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食の安全と動物福祉~投稿のご案内

animal rightsあるいは動物福祉という概念が欧州を中心に主張されています。日本でも古くからこの問題に取り組んでらっしゃる団体があります。

http://www.alive-net.net/index.html
地球生物会議ALIVE

北海道。草原の中でゆったり育てられる羊。朝と夜は羊舎 昼は草原で放牧。

畜産が工業化し、食肉や毛皮にするためだけに生み落とされ、狭い劣悪な環境の檻に一生入れられ、そこから出られるのは屠殺場に連れて行かれるときだけという動物たちがたくさんいます。屠殺場への運搬もどうせ殺すのだからということで、トラックに押し込められ、途中で骨折や窒息で死ぬ動物が多いという告発もあります。

消費者の責任に関する教育実践のあり方とりして、豊かな消費生活のウラで犠牲になっているものに気付かせる教育をされている日本女子大学教授の細川幸一さんから、投稿していただきましたのでご紹介いたします。朝日新聞の8月21日の「私の視点」にも掲載されましたが、もう少し詳しいお話です。

特定秘密法や憲法改悪など人権が危うい時代であればこそ、動物や生命に対するanimal rightsの考えは、消費者が生きる「原点」を知るうえで重要なテーマです。

生き物の命を「いただく」ことで人間のいのちも次世代に伝えていくことができているわけですが、全てが工業化された中では片隅に追いやられているようです。消費者運動の歴史をたどっていくと、1980年代の運動家の人たちの、生きものへの温かい視点に驚かされます。

食の安全も動物との共生があってこそ。ホルモン剤づけやBSE、遺伝子操作などはこうした動物の生理を害するとともに、それを食する人間のいのちと健康も害しています。効率主義、経済主義、グローバリズムの中での顔の見えない食の生育と消費の分離がもたらした問題として、動物の福祉も問題を考えてみませんか。

(古賀 真子


いのちを消費者する者としての責任~家畜福祉を考える

 日本女子大教授 細川 幸一

 消費者の権利に加え、消費者の責任が議論されている。豊かで便利な社会の裏側で犠牲になっているものに我々消費者は無関心すぎるように思う。食べ放題の焼肉や、しゃぶしゃぶが盛況だが、それはいのちの食べ放題、すなわち、いのちを好きなだけ殺しますということである。

食肉とは牛、豚、鶏などの生き物をと殺して製造されたものであり、その前段階には家畜を飼育する畜産が必ず存在する。しかし、現在の消費者はパックされた食肉や加工食品が数日前までには生きていた動物であったことを忘れてしまいがちであり、畜産の実態への関心は低い。食品加工業と同様に畜産もコスト削減のための効率が追求され、家畜は大量生産のための「畜産工場」とも言える閉所で飼育されている実態がある。そこでは家畜は単なる産業動物として扱われ、動物らしい行動を抑制され、一生狭い折に閉じ込められ、劣悪な環境で飼育されることもある。

そうした中、家畜福祉(animal welfare、動物福祉)という考えが登場している。ペットについては殺処分数を減らすなど、動物愛護の理解がある程度進んでいる。しかし、家畜は人間が肉や毛皮をとるために最後にはと殺する目的で飼育するものであるから、動物愛護とは言い難い。そこで、せめて生きている間は動物らしい活動を行うことができる環境等の配慮を求める家畜福祉がヨーロッパを中心として主張されてきている。日本では、「家畜の健康と福祉の原則」として農業研究者等で組織する「農業と動物福祉の研究会」(JFAWI)等が以下の五つの自由の実現を追求している。

  • 十分な餌と水があること(飢えと渇きからの自由)
  • 快適な飼育環境であること(不快からの自由)
  • 傷害や病気は治療されること(傷害・病気からの自由)
  • 恐怖や苦痛にさらされないこと(恐怖・苦痛からの自由)
  • 正常行動ができる広さ・刺激があり、仲間がいること(正常行動への自由)

また、日本では2007年から2010年にかけて、6つの畜種別(乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏、ブロイラー、馬)に科学的知見を踏まえ、「アニマルウエルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」を社団法人畜産技術協会が策定している。

人類は地球上で唯一ずば抜けた知能を有しており、それゆえ、他の動物を支配してきた。動物を殺して食することは人間が生きていくためには当然という主張が一般的である。しかし、本来の畜産は工業のような「モノを造る」のではなく、「生物を育てる」産業であることを再確認する必要がある。畜産における大量生産システムは、同時に、BSE牛肉、鳥インフルエンザ、SARS、口蹄疫などの動物の感染症を発生させやすく、グローバル化により人類への大規模感染が危惧されている。適切は環境で健康に育った家畜の肉はより安全であり、家畜福祉の配慮は食の安全にもつながる。

家畜福祉に配慮した畜産は結果として大量生産システムの見直しにつながり、安全性が増す一方、当然、コストがかかる。しかし、鶏肉が100グラム50円程度で売られている現状は妥当であろうか。このように安い食肉を見ると、はたして、この肉が生き物であったときに、人間からどのような扱いを受けてきたのか、想像せずにはいられない。食肉の価格の上昇は低所得者層の生活を脅かすとの指摘もあるので、まずは、家畜福祉配慮食品の認定マーク制度を提唱したい。それによって家畜福祉への消費者の理解が進み、消費者に選択肢を示すことができる。

「いただきます」とは自らが生きながらえるためにありがたく他のいのちをいただくという意味であることを消費者は再認識し、いのちを消費する者としての権利と責任を自覚する必要がある。

http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~consumer/page162.html

(細川 幸一


細川幸一さん

消費者法 消費者保護法 消費者政策 消費者教育、消費者の視点での 経済法 企業法務 企業の社会的責任 CSRなどを国際比較. 家政学などの見地からも分析し、消費者の視点での企業の社会的責任、消費者政策の体系化などのテーマを研究。

日本女子大消費生活研究室

http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~consumer/

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