遺伝子組み換え食品と農薬汚染について知る必読書(紹介)
食の安全の問題に長く取り組まれている食政策センター・ビジョン21代表の安田節子さんが2020年10月に「食卓の危機」の本を上梓されました。食のハーモゼーション、食品添加物、農薬汚染、遺伝子組み換え食品とこの分野を市民科学と消費者主権の立場から真摯に取り組んでこられた食の歴史と今、未来のあるべき姿を知るための必読書です。種子法廃止、種苗法改正、農業本主義問題にまで言及されています。
ゲノム食品や表示の簡略化が進む中、多くに方に読んでいただきたいです。以下、安田さんにお送りいただいた紹介文です。
自著紹介
『食卓の危機 遺伝子組み換え食品と農薬汚染』 安田 節子 著
三和書籍発行 四六判 232ページ 価格 1700円+税 ISBN978-4-86251-412-7
日本の食料輸入依存は新型コロナのパンデミックによる国際流通の寸断で危機が露わになりました。ただ、米を自給しているおかげで食料不足の混乱は起こらずに済んでいます。しかし、主要農作物種子法廃止や種取禁止の種苗法改定がなされ、米が企業に握られていけば、米の自給体制の崩壊が来るのではないか。これら一連の種子をめぐる問題を詳述しました。
また日本の食品安全が諸外国に比べて大きく劣化しつづけていることをご存じですか?米国産農産物の輸入の貿易障壁にしないよう政府は日本の安全規制を緩め続けています。特に遺伝子組み換え作物とグリホサートの規制緩和は、各国が禁止や規制強化を進めているのと対照的です。また日本は農薬汚染大国であり、わけても使用増大するネオニコチノイド農薬汚染の実態を明らかにします。
米国は「ゲノム編集食品」輸出の障壁撤廃を求め、日本政府はそれに応えて規制なしの流通を認める決定をしました。日本でゲノム編集トマトの流通が始まろうとしています。本書ではゲノム編集技術の問題点にも詳しく触れています。
こうした食卓の危機は、特に子どもたちの体に影響を及ぼしています。その解決策は有機農業にあり、有機農業拡大の切り札は有機学校給食にあると考えます。
ぜひ図書館にリクエストをして頂ければありがたいです。(安田節子さん 記)
食政策センター・ビジョン21
https://www.yasudasetsuko.com/vision21/
目次
はじめに
第1章 世界が声を上げ始めた
- ドキュメンタリー「遺伝子組み換え戦争」
- ラウンドアップと遺伝子組み換え作物
- グリホサートの健康障害を示す論文
- 世界は声を上げ始めた
- ラウンドアップは、グリホサートのみならず補助剤も強い毒性を持つ
- ラウンドアップ耐性雑草出現と複数の除草剤使用
[コラム]アトラジン(除草剤)/2・4D(除草剤)
- ラウンドアップ耐性雑草とジカンバ耐性GM大豆
- GM大豆の終わりの始まり?
- 日本はジカンバ耐性大豆に合わせて残留農薬基準を大幅緩和
- TPP協定に遺伝子組み換えの輸入促進条項
- 米国の裁判で立て続けにモンサント社に賠償判決
[コラム]バイエル
[コラム]ドウェイン・ジョンソンvsモンサント
第2章 この食品が危ない
- 遺伝子組み換え(GM)作物のターゲットは日本
- GMは除草剤耐性か殺虫毒素生成 44
- 世界の流れに逆行する日本:グリホサートの残留基準緩和
- 日本におけるグリホサートの食品汚染事例
北米産輸入小麦にグリホサートが残留
- 輸入小麦使用の食パンすべてからグリホサート検出
- 世界の動きと日本
- カナダ、豆のグリホサート使用を排除するも、小豆は例外
- テレビCM 日本では野放し
- グリホサートは神経毒性のある有機リン系農薬
- 空中散布は広く地域を農薬汚染する
- 日本人の神経難病が増加
- GM食品の安全性
- GM作物の影響
- GM規制の国々
第3章 ミツバチが消えた
- ネオニコチノイド系農薬
- ネオニコチノイド系農薬の特徴は浸透性、残効性、神経毒性
ミツバチが巣に戻らず、大量失踪
- 神経毒性のある他の農薬
- 禁止や規制に取り組む国際社会
- 日本だけは基準を緩和
- クロチアニジンも基準値を緩和
- 国産茶からネオニコ農薬の検出
- ネオニコが漁業にも影響 宍道湖でウナギが激減
- 日本でネオニコ使用増加とともに発達障害が増加
発達障害と農薬~農薬が胎児に高率で移動
- コメでの使用
- 農薬販売中止を求める市民運動
日本での「脱ネオニコ」の動き
要望書に対する企業からの回答
「デトックス・プロジェクト・ジャパン」の毛髪検査の取り組み
- 急がれる脱農薬社会への転換
農薬禁止に踏み切るフランス
EUの市民発議
欧州委員会 二〇三〇年までの生物多様性・農業戦略を策定
有機農業を二五パーセントに
- 有機の食事が農薬を体外排出
- 有機農業への転換を急げ
使用農薬表示で有機転換促進を
- 有機の学校給食を全国に
[コラム]「モンサント社の履歴」
第4章 ゲノム食品は安全か?
- ゲノム編集食品
- オフターゲットの問題
- オンターゲットの問題
- ゲノム編集は遺伝子組み換え(GM)
植物のゲノム編集の場合
動物のゲノム編集の場合
- ゲノム編集の角のない牛に抗生物質耐性遺伝子が存在
- 安全を確認できない限りゲノム編集は認められない
- 検出困難だから表示不要の論
- ゲノム編集は大企業向けの特許カルテル
- トランプ大統領がGM市場拡大のための戦略策定を命令
- 日本の「統合イノベーション戦略」
- ゲノム編集農作物をオーガニックに?
- 遺伝子ドライブ技術~生物兵器になるおそれ
[コラム]アシロマ会議
[コラム]<遺伝子ドライブとは>
[コラム]ビル&メリンダ・ゲイツ財団
第5章 種は誰のもの?
UPOV条約とモンサント法
- 生命体に「特許」?
- 農民シュマイザーとモンサント社の特許侵害裁判
- モンサント社の損害賠償ビジネス
- 自殺する種子・ターミネーター技術
- ターミネーター技術とはどんな技術?
- ターミネーター技術をあきらめないアグロバイオ企業
[コラム]途上国で何が起きているか?
- 種の独占はハイブリッド品種から始まった
- 種子業界の権利を拡張する植物新品種保護(PVP)
- PVP(植物新品種保護)は途上国の農業を破壊する
- 自家増殖を禁止させようとする「モンサント法」
- 種子銀行は何のため?
- 「緑の革命」がもたらしたもの
- モンサント法案を巡る各国の動き
第6章 売国法はいかにして成立したか
種子法廃止・農業競争力強化支援法・種苗法改正
- 種子法とは何か
この種子法廃止、何が問題なのでしょうか
- 公的知見を民間に提供せよと迫る農業競争力強化支援法
- 山田正彦氏の企業米使用の生産者インタビュー・レポート
- 「売国法」がいともたやすく成立した経緯
- 種子法廃止で起きる近未来は野菜を見れば分かる
- 種苗法改正
- 「品種の海外流出を防ぐ」は後付け
「種苗法の一部を改正する法律案」の概要から
農家の自家増殖禁止で何が起きるでしょう?
[コラム]主要穀物はどこの国でも公的管理があたりまえ
- 在来種を守れ!
第7章 私たちの農と食を殺させない
今こそ「農本主義」と有機農業を
- 先進国の中でも最低ラインの日本の食糧自給率
- 今こそ“農本主義”を
漢書の「機農」が由来。有機農業という言葉
- 化学肥料は土を壊す
化学肥料は環境を破壊する
- 近代化農業は効率が良いのか?
- 健康な土作りが有機農業の基本
- 有機学校給食は日本を有機農業国に転換させる原動力になる!
あとがき