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もっと知りたいフッ素の話 60 科学が政治によりゆがめられ、体制科学が成立する好例 その1

秋庭賢司さんより アメリカ歯科医師会(ADA)やアメリカ医師会(AMA)関連雑誌からの最新情報

今回と次回はなぜフッ素が虫歯予防の「世界基準」になったのかそのカラクリと公衆衛生が政治的干渉による問題点を探ります。コロナワクチンや治療薬などの今後起こりうる問題を考える参考にしてください。

虫歯予防のフッ素は、米国の医科歯科2元論確立の立役者である

著者は、その経緯を以下の論文                

如何にして虫歯の原因とされる栄養不足がフッ素治療になったのか)で紹介している。“How a Nutritional Deficiency Became Treated with Fluoride” 

by Philippe P. Hujoel1, 2;Nutrients ,2021, 13, 4361

1 Department of Epidemiology, School of Public Health,;2 Department of Oral Health Sciences, University of Washington, Seattle, WA 98105, USA; hujoel@uw.edu

原文は16頁あり、その4頁がアメリカ歯科医師会(ADA)やアメリカ医師会(AMA)関連雑誌からの引用であり、かなり綿密な証拠が揃っている。

その要約と一部抜粋の訳文を以下に引用する。

要約

喫煙が病気を引き起こすという証拠を無視するのは公衆衛生にとって有害である。この報告は如何にして公衆衛生の専門家が、小児期のビタミンD不足が虫歯と関連するという証拠を無視し始めたか、を探求した。歴史的な調査は、臨床医の専門家組織であるアメリカ歯科医師会(ADA)がこの見解を始めた事を明らかにしている。ADAは世界的な歯科のリーダー組織であり、その政治対策部門はロビー活動を通じて、ビタミンD不足の標識と見なされていた虫歯をフッ素による世界標準治療とすべく動いた。ADA科学審議会(Scientific Council)はこの尽力への協力を求められ、“虫歯の原因としてビタミンD不足を主張することは受け入れ難い“との公的な声明を出した。この声明には実態がない、ADA科学審議会は15年間これとは反対のことを公言しており、全米科学アカデミー(NAS)も同じ結論を出していた。ADA内部の報告書は、この科学的な謎の由来について役に立つ情報を提供している:ADA科学委員会は科学的原則を無視し、医学的専門家の公表している政策と矛盾するADAの政治対策部門を支持していた。ここに示すのは、臨床専門家の組織は重要な証拠を無視した標準的な治療法を打ち立てる権力を持ち,結果としてそれが公衆衛生にとって有害となる証拠である。

解説

ADAが虫歯の原因をビタミンD不足からフッ素応用(フッ素不足)へ舵を切った背景:

結果として医学から歯学が分離し独立した背景には政治力が働いていたことがわかる。

虫歯の全身的な医学的管理を捨てて、局所作用を重視した時代から、皮肉にも1990年頃から虫歯、口腔疾患と全身との関係が注目されてくる。またその頃からフッ素の全身への影響も明らかになってきた。20世紀には歯学部からこのような論文が出てくることは考えられなかった。現在でもフッ素応用への警鐘論文は、その殆どが環境系、毒性学、分子生物学など歯科関係雑誌以外での掲載である。この論文には科学が政治によってゆがめられ、体制科学が成立する過程が書かれている。

抜粋と翻訳

全米科学アカデミーは1952年、虫歯予防にビタミンDのサプリメントを推奨している。世界保健機構(WHO)1984年に虫歯予防に個人の口腔衛生は効果がない、と報告している。そしてこれらの組織は1989年と2000年にこの見解を取り消している。

*ADAはビタミンDを支持した草分けである

1930年、ADAの科学委員会は鱈の油を含んだビタミンDを虫歯予防法として推奨している。1932年には公式にビタミンDを支持する報告書を出している。アメリカ医師会(AMA)の食品、栄養委員会は1944年まで虫歯予防にビタミンDを推奨しなかった。

*米国の虫歯状況

1941年のフランクリン ルーズベルト大統領の会見では、軍隊に入隊予定の20%以上が虫歯で不合格になっている。米国国民の80%が十分な歯の治療を受けていない。15歳以上の96%が虫歯を持っている。米国歯科医師会によると、当時米国民の歯科治療には130,000人の歯科医師が必要だが、65,000人しか充当していない。

1944年ADAの歯科治療審議会(CDT:Council on Dental Therapeutics)は、歯磨き、歯磨き剤、洗口、化学療法など、またフッ素も虫歯予防法として受け入れられない、と主張している。

1944年ADA,CDTは“歯科医療従事者による食品、薬品、洗口、歯磨き剤の規則的な応用やフッ素が添加された他の予防方法は、効果が疑問なことや飲み込みによる潜在的な有害性を考慮すると正当化できない、と述べている。

 *子どものビタミンD不足

1927~1942年の間に出生した子ども(2~14歳)の47%がクル病である。ビタミンDサプリメントの不足により子どもの虫歯や骨ソショウ症の有病率が高い。

1944年アメリカ医師会(AMA)は虫歯予防にビタミンDの処方を推奨した。

*ADAの理解しがたいビタミンDによる虫歯予防方法の否定

1944年12/29にADA,CDTは、“虫歯予防法としてのビタミンDは受け入れがたい”との声明を発表した。1945年2月1日この内容がアメリカ歯科医師会雑誌(JADA)に掲載された。1946年の歯科処方集では、虫歯予防法としてのビタミンDを“最も重要な要因ではない(1945)から、重要な要因ではない(1946)”に変わった。

 *ADAは会報で説明が付かない通知をする

ADAは複雑な政治構成体(governing structure)である。会長、業務マネージャー、理事会、議会対策代理人、事務局などである。この政治構成体は、委員会(Committee’s、commissions)、部局、審議会(Council: ADA,CDTを含む)に対して優位な権限を持っている。ADAは政策決定に際してADA,CDTのような科学的原則を必要としない。ADA政治構成体は他の直接的権限を介して世間一般の通念を形成できる。1947年にADAの理事会は、1933年以来公衆関係担当部局長だった人物を米国歯科医師会雑誌(JADA)の編集長に指名し、彼がその後15年間編集長であった期間に、ビタミンDのタイトルは1度も掲載されなかった。

1947年ADA,CDTは、ADAの中枢でフッ素に関して大きな取引が討議されていることを知らされた。それはアメリカ歯科医師会雑誌(JADA)に“フッ素の局所応用は、歯科医師により正しく実施されれば安全で有効”との論説が掲載されることが決められたことであった。ADA,CDTは既成事実に直面した。ADA,CDTはADA政治対策部門に合わせて従来の見解を翻し、フッ素の局所応用は安全とする決定をした。メンバーの1人は,一連の政策決定が“如何にひどいか”、もしADA,CDTがADAの政治対策部門と反対の立場を取るなら,やっかいな軋轢をが生じるので、無理強いされたフッ素を如何にして受け入れるのか,を報告している。ADA,CDTではなく、ADAの政治対策部門のメンバーが、ビタミンDの否定と専門家によるフッ素の局所応用の両方を、20世紀の政策決定にすることに着手した。

*世界標準歯科治療へのADAの尽力と影響

ADA、CDTのイメージは世間一般の通念に影響を与える。1946年以後、ビタミンDは“重要な要因ではない”と歯科処方集で勉強した学生は、ビタミンDを虫歯予防に処方する時

臨床家として後で医療過誤を犯すリスクがある、とする立場に自身が置かれる。

 *歯科研究議題へのADAの尽力と影響

ADAは全米歯科研究所(NIDR)―虫歯予防を目的に1人の上院議員が提案―を創立させる法案のスポンサーとなった。この研究所は17ヶ国にフッ素化の動機付けを与え、何百人という歯科研究者を訓練し、7ヶ国への財政支援研究に貢献した。

1945年ADA,CDTの公式見解が“フッ素の有効性はまだ確立しておらず、潜在的な有害性がある”としていた時、ADAの法案に関する上院公聴会で、最初にフッ素研究議案が開示された。上院公聴会でのADAの重要証人は、米国公衆衛生総局(Public Health Service:現在のHHS)の長官であり、フッ素の局所応用は“極めて確実”であると証言し、水道水フッ素化は虫歯を半分に減らす、と言及した。更に続けて“我々には特別な虫歯予防の方法がない”とも証言した。

この証言により長官は少なくも2つの委員会の決定を無視した。AMAとNAS(全米科学アカデミー)の両方が、虫歯予防にビタミンDを推奨する過程にあったこと。ADA,CDTは、上院公聴会の記録に挿入される予定の報告書を長官が準備していた頃、まだ同様にビタミンDを虫歯予防に推奨していた。ADA,CDTが公式にこの見解を翻したのは公聴会の僅か5ヶ月前である。

 *世界中の口腔衛生政策へのADAの尽力と影響

WHOが圧倒的多数の証拠があるビタミンDを無視するメッセージを出したのは1946年である(まさにADA,CDTがビタミンDを翻した直後である)。

フッ素応用のパイオニアーであるKnutson は、NIDR創設の上院公聴会でPHSの歯科官僚として参加した。彼は1945~55年、恒久的なWHOの歯科保健計画を確立し組織する国際委員会の議長を務めた。1956年彼はADA政治構成体の一員となり副会長に選任され、1958年にWHOテクニカルレポートの共著者になった。

 *歯科世界標準へのADAの尽力と影響

ADAは世界歯科連名(FDI)の再出発の役割を果たし、1963年までにフッ素化事業が実施され“近い将来41カ国でフッ素化を開始するであろう”と支持者達は宣伝している。

 *多数の臨床試験が反論の証拠となる

生化学者でビタミンのエキスパートであるMilan Loganは、ビタミン不足の患者は“訓練を受け、設備の整った総合的な検査のできる医療機関で医師の診断を受けるべきである、歯科医は訓練も受けてないし、そうした設備もない”と述べている。

ADAと違って、AMAはビタミンDが虫歯予防に効かないとは言明しなかった。その代わり、1958年に毎年出版されている処方集から虫歯予防のビタミンDが消えた。証拠は変わっていない;変わったのは歯科が医科から分かれたことである。歯科医師は業務(a scope of practice)としての医師との軋轢に大きく勝ったのだ;医師は医科大学での虫歯の学習を大規模に止めた。医療関係者は医学雑誌で歯磨きの推奨を止めた。虫歯予防に関する栄養不足の原則を含め、歯科疾患への医学的管理の研究は、分離したことによって医師から見捨てられた。ビタミンD による虫歯予防を翻した事は、医学から歯学を分離させる最も挑戦的なステップだったであろう。ビタミンDは歯科疾患の医学的管理の王冠だったのだ;25年以上研究され、歯科医により推奨された、虫歯への唯一の医学的管理によるアプローチだった。

ここに示されたADAによるビタミンDの否定は、賛否両論があるにも拘わらず、世間一般の通念になった。歯科疾患の病因となる他の栄養不足の役割を考慮しないのは、栄養学への興味を薄れさせている。

 *討議

こうした前説の否定は,他にもある。アメリカ心臓協会は最初、食餌による肥満は心疾患の

原因ではないと報告していたが、1961年にこれと反対の立場を取った。アメリカ糖尿病学会は、糖尿病患者は砂糖を避けるべきである、と報告していたが1994年にこれと反対の立場を取った。これらの2学会は前説の科学的根拠が薄かった、と述べて正当化しているが

ADA,CDTと同様にもっと重要な隠された軋轢があるだろう。

沢山の赤信号(red flag)があるにも拘わらず、臨床医の専門組織が世間一般の通念を形成するという力は、驚くべき事である。圧倒的多数の証拠とは正反対の通念を専門家が創造した、この例はたいした問題ではない。歯科医院でのフッ素の局所応用は収入源となるがビタミンDの処方はそうではない、という自明の理である利益相反が専門家組織にはある、ということもたいした問題ではない。NASとAMAが専門家組織として反対の結論を出した、ということはたいした問題ではない。これらの赤信号のどれもたいした問題ではないー

専門家の見解は有害である事を示唆する対照試験がある時でさえ、臨床専門医は信頼できる、考えられている。

WHOと他の専門組織が、これらの赤信号を無視し盲目的に利益相反のある専門家の意見を採用したことは驚くべき事である。

この報告で主に強調したいのは、規制が働いている状況下の科学審議会の政策決定過程を、根拠に基づいて評価をすることであった。

原文抜粋(p10~11)

Unlike the ADA, the AMA did not announce that vitamin D was ineffective for dental caries prevention. Instead, in 1958 the endorsement of vitamin D dental caries prophylaxis disappeared from the AMA New and Nonofficial Drugs, a yearly publication [92]. The evidence had not changed; what changed was that dentistry was separating from medicine [93]. The dental profession largely won a scope-of-practice conflict with the medical profession; physicians largely stopped learning about dental diseases in medical school, the medical profession stopped endorsing toothbrush advertisements in their medical journals. Research into the medical management of dental diseases, including the role of nutritional deficiencies in dental disease prevention, became abandoned by the medical profession because of this separation. The ADA reversal on vitamin D dental caries prophylaxis may have been the most challenging step in terms of dentistry separating from medicine—vitamin D was the crown jewel of the medical management of dental diseases, studied for over 25 years, and the Nutrients 2021, 13, 4361 11 of 16 only medical management approach of dental caries which was endorsed by the dental profession. The ADA reversal on vitamin D, as was shown here, was controversial but nonetheless became the conventional wisdom. Dismissing the role of other nutritional deficiencies in the etiology of dental diseases was less challenging.

                        

                      文責と翻訳 秋庭賢司 2022.1/14

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