消費者のための安全安心情報サイト

コロナ対応を考える その36 感染症法、特措法改正に反対の意見を出しましょう

2021122日、政府は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という。)及び「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下「特措法」という。)の改正案を閣議決定しました。衆議院内閣委員会と厚生労働委員会の筆頭理事の間で2627日の2日間、修正協議を行うことを合意したとされています。
協議では、営業時間の短縮命令に応じない事業者に対する過料や、入院勧告を拒否した感染者への懲役刑など、罰則の内容について修正するかどうか意見が交わされる見通しとされています。
コンシューマネット・ジャパンは2021年1月26日、内閣官房宛に意見を出しました。皆さまもぜひ意見を出してください。(2000字以内ですと下記から提出できます。

https://form1.kmail.kantei.go.jp/cgi-bin/jp/forms/goiken/input
 

(例)
緊急声明 感染症法及び特措法改正案に反対します

2021年1月22日、政府は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という。)及び「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下「特措法」という。)の改正案を閣議決定しました。今回の改正案は、感染拡大の予防のために都道府県知事に広範な権限を与えた上、本来保護の対象となるべき感染者や事業者に対し、罰則をもって権利を制約し、義務を課すにもかかわらず、その前提となる基本的人権の擁護や適正手続の保障に欠けるものです。それ以前に、感染の拡大防止や収束という目的に対して十分な有効性が認められるか疑問があります。
今回の改正感染症法案は、入院措置に応じない者等に懲役刑・罰金刑、積極的疫学調査に対して拒否・虚偽報告等をした者に対して罰金刑を導入するとしています。
感染症法の前文には「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。」と記載されています。今回の“改正”はこの趣旨に反するものです。感染症法は、前文で法の趣旨を宣言し、過去に過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等、隔離政策やいわれのない差別を受けた感染者への人権侵害の反省の上に、伝染病予防法を廃止して制定された法律です。
新型コロナウイルス感染症は、その感染力の強さゆえ、誰もが罹患する可能性がある疾病である。感染者は決して責められるべきではなく、その実情を無視して、安易に刑罰をもって義務を課そうとする今回の改正案は、かかる感染症法の目的・制定経緯を無視し、感染者の基本的人権を軽視するものに他なリません。

一方で、新型コロナウイルス感染症は、その実態が十分解明されているとは言い難く、ワクチンや治療薬の有効性や副作用についての考察も不十分です。医学的知見・流行状況の変化によって入院措置や調査の範囲・内容は変化し、各保健所や医療提供の体制には地域差も存在する中で、入院拒否等に罰則を科すのは、対象者の範囲は不明確かつ流動的であり、不公正・不公平な刑罰の適用となります。
新型コロナウイルスには発症前にも強い感染力があるという特徴が認められるとされており、入院措置・調査の拒否者等に対して刑罰を科したからといって感染拡大が防止できる訳ではありません。むしろ、最近では多くの軽症者に対して自宅待機・自宅療養が指示され、症状が悪化して入院が必要となった場合にも入院できず、中には死亡に至った例も報告され、患者に対する「良質かつ適切な医療を受けられるように」すべき国及び地方公共団体の責務(感染症法前文・3条1項)が全うされていないことこそが問題です。検査や入院治療が的確に行う態勢も整えられていない中で、入院や調査を拒否したり、隠したりするだけで「犯罪者」扱いされるおそれがあるとなれば、感染者は感染した事実や感染した疑いのあることを隠し、かえって感染拡大を招くおそれさえ懸念されます。

次に、特措法の改正案は、「まん延防止等重点措置」として都道府県知事が事業者に対して営業時間の変更等の措置を要請・命令することができ、命令に応じない場合は過料を科し、要請・命令したことを公表できるとしています。しかし、改正案上、その発動要件や命令内容が不明確であり、都道府県知事に付与される権限は極めて広範です。そのため、恣意的な運用のおそれがあり、罰則等の適用に際し、営業時間の変更等の措置の命令に応じられない事業者の具体的事情が適切に考慮される保証はありません。感染拡大により経営環境が極めて悪化し、休業することさえできない状況に苦しむ事業者に対して要請・命令がなされた場合には、当該事業者を含む働く者の暮らしや命さえ奪いかねない深刻な結果になります。要請・命令を出す場合には、憲法の求める「正当な補償」となる対象事業者への必要かつ十分な補償がなされなければなりません。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するためには、政府・自治体と市民との間の理解と信頼に基づいて、感染者が安心して必要な入院治療や疫学調査を受けることができるような検査体制・医療提供体制を構築すること及び事業者への正当な補償こそが必要不可欠です。
両法律改正案ともに、安易な罰則の導入に反対します。
以上

補足

今回の刑事罰(懲役、罰金)と過料はどう違う


政府提出の元々の案は
 

①感染症法改正案は、入院を拒否したり入院先から逃げたりした感染者に対し、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を規定。感染経路を追跡する「積極的疫学調査」に協力しなかった人にも、50万円以下の罰金を科すと定めていた。

修正により、罰則を過料のみとし、金額もそれぞれ100万円以下を50万円以下、50万円以下を30万円以下に引き下げる。
②特措法改正案は休業や営業時間短縮の命令に反した事業者らに対し、緊急事態宣言下なら50万円以下、前段階の「まん延防止等重点措置」の下なら30万円以下の過料を定めていた。
修正合意によりそれぞれ30万円以下、20万円以下となった。
 
(以上が日経新聞の記事)
 
 
過料は刑罰(刑事法)ではなく行政上の義務違反に対する制裁金です。
過料には、
1秩序罰としての過料  
・民事法上の義務違反 [民法、商法]  
・訴訟法上の義務違反 [民事訴訟法、刑事訴訟法] 
 ・行政上の義務違反 [地方自治法、条例] 【過料】   (適用例:路上喫煙禁止条例に違反)
2懲戒罰としての過料 [裁判官分限法、公証人法]  (適用例:裁判員制度で裁判員の出頭義務に違反)
3執行罰としての過料 [砂防法]  (適用例:砂防法第36条に違反)などがあります。
 
今回の過料を課す根拠が改正法の条文をみないと正確なところはわからないですが、入院義務違反も時短義務違反も行政上の義務違反ということになるのではないかと思います。過料に服せば入院の必要でない人への入院強制はないと思いますが、感染させる恐れが大きい人は知事が入院勧告を別に出すことができそうです。(感染症法には知事が入院強制できると解釈できる条文があります。)
感染拡大の脅威ばかりが強調されていて、なぜ刑罰や行政罰(過料)が課されるのかという点が議論されていないように思います。行政罰(が国民のそうすべきと定めた行為の義務違反として処分する)ということで刑罰でなく過料になるのだと思いますが入院拒否が感染拡大をもたらすかどうかは今の所明確ではありません。立法事実がないのに行政罰である過料をそもそも課せるのかという点にきちんとした議論がされているのでしょうか。入院勧告はどういう人にされるのかの要件すら曖昧です。PCR陽性者を患者とするのかということも条文を見ないとわかりませんが、陽性者であっても無症状者を入院勧告などするのは非常識ではないでしょうか。
入院勧告違反を構成要件に該当する違法な行為と位置付け刑事罰とすることは刑法理論上は不可能です。
 

 

古賀真子

カテゴリー

月別記事