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電力の小売営業に関する指針(改定案)に対する意見を出しました

2021年3月5日を締め切りとして、「電力の小売営業に関する指針(改定案)に対する意見」募集が行われました。今回の目玉は非化石証書の位置づけの変更です。

非化石証書とは、非化石電源により発電された電気について、非化石価値を分離し、証書にしたものです。「非化石電源」とは、天然ガスや石炭、石油などの化石燃料を使わずに電気を作る発電方法のことです。あてはまるのは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギーと、原子力発電です。化石電源は、地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)を排出するのに対して、非化石電源はCO2を排出しません。そのため、非化石電源には電気そのものとしての価値(例えば、部屋を明るくできる、家電を動かせる・・など)に加えて、「CO2を排出しない」という価値があるとして「非化石価値」が認められるとされました。

  • 化石電源 = 電気としての価値のみ
  • 非化石電源 = 電気としての価値 + 非化石価値

しかしながら、非化石電源の持つ非化石価値はもちろん目に見えません。これを証書というかたちで非化石電源から切り離して、可視化したものが非化石証書というわけです。

非化石電源には、再生可能エネルギー、原子力があります。非化石証書には、「再エネ指定(FIT含む)」と原子力を含んだ「指定無し」の2種類があります。購入は小売電気事業者のみ可能とされてきました。

今回の指針改定は下記のようになっています。

改訂案

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000214110

新旧対照表

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000214111

「「電力の小売営業に関する指針」改定案 新旧対照表」(https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000214111)の4頁より一部抜粋

コンシューマネット・ジャパンでは下記のような意見を出しました。

1 表示の義務化について

 P12 1(3)イ 望ましい行為及び電源構成等や非化石証書の使用状況の算定や開示を行う場合の具体例

 P12 1 (3)イⅱ) 望ましい行為及び電源構成等や非化石証書の使用状況の算定や開示を行う場合の具体例

意見

現在、望ましい行為である利用者への「電源構成」開示、「CO2排出係数」表示を義務化して下さい。

理由

非化石証書制度により「実質再エネ」に加え、「実質CO2ゼロエミッション」と「みなし」の情報が増えますが、事実に基づいた正確な電源構成の表示が不可欠になると考えます。電源構成開示の義務化が実現されない限り消費者は正確な情報を取得できません。電源構成開示について、「望ましい行為」から義務化する必要があります。 

 

2 非化石証書の表示等に関して

P30 1 (3)ウⅲ)(参考) 前期の「再エネ表示」、「CO2ゼロエミッション」表示の整理

P31 1 (3)ウⅴ)各種電力メニュー等に関する表示例

意見

今回改訂の目玉である非化石証書の表示は、消費者にとって誤認を招く内容です。再エネ・FIT電気以外のJEPX調達・化石電源等の電気に非化石証書を付けた「実質再エネ」「実質ゼロエミ電源」という表示の「実質」という表現を変更してください。

また、卒FIT電源・大型水力などの再エネ、原子力、廃プラスチックについて、「非化石証書(再エネ指定なし)」という表示を(再エネ指定なし)を削除し、「非化石証書(原子力)」、「非化石証書(再エネ)」と表示してください。

 理由

2020年度より「非FIT非化石証書」の取引が開始されましたが、再エネ・FIT電気以外のJEPX調達・化石電源等の電気に非化石証書を付けた「実質再エネ」「実質ゼロエミ電源」のきます。何が実質なのかを表示してこそ、表示制度の意味があり、「実質」という事実解釈に裁量が入る表現を用いるべきではありません。一般的な消費者にとって、何が実質なのかはが与えられてない中で現状理解に齟齬を生じさせる恐れがあり、電源構成の誤認そのものとなります。

非化石証書制度により「実質再エネ」に加え、「実質CO2ゼロエミッション」と「みなし」の情報が増えますが、事実に基づいた正確な電源構成の表示が不可欠になると考えます。電源構成開示の義務化が実現されない限り消費者は正確な情報を取得できません。電源構成開示について、「望ましい行為」から義務化する必要があります。 

また、卒FIT電源・大型水力などの再エネだけでなく、原子力・廃プラスチックについても非FIT非化石証書の対象とされ、これらは取引上「非化石証書(再エネ指定なし)」という表示がされています。しかし、「(再エネ指定なし)」という表示では、実際の非化石証書が何の電源由来なのかが消費者には伝わらず、消費者にとって「必要な情報が提供される権利」が満たされていないと言うべきです。「非化石証書(原子力)」といった名称にすれば原子力由来であるとわかり、消費者の誤認を防げます。

さらに現在のルールでは再エネであっても、「(再エネ指定なし)」の証書を発行できることとなっており、その表記が「非化石証書(再エネ指定なし)」となることは、もはや消費者にとって、証書が持つ意味への誤認誘引以外の何ものでもありません。再エネ由来の証書はすべて「(再エネ指定)」とし、名称も「非化石証書(再エネ)」とすべきと考えます。

 

 

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