https://consumernetjp.stores.jp/items/63769f524292bf1fc11aef88
1000円
内容は同じです。お間違えなきようお申し込みください。