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コロナ対応を知るシリーズ その19 コロナワクチン待望論の前に新型インフルエンザワクチンの失敗を省みるとき

2020年7月31日、米ファイザーが新型コロナウイルスのワクチン開発に成功した場合、来年6月末までに日本で6000万人分(1人2回接種で1億2000万回分)のワクチンの供給を受けることで同社と合意したとのプレスリリースが報道されました。

まだ見ぬワクチンについて、日本政府とファイザー社との間でどのような契約がなされたのかその中身は不明です。

報道によれば、米政府は7月22日、製薬大手のファイザー(PFE.N)とドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテック(22UAy.F)から、1億回分のワクチンを約20億ドル(約2100億円)で取得する契約を結んだと報道されています。1人当たり約40ドル(約4200円)。製薬業界のアナリストの間では、他のメーカーもこれに近い価格設定を求められる可能性が高いとの見方が広がっています。

今回の契約は、ワクチンが承認されればというのが前提(停止条件付き契約?)。1億回分のワクチンを1回あたり19.50ドルで調達することで合意したとされています。(1人に2回接種で1人当たり39ドル)。年1回のインフルエンザワクチン接種のコストとほぼ同じとされています。

ファイザーとビオンテックは、今月開始予定の重要な大規模な臨床試験で安全性と有効性が証明されるまで、米政府から支払いを受けられない。今回の契約は、ワクチンが完成した場合の価格の大枠を初めて示すものとなったとされています。アナリストも有力なワクチン候補は安全性・有効性という点でどれも似通ったデータを示していると指摘。どこか1社が他社より大幅に高く値付けすることはできないだろうと予想しているということです。

パンデミックをワクチンが防いだか?

世界経済に深刻な打撃を与えている感染症の大流行を克服するには、有効なワクチンが必須だと多くの専門家はみているようですが、ワクチンは数十億人分が必要とされており、製薬各社は巨額の利益を上げることになります。また、パンデミックワクチンについては特に副作用発生してもやむを得ないという考え方が強くあります。しかし、パンデミックをワクチンで防げた実績はありません。ワクチンには莫大な利権が絡むことや副作用が軽視されていることも十分考慮して対策をする必要があります。まだできないワクチンに多額の公費を投じて結局使い物にならず廃棄したうえ、副作用被害を発生させても救済されない法体制であることは避けなければなりません。

前置きが長くなりましたが、今回は2009年の新型インフルエンザ騒動の時のワクチン輸入にかかる顛末と新型インフルエンザワクチンがどういう経緯でどのくらい使用されたのか、また、副作用はどうだったかについて振り返りたいと思います。コロナワクチン待望論の裏側(注意すべき点)が見えてくると思います

1 新型インフルエンザは「パンデミック」だったのか?

WHOは、新型インフルエンザが流行した2009年に、世界的な大流行を意味する「パンデミック」フェーズ6宣言をだしました。

しかし、H1N1は発生当初から、海外の研究者の中には例年のインフルエンザと比較して症状が軽いことが指摘され、疫学の専門家も重大性が過大に評価されていると批判がありました。実際に新型インフルエンザは感染しても軽症で済む人も多かったのに、医療機関には大勢の人たちが押し寄せるなど社会的な混乱をもたらしました。

メキシコで初めてウイルスが確認されたのが2009 年 4 月 12 日、 パンデミックの基準が改定されたのは同年 5 月 4 日、そしてフェーズ 6 が宣言されたのは同年 5 月 11 日でした。5 月に改定された基準では、それまでの基準で問題にされていた症状の重さや 死亡率の高さはもはや問題とされず、パンデミック宣言のハードルが明らかに下げられたのです。そのような批判をかわすためか、H1N1 の感染が確認されたあとに、WHO は拙速にパンデミックの基準を改定したということになります。(当時レベル6まであった警戒基準を廃止し、2013年に新型インフルエンザを4段階で警戒する新たな基準を発表しました。)

当時、各国は季節性のインフルエンザ用のワクチンの製造をパンデミックワクチンの製造に切り替え、封じ込めにあたりました。WHO は H1N1 について、感染したほとんどの人は症状が軽く、治療しなくても一週間以内に回復するとしていたのに、メディアは 「1918 年のスペイン風邪や近年の SARS といった深刻な感染症を引き合いに出したため」に、「パンデミック恐怖」とワクチンや抗インフエンザ薬への過剰な依存態勢がおきました。世界的にワクチン需要が起き、一方的にメーカーに有利な契約が締結されました。各国政府は「新型インフルエンザ」ワクチンを高額で購入しましたが、結局大量に廃棄しました。グラクソ・スミスクライン、バクスターインターナショナル、サノフィパスツールといった巨大企業は、「新型」との触れ込で、効果や副作用の検証を十分に行なっていないワクチンや治療薬を各国政府に販売したとされています。しかも、副作用については各国政府に責任を転嫁する条件での販売でした。パンデミックに便乗した片務的な契約があたりまえのようにされたわけです。結局、多くの国では、買い取ったワクチンのほんの一部しか使われず、残りは廃棄処分されました。例えば、フランスでは、H1N1 による死亡者は 312 人だったが、政府は多くの感染者と死亡者を予測して 9400 万回分ものワクチンを購入した。結局ワクチンのほとんどは使われず、5000万回分をキャンセル、2500 万回分を廃棄したとされています。

欧州評議会は、WHOや、その他の国際機関、そして加盟各国政府に対し、公衆衛生政策の決定に透明性を確保することなど求める勧告を 2010 年 6 月 24 日に採択しました。また、新型インフルエンザワクチンの副作用について2011年2月9日付の日本経済新聞は、「世界保健機関(WHO)は2月8日、新型インフルエンザ用ワクチンの一種を接種した子供や若者が突然睡眠状態に陥る副作用が12カ国で報告されていると発表した。フィンランドやスウェーデンなどで、日本は含まれていない。WHOのワクチン専門委員会は今後、ワクチン接種との因果関係について調査を始める。副作用が報告されているワクチンは英製薬大手グラクソスミスクラインが製造した「パンデムリックス」。WHOによると、2009年から10年にかけて欧州を中心に世界47カ国で使われた。ジュネーブの日本政府代表部は「日本では未使用」としている。突然睡眠状態に陥る症状は「ナルコレプシー」と呼ばれる。ワクチンを接種していない人も発症するため、WHOは「ワクチンが原因かどうかは現時点では断定できない」と報道しました。

2009年に”流行”したとされるのは豚インフルエンザです。当時WHOは豚インフルエンザを疫病の最高危険度レベル6と認定し、加盟国に国家課題としてワクチンを税金から購入することを義務づけ、重篤な副作用も発生させていたということができます。

2 大量廃棄と副作用 日本も例外ではなかった

日本での流行はどうだったでしょう。過去のパンデミックレビュー「内閣官房新型インフルエンザ等対策室」によると、メキシコ市周辺で57人が死亡した疑いがある」。2009年4月24日、米国とメキシコ周辺で豚が感染するインフルエンザウイルスに数百人が感染しており、死者が相次いでいることを世界保健機関(WHO)が発表した。WHOの発表を日本のメディアでは時事通信が同日午後7時37分に配信したのが一報だった。ここから新型インフルエンザ報道は一気に加熱していった。(注1)

新型インフルエンザパニックがくることは何十年も前から度々強調されていました。日本では1958年にインフルエンザワクチンができ、その後学童防波堤論の元に子どもたちへの集団予防接種が約46年間され続けました。副作用や効果への疑問、被害者訴訟や養護教員の運動の結果1994年の予防接種法改正で義務接種から外れたものの、2000年代にはいり努力義務をかさない高齢者への努力義務接種が始まり、現在は肺炎球菌ワクチンとともに高齢者の接種だけでなく全世代にワクチンが浸透しています。ワクチンの接種は人口の半分に及び、抗インフルエンザ薬も増えました。ワクチンや抗インフルエンザ薬の備蓄も2009年を境に強力に莫大な公費を投入して整備されてされてきました。

しかし、そもそもインフルエンザワクチンの効果は、「重症化予防を期待」されるレベルであり、社会防衛効果は否定されています。その上、新型には従来のワクチンでは効果がありません。ワクチンがあれば新型コロナパニックは治るという方がいますが、新型インフフルエンザでも従来ワクチン効果がなかったことを考えれば、「ワクチンがない」という現実は同じです。

2009年当時、日本でも新型インフルエンザの流行に対応して、新型インフルエンザワクチンが輸入されました。2009年11月12日に、70代の男性が新型インフルエンザワクチン接種後死亡し、同月19日までの1週間のうちに13人の方がワクチン接種後に亡くなりました。新型インフルエンザは高齢者の感染者が少なかったといわれましたが、ワクチン接種後に133名が死亡したとされています。罹患後の死亡より、ワクチン接種後の死亡が多いのでは本末転倒です。(詳しくは(「もうワクチンはやめなさい」双葉社 母里恵子著144~149頁参照)

日本での新型対策問題については、詳細に検証されているとは言えません。ポイントは2つあります。

①海外輸入ワクチンはほとんど使われなかった

日本では、2009 年に H1N1 対策として、国産ワクチン5400万回分(210億円)、輸入ワクチン6700 万回分(853 億円)を政府が買い上げ、のちに国産ワクチン 3100 万回分、輸入ワクチンのほとんどを廃棄していたとされています。(第 177 回参議院決算委員会 2011年 5月23日議事録(自由民主党藤井基之議員による質問)

2020年7月 厚労省担当官に聞き取りしたところ、以下のことがわかりました。当初輸入されたのはグラクソクライン・スミス社(以下、GSK)の3700万人分、ノバルティス社の1200万人分。しかし使用したのは約1000人分。こちらは報道によると、(薬事日報2010年11月1日)接種回数が薬7550回、副反応は5件、重篤例は1件のみとされています。厚労省の説明接種者約1000人と接種回数の乖離がどうしてなのかはわかりませんが、副反応については国産のもので1件の死亡とされています。

②副作用は発生している

日本では、2009 年に H1N1 対策として、国産ワクチン 5400 万回分 (210 億円 、輸入ワクチン 6700 万回分 (853 億円 を政府 が買い上げ、のちに国産ワクチン 3100 万回分、輸入ワクチンのほとんどを廃棄していたとされています 。
海外ワクチンを大量に4900 万人分も輸入しながら、 1000 人程度しか接種をしなかった理由は曖昧にされていますが、一方で 2009 年から 2010 年 6 月までの国産のワクチンの推定接種可能数は 22,833,137 回分。副反応報告は 2428 人.うち重篤が 416 人.死亡報告が 133人と記録されています。死亡の年齢別の内訳は、 91.0 %が 60 歳以上、 70 歳以上が 78.2% 、80 歳以上が 49.6% だったとされています 。
一方、副反応認定件数は2011 年 41 人(申請は 76 件)、 12 年 28 件(申請 65 件)、 13 年 10件(申請 23 件)、 14 年 0 件(申請 1 件)、 15 年 0 件(申請 2 件)、 16 年 2 件(申請も 2 件)、17 年 0 件(申請も 0 件)とされています。(医療費・医療手当と障害年金などの詳細は不明とされていますが、障害年金が 2 名、障害児養育年金が 5 名認定されています。子どもで重篤な副作用が発生したということです)。実際にどれくらいに人が接種し、被害報告の実態がどうだったかは厳密に検証されていませんが、新型インフルエンザが怖いと、ワクチンを接種して、発達障害や自閉症様の症状を起こし被害申請したものの認定されなかった
方からの深刻な相談を受けています 。
パンデミックをワクチンで防げた実績はありません。ワクチンには莫大な利権が絡むことや副作用が軽視されていることも十分考慮して対策をする必要があります 。新型インフルエンザワクチンでは多額の公費を投じて外国製ワクチンを抱え込み接種されることなく大半を廃棄し、流行が既に収まった段階で使用した国産ワクチンでは副作用が発生したものの、多くの人は認定されず泣き寝入りを強いられたというのが実態だと考えられます 。
実際にどれくらいに人が接種し、被害報告の実態がどうだったかは検証されていませんが、筆者のところにも、新型インフルエンザが怖いと、ワクチンを接種して、発達障害や自閉症様の症状を起こし被害申請したものの認定されなかった方からの相談がありました。(受ける/受けない予防接種114〜117ページ)

私たちはこれからどう考え行動すべきか

まだ見ぬワクチンに莫大な公費が投入され、本当に誰に必要なワクチンなのか、副作用はどうなのか、それを決めているところはどこなのか。2020年7月30日、コンシューマネットでは厚労省の担当者に説明を求めましたが、ワクチンも含め、決定的をしているのは内閣官房のようです。(注3)

今回のコロナ関連の根本的な問題を考えるためには、医療基本法の目指す「健康」を実現するという目的に照らして、感染症法インフルエンザ特措法のあり方を検討することが重要です。ワクチンへの期待が妄想に終わることも十分考えた上で、今回のコロナの病気としての重篤さや対応の適切さ、新型コロナワクチンで接種者に健康被害が発生した場合、国が製薬会社の弁護士費用や賠償金を肩代わりするという法案が次期国会に向けて準備されているなか、前のめりの姿勢で、安全性に関する審査が適正に行えるかも懸念されます。

経済回復のお墨付きが欲しい経済界のワクチン期待がふくらむ一方で、ワクチン強制接種への市民の恐怖心も高まっています。

次回はワクチンそのものについて世界の動向と山本英彦医師のワクチンについての考察を紹介します。法改正動向も踏まえて、関係審議会へ申し入れを行って行く予定です。

(古賀 真子)

(参考)

新型インフルエンザ当時の報告
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/dl/infu100528-02.pdf

WHO 資料「2009 年インフルエンザパンデミック(H1N1)その広がり
https://blog.goo.ne.jp/cabinet_new_wave/e/4af4029ca58ebe73c51d859d3d1cd6bb

(注1)2010年  日経新聞記事
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0803U_Y1A200C1CR8000/

(注2)過去のパンデミックレビュー|内閣官房新型インフルエンザ等対策室
http://www.cas.go.jp/jp/influenza/kako_09.html

(注3)

コロナ関連 官房ではなにが議論?
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/corona1.pdf

57〜62ページに着目

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/kakuryoukaigi.html

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