文献番
201919018A
報告書区分
総括
研究課題
 
課題番号
19-HA1-006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
池田 修一(国立大学法人信州大学 医学部附属病院 )
研究分担者(所属機関)
  • 青木正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
  • 桑原 聡(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 平井利明(学校法人帝京大学 医学部)
  • 岡部信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 太田正穂(国立大学法人信州大学 医学部)
  • 日根野晃代(国立大学法人信州大学  医学部附属病院)
  • 楠 進(学校法人近畿大学 医学部)
  • 神田 隆(国立大学法人山口大学 大学院医学系研究科)
  • 高嶋 博(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
開始年度
令和1(2019)年度
終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,970,000円
研究者交替、所属機関変更

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、i) 神経内科専門医から成る全国診療ネットワークを形成して、患者登録と詳しい実態調査を行う、ii)HPVワクチン接種後副反応としての神経障害の病態解明と長期予後を明らかにする、iii)HPVワクチン接種後副反応を生じやすい遺伝的素因を解明する、iV)血清中自己抗体を指標とした新規診断ガイドラインと新規治療法を確立する、の四項目を掲げた。
研究方法
HPVワクチン接種後副反応に関しては、診察希望のある患者さんをできるだけ速やかに診察して、個々の症状の発生時期と頻度を検討した(池田、平井、桑原、青木、楠、神田、髙嶋)。新規治療法として、免疫吸着、ステロイドパルス療法を施行して、その効果を客観的指標で評価した。(桑原、髙嶋、平井)。成因に関しては海外施設の支援を得て、血清中の自律神経受容体に対する自己抗体の検索を行った(池田、太田)。
結果と考察
結果
・研究代表者(池田修一)
(1) 2013年7月~2018年10月までの5年3ヶ月間にHPVワクチン接種後副反応疑いで信州大学病院を受診した女性は2013年度44名、2014年度40名、2015年度47名、2016年度33名、2017年度25名、2018年度6名2019年度4名の合計200名であり、最近2年間、患者数が極端に減少している。
・研究分担者(日根野晃代)
(1)子宮頸がんワクチン接種後有害事象を訴える55名と同ワクチン非接種(対照者)の57名を対象に、血清中の抗自律神経受容体抗体(α1,α2,β1,β2 adrenergic receptor, M1,M2,M3,M4,M5 muscarinic acetylcholine receptorに対する各抗体)をELISA法で測定した。その結果、同ワクチン接種者群は非接種者群に比してこれら9種類の抗体が有意に高値を示した。
・研究分担者(髙嶋 博)
(1)子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いで受診した患者は59名の予後分析を行った。6割の患者が筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の診断基準を満たした。重症患者に対する免疫吸着の効果と発症3年以内開始と以後の開始で治療効果に差が見られた。
・研究分担者(桑原 聡)
(1)2年以上通院している8名の現在の状況は2名は大学・専門学校へ通学しているが、残り6名は疼痛・易疲労性のために就学・就労に至っていない。
・研究分担者(平井利明)
(1)子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いで受診した患者130名中で、患者の重症度をmodified Rankin Scale(mRS)で6年間後方視的に追跡できたのは44名であった。mRS平均値が最大値に達したのは初回接種から4年時(mRS平均値 2.9)で、以降の同平均値は減少に転じた(6年時mRS平均値 2.5)。重症者(mRS 4〜5)の割合が最大に達したのは3.5年(29%)であった。痙攣・不随意運動・呼吸停止で介護者が24時間監視が必要な重症者は2017年12月の時点で8/44(18%)、2019年11月の時点で4/44(9%)存在する。
・研究分担者(神田 隆)
(1)過去に子宮頸がんワクチン接種後有害事象にて血液浄化療法を施行した患者2名の血清からIgGを精製してヒト血液脳関門(BBB)構成細胞に作用させて、その影響状態の検討を開始した。
・研究分担者(楠 進)
(1)子宮頸がんワクチン接種後神経障害の疑いが持たれた33名の血清中の抗糖脂質抗体の測定を行った。11名で同抗体が陽性であった。
・研究分担者(青木正志)
(1) 2019年度の新規受診者は0名であった。
・研究分担者(岡部信彦)
(1)HPVワクチンの本来あるべき効果について列挙した。
・研究分担者(太田正穂)
(1)子宮頸がんワクチン接種後有害事象患者28名を対象に、血清中の抗自律神経受容体抗体価とHLA genotypeを対比検討したが、被検者の数が少なく、結論を出すには至らなかった。

考察
HPVワクチン接種後の副反応と言われている病態については、これらの症状発現と同ワクチン接種との直接的な因果関係は証明されていない。従来の本研究班の調査では子宮頸がんワクチン接種時期と同ワクチンの副反応が疑われている症状の発現時期はかなり重複していた。一方、子宮頸がんワクチン接種後の副反応と言われている病態は多彩であるが、本病態のおおよその自然経過が発病後3~4でピークに達して、以後軽快を示すことが判明した。また、発病早期から積極的な治療介入をした群とそうでない群で回復の仕方に差があることも明らかになった。

結論
1.子宮頸がんワクチン接種後の副反応と言われている病態について、本研究班が掌握している現状をまとめた。
2. 子宮頸がんワクチン接種後の副反応のおおよその自然経過が判明した。


白木博次 
 
*白木4原則

ワクチン接種と健康被害の因果関係判定基準

  1. ワクチン接種と接種後の事故(疾病)が時間的、空間的に密接していること
  2. 疾病について、ワクチン接種以外の病因が考えられないこと
  3. 接種後の事故と後遺症が原則として質量的に強烈であること
  4. 事故発生のメカニズムが、実験、病理、臨床などの観点からみて、科学的、学問的に実証性や妥当性があること