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コロナ禍でのタクシー運賃事後検証

東京都特別区・武三地区(武蔵野市・三鷹市)の一般乗用旅客自動車運送事業(以下「タクシー」という。)の運賃については、2017年1月より運賃組替え による初乗り運賃の値下げ等がなされました。3年後の事後検証ということで、2020年1月31日に国土交通省から、同年2月17日に 一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会(以下「協会」という。)から、それ ぞれヒアリングを行い、その後も同年11月16日に国土交通省から追加のヒアリ ングを行い調査審議を行った結果、報告書が出されました。調査会は一般傍聴を制限したスカイプによる会議で行われました。

運賃組み換えについてはタクシー乗車率が減少する中、オリンピック睨んで欧米並みに初乗り料金を引き下げる代わりに中長距離料金は値上げとなること(組み換え)、配車アプリ車輌の新規更新、各種サービスの提案がどのように実施されるのか注目が集まっていました。

ちょいのりタクシーは成功するのか?

今回の事後検証ではコロナ禍により国交省からの提出資料やヒヤリングが実現しなかったために不十分な検証となったことは否めませんが、初乗り運賃の低廉化によりニーズが上昇したことは結果として出ています。中距離にヘビーユーザーの声は十分に収集はできませんでしたが、コロナ禍で業界全体が苦しい経営強いられている中、労働環境の向上を図りつつ、今後はますますの経営努力と多様な消費者ニーズのへの配慮を続けていって欲しいと思います。

2020年11月26日
消費者委員会

一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃組替えの事後検証に関する消費者委員会意見

消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会から、一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃組替えの事後検証に関する公共料金等専門調査会意見の提出を受けた。

国土交通省及び消費者庁は、本意見の内容を踏まえて対応を進められたい。

一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃組替えの事後検証に関する公共料金等専門調査会意見

令和2年11月26日
消費者委員会公共料金等専門調査会

1.経緯

東京都特別区・武三地区(武蔵野市・三鷹市)の一般乗用旅客自動車運送事業(以下「タクシー」という。)の運賃については、平成29年1月より運賃組替えによる初乗り運賃の値下げ等1がなされた(以下「本運賃組替え」という。)。

当時、それに先立ち、消費者庁より付議を受けていた消費者委員会は、公共料金等専門調査会(以下「専門調査会」という。)で調査審議の上、専門調査会意見2を踏まえ、平成28年12月6日に意見3を発出した。

そして、本運賃組替えについては、物価問題に関する関係閣僚会議の決定4及び消費者基本計画工程表5において、事業者の運送収入の状況や運賃の妥当性、運賃組替えの手続等について、丁寧な事後検証を実施することとされていた。また、上記専門調査会意見では、「公共料金等専門調査会は、検証に必要なデータ等が整った段階で、国土交通省による対応状況等についてのヒアリングを含め、運賃組替え後の状況の検証を行うこととしたい」としていた。

そこで、専門調査会は、令和2年1月31日に国土交通省から、同年2月17日に一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会(以下「協会」という。)から、それぞれヒアリングを行い、その後も同年11月16日に国土交通省から追加のヒアリングを行い、調査審議を行った。

2.結論
  • 専門調査会としての検証結果は、下記3.記載のとおりである。
  • 国土交通省において、下記3.で指摘する内容を踏まえて、適切に対応することを求める。
  • 消費者庁において、国土交通省の対応状況を注視し、必要に応じて適切に対応することを求める。
3.専門調査会としての検証結果

国土交通省及び協会の説明・資料により確認された事実に基づく専門調査会としての検証結果は以下のとおりである。

(1)事業者の運送収入の状況、運賃の妥当性及び運賃組替えの手続について

  • 本運賃組替えの実施当時、国土交通省において、本来の総括原価方式に基づく査定は省略され6、簡略な方法で運送収入の増加がないことを試算する手法が採られた。今回の事後検証においても、国土交通省からは、上記の運賃組替えの性質を前提に、その後の実績値7に基づいた検証の結果が示された。
  • 上記国土交通省の検証結果の範囲においては、下記の内容が確認できた。
    • 運送回数及び運送収入の試算の手法について、試算値と実績値との間に差が生じたが、国土交通省においてその差は運送収入の平均的な減少率と同程度との説明がなされたこと
    • 組替え前後で全体の運送収入は増加していないこと
    • 全体の事業コストが運送収入を下回るまでには低下していないこと
  • もっとも、次のような課題が見られた。今後、国土交通省において、これらの課題のほか、運賃・料金の柔軟化・多様化に向けた動き等を踏まえて、検証手法・試算手法の向上、その他の必要な対応が取られるべきである。
    • 事業者の運送収入の状況や運賃組替えの手続に関して、厳密な効果検証や運賃水準・体系の更なる適正化の観点からは、距離帯別の試算値と実績値の差やその要因をより丁寧に分析することが望まれること
    • 運賃の妥当性に関して、消費者利益の擁護・増進の観点からは、特に、中長距離の利用のニーズが高い消費者の声やそのような消費者への影響についての十分な把握と検証が必要であること
    • 総括原価方式を前提にしながらも、前回の運賃改定時(平成19年)から長期間原価の洗い替えがなされていないことにより、その後の事業コストの状況との乖離が生じている可能性があり、これに対して対応が必要と考えられること
  • 時間距離併用制運賃等の付随する運賃制度について、国土交通省において、利用者や事業者等の意見等を踏まえ、必要に応じて見直すということであり、その際には、現代の交通事情に適合したものであるかという観点を踏まえるべきである。
  • 今後、運送収入の増加を図るための運賃・料金の改定に当たって、総括原価方式により査定がなされる場合には、運賃水準をより適正なものとする観点から厳密に査定することが必要である。将来的には、社会・経済状況の変化や事業者の業態・経営の状況、消費者利益の一層の擁護・増進、運賃設定の柔軟化・多様化に向けた動き等を踏まえ、運賃・料金の改定時の運賃・料金の査定及び改定までのプロセスの在り方の向上を図るための検討を行うことも必要である。

(2)消費者への影響の配慮について

  • 中長距離運賃の値上げに関して、高齢者や病院通院者など、利用のニーズが高い一方、経済的負担能力の乏しい消費者への影響にも配慮した措置として、国土交通省において、相乗りタクシー、変動迎車料金及び定額タクシーの本格運用に向けた取組や事前確定運賃の導入などがなされている。また、配車アプリを活用している事業者の中で迎車料金を無料にする取組がなされているということである。国土交通省において、このような取組の一層の展開を推進するとともに、配車アプリや多様な運賃・料金制度等の新しいサービスについて消費者にとって利用しやすいものとなるよう、丁寧な情報提供等の対応を行うべきである。

(3)運賃組替えに関する丁寧な周知について

  • 国土交通省や事業者団体等において、本運賃組替えにあたり、消費者への周知を図るための一定の取組がなされたことが認められた。また、運賃設定に係る制度全般についての周知についても、国土交通省において一定の取組がなされていることが認められた。国土交通省において、消費者の更なる理解向上を図るため、より一層の取組が進められるべきである。

(4)サービス利便性の確保・向上について

  • 以上で確認したもの以外にも、下記のような取組が進められていることが確認された。これらの取組は消費者にとっての利便性や快適性を向上させるものと評価できる。今後も、国土交通省において、サービス利便性の確保・向上に向けたより一層の対応が進められるべきである。
    • タクシー利用待ち旅客の混雑が発生していたタクシー乗り場の改善
    • 業務の繁閑に応じた勤務シフトや変形労働時間制等の検討
    • 国内配車アプリの普及及び海外配車アプリと国内事業者との連携の推進
    • ユニバーサルデザインタクシーに関する国及び地方公共団体の補助制度等の導入促進に向けた対応と事業者における拡充
    • 優良タクシー乗り場の設置、優良事業者・運転者の評価制度
    • 訪日外国人のニーズに対応するためのタクシー・ハイヤー利用の環境づくり、言語・決済の不安解消及び関係機関・団体と連携したプロモーション活動等の取組とその推進
    • 事業者団体等による訪日外国人対応研修・認定制度

(5)消費者の意見の反映について

  • 東京都特別区・武三交通圏タクシー準特定地域協議会における一定の取組等が確認されたが、今後、国土交通省において、タクシーの利便性向上に向けて、同協議会等の場において、消費者の意見を聴取し、より実質的に反映させる仕組み・運用を更に充実させるなど一層の取組が進められるべきである。
  • また、国土交通省において、例えばインターネットを利用したアンケート調査等の有効な方法を検討するなど、中長距離の利用者や潜在的な消費者等の声が十分に把握されているか、運賃体系等への理解が真に得られているかなどの点も含めて、より消費者の実態が把握され、必要な取組がなされるように対応が進められるべきである。

(6)持続可能な経営環境のための取組について

  • 本運賃組替えの事業者の経営状況への影響について、本運賃組替えとの関係は必ずしも明らかではないが、本運賃組替え後に経営状況の一定の改善が見られた。なお、この間、国土交通省により新型コロナウイルス感染症によるタクシー業界への影響調査が行われたところ、運送収入の大幅な減少が確認されており、このような影響に対しては感染症対策、事業継続支援及び需要喚起等の支援がなされている。国土交通省において引き続き必要な対応がなされ、タクシー業界においても社会・経済状況の変化に応じて柔軟な業態の変革等がなされることを期待したい。
  • タクシーのサービスの質・安全性及びタクシー運転手の労働環境に関して、国土交通省において事業者の監視等を行っている状況が確認された。国土交通省は、引き続き、タクシーのサービスの質・安全性が低下することのないよう、継続的に事業者の監視を行うとともに、タクシー運転手の賃金水準・勤務時間等の労働環境の改善に向け、必要な対応をすべきである。
  • さらに、国土交通省は、消費者の利益となるような、より柔軟な運賃設定を事業者が工夫して行うことが可能となるよう、引き続き、運賃規制全般について不断の見直しを続けるべきである。

以上

  1. 初乗り運賃の引下げと加算運賃の見直しにより、全体の運送収入が増加しない運賃にするもの。その詳細は、第59回公共料金等専門調査会(令和2年1月31日)国土交通省提出資料(資料4)1ページ、2ページ等を参照。
  2. 消費者委員会公共料金等専門調査会「一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃組替え案に関する公共料金等専門調査会意見」(平成28年12月6日)
  3. 消費者委員会「一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃組替え案に関する消費者委員会意見」(平成28年12月6日)
  4. 物価問題に関する関係閣僚会議「一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃組替えについて」(平成28年12月20日)
  5. 消費者政策会議決定「消費者基本計画工程表」(令和元年7月26日改定)。事後検証の主体は消費者庁、消費者委員会、国土交通省。
  6. タクシー運賃の改定を行う場合、本来であれば、総括原価方式の考え方に基づき、原価の精査を行った上で、適正な利潤を含めた総括原価と総収入が均衡することを確認するプロセスが必要となるが、今回は、収入増加を目的としない運賃組替えであるとして、これを省略している。
  7. 原価計算対象事業者や当該事業者の中から更に選定された事業者の数値に基づくもの。

 

*議事録についてはアップされていませんが、マスクに関する発言については別途ご報告する予定です。

(古賀 真子)


 

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