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コロナ対応を知るシリーズ その20 新型コロナワクチンの安全性評価は抗体依存性感染憎悪への対応が不可欠

新型コロナウィルスワクチンについて、山本英彦さんに寄稿いただきました。コロナ対応を知るシリーズ19では新型インフルエンザの時の失敗をご報告しました。今回は世界中で鵜の目鷹の目と開発合戦がされる新型コロナワクチンついて、まず危惧され、解決すべき問題点について考えていきましょう。

新型コロナワクチンの問題点

                                 山本 英彦 医師

 6月17日、大阪府知事は、日本のベンチャー企業などが開発を進める新型コロナウィルスのDNAワクチンをヒトに投与する治験を6月30日から大阪市大で始めると発表した。大阪市大倫理委員会の承認もない実質的な人体実験の公然たる推進発表である。ここに、安全性や科学性を無視した現段階の新型コロナウィルスワクチンをめぐる様々な問題点が凝集されている。今回は新型コロナウィルスワクチンをめぐる問題について考えてみた。

1. ワクチン開発の手順

初めに一般的にワクチンが実用化されるまでのプロセスを概略する。

ワクチンは最初の研究開始から臨床試験までに10年以上かかるとされる。まず基礎研究及び前臨床試験(ウィルスのどの部分をワクチンの対象にするのか、実験細胞をどうするかなどの基礎研究、試作ワクチンを接種する適切な動物の選択と接種実験などの非臨床試験)までに3-8年、次の臨床試験(人に接種する治験)に3-7年かかるとされる(2012年厚労省ワクチンに係る規制・制度の現状などより)。臨床試験にこぎつけると、三つのフェーズによる試験が必要となる。

第Ⅰ相試験

 健康人数十人を対象とした安全性試験。主要副作用の特定が主目的。

第Ⅱ相試験

 有効性と適切な投与量の決定を目的。一人から数百人を対象。

第Ⅲ相試験

 第Ⅱ相の結果を証明することが目的。安全性、有効性、適切な投与量を再確認。多くの国から志願者を募り数千人規模までを対象。この後、製造販売承認申請、医薬品承認審査、国家検定などを経て約1-2年後供給開始となる。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000635865.pdf

 

2. 激化する新型コロナワクチン開発競争ともろ手を挙げて追随する各国政府

新型コロナウィルス感染症の世界的大流行の中で、世界的大製薬企業(と資金提供を受けている大学や研究機関)によるワクチン開発と市場支配競争がだれの目にも明らかになってきた。一方、各国は、これらの製薬企業が開発中のワクチンの安全性や有効性をチェックするという本来の義務を遂行するのではなく、製品化された時の優先売買契約を結ぶという方策をとり、優先供給を巡る数百憶ドルという規模の市場が展開されている(例えば朝日新聞7月20日朝刊)。

 ワクチンの種類を問わず、WHOの公表によると、新型コロナウィルスワクチン研究について臨床試験にこぎつけているのが18、前臨床試験段階(細胞培養や実験動物など)が129となっている(Draft landscape of COVID-19 candidate vaccines 2 July 2020)。最も進んでいるとされるのがオックスフォード大学とアストロゼネカの開発になるワクチンで第Ⅲ相、モンデルナ社のワクチンが第Ⅱ相などで、そのほかグラクソスミスクラインなどが競っている。これだけでも安全性、科学的な有効性の検討はできにくい状況となっている。

3. 安全性無視を鮮明にした日本の条件付き早期承認制度

 立ち遅れている日本の方策の一つが冒頭にあげた、阪大とベンチャー企業アンジェスとの開発ワクチンの治験開始騒動である。厚労省は、(日本の)ワクチン会社擁護のため、すでに下図に示すように、基礎研究から治験までのプロセスの短期化を容認してきた。さらに2017年10月、「承認申請時の検証的臨床的試験以外の臨床試験等で一定程度の有効性及び安全性を確認したうえで、……早期の実用化を促進する「医薬品条件付き早期承認制度」の実施を公表」した。基礎研究や動物実験の結果から安全性を検討して臨床試験を行うのではない、このような安全性無視の制度が、今回の大阪府知事のフライングに結び付いているのであろう。

https://www.pmda.go.jp/files/000220723.pdf

(図 早期承認制度のプロセス)

  以前の制度の時間的流れ

基礎研究→非臨床研究→臨床研究

早期承認制度の時間的流れ

基礎研究→非臨床研究→臨床研究  

 

4. ワクチンと抗体依存性感染増悪

すべてのワクチンが有益なわけではない。一番生体の免疫反応に近いはずのウィルス本体から作った不活化ワクチンや生ワクチンでも、日本脳炎、ムンプスワクチンなど被害は多い。最も市場価値の高いインフルエンザの不活化ワクチンが無効なことは年々あきらかとなり、もっとも有効と太鼓判をおされたはずの経鼻生インフルエンザワクチンはいつの間にか話題にものぼらなくなってしまった。ワクチン効果の典型と言われる天然痘ワクチンはむしろ例外と考えるべきである。

ここではワクチンの不活化や弱毒化過程や製造過程の添加物に起因するワクチンの害ではなく、近年明らかとなってきた抗体依存性感染増悪」とくくられるワクチンの本質的問題について述べる。まず実際のワクチンの「抗体依存性感染増悪」を示す。

RSVといわれる、乳幼児や高齢者に重篤な肺疾患をおこすウィルスの不活化ワクチンについて。ワクチン接種しなかった乳児のRSVに罹った児の入院が5%だったのに対し、ワクチン接種者の80%が入院、2名の死者も出した成績が公表され、RSVワクチンは接種中止となった。

デング熱ウィルス(DENV)は最初に罹った時は軽いが、二度目、三度目に罹るとデング出血熱やデング熱ショックなどと重症化することが知られている。最初のDENVワクチン接種後にデング熱ウィルスにり患すると入院率は6.5倍となった。また母親接種後生まれた乳児が最初のデング熱ウィルスにり患すると、初回感染ではありえない重篤なデング出血熱を起こす傾向があった。

このように、ワクチン接種後感染時にかえって症状が悪化するウィルスの存在が明らかとなってきた。り患すると症状が悪化するワクチンが開発途上ないし中止されたウィルスはほかにSARS(2003-4年流行)やMARSのコロナウィルス、西ナイル熱、エボラ出血熱、ジカ熱、HIVなどに及ぶ。

ワクチンによる原疾患増悪については種々のメカニズムで説明が試みられているが、抗体依存性感染増悪(Antibody Dependent Enhancement;ADE)とくくられる。

https://doi.org/10.3389/fmicb.2018.02991

(Maria K;Viral Induced Enhanced Disease Illness 2018)

SARSウィルスについては、フェレットやアカゲザルにワクチン接種後ADEによるSARSの悪化が確認されている(Lambert P-Hら)。ヒトでの報告もある。

こういった背景のもと、ワクチンの世界的雑誌であるVaccineにすら、SARS-CoVワクチンでのADE出現を強調した後、SARS-2ワクチンについて、動物実験でのChallenge test後の抗体、リンパ球の反応などについての注視とアドバイス指針について言及されている。

https://dx.doi.org/10.1016%2Fj.vaccine.2020.05.064

Consensus summary report for CEPI/BC March 12-13,2020 meeting: Assesment of risk of disease enhancement with COVID-19 vaccines

5. 結論

新型コロナウィルスワクチンが治験にまで到達するには、ワクチンによってヒトに中和抗体や、抗体産生に必要なリンパ球ができることが前提となる。同時にワクチンの早期、大量産生を要するため、ほかのウィルスにワクチンを大量生産させヒトに接種する、DNAやRNAをヒトに接種してワクチンを産生させるなどによるワクチンの生産が必要となる。現在開発されつつあるワクチンは、実験室レベルや動物実験では安全性情報を開示しないままこのレベルに達しているものが最先端であるとされる。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673620316044?via%3Dihub

Safty and immunogenicity of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine against SARS-CoV-2: a preliminary report of a phase 1/2, single blind, randomised controlled trial.

つまり今後はヒト治験で安全性や効果についてのデータを集める必要があるとすれば、ワクチンで産生された中和抗体や司令塔であるリンパ球が、ADEを惹起するワクチンでないことを確かめる必要がある。ヒトではウィルスの投与実験はできないのでワクチンを接種されたヒトが新型コロナウィルスに暴露されたときのデータが不可欠となる。半年や一年でこういったデータを出すことは不可能である。

 

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