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もっと知りたいフッ素の話 その43   学者や市民団体が米国EPA(環境保護庁)に対して、水道水フッ素化が有害物規制法違反と提訴〜錚々たる証人により原告勝訴の見込み

2020年6月8日に、米国のカルフォルニアで水道水のフッ素混入について、訴訟を起こされました。米国の市民2億人、世界全体で4億人がフッ素混入の水道水の飲用を余儀なくされています。今回の訴訟はフッ素が虫歯予防になるかどうかということではなく、フッ素そのものの有害性を明確にしたものです。コネット氏と長年親交のある秋庭賢司さんに寄稿いただきましたのでご紹介します。

 

水道水フッ素化中止を求める訴訟TSCA trial

結果は凍結(3ヶ月以内に確定)                

裁判官の提案:双方の歩み寄りで有害物質規制法第6条のルール作りへ;無理なら判決が下りる

裁判(7日間)の報告と原告側証言者の報告書は、以下にて入手可能です。

http://fluoridealert.org/issues/tsca-fluoride-trial/

 

解説                                                秋庭賢司 2020 6/27

はじめに

6/8~17まで北カルフォル二ア地区のサンフランシスコ連邦地裁で開廷された。

提訴の理由は、水道水のフッ素化が米国EPAの規制しているTSCA(Toxic Substances Control Act: 有害物質規制法)の6条(リスク評価の規制)に違反していること、及び第21条の市民からの請願るもの、としている(いずれも2016年の改正前の条文)。

カリフォルニア州で提訴した理由、1989年に安全飲料水や有害物質施行法(プロポジション65)が成立しており、飲料水への規制が厳しい州だからであるアメリカの場合、州法と連邦法との関係性・優先性は、常に問題となるところである以下参照)。

化学物質国際対応環境ネットワークhttp://chemical-net.env.go.jp/mag/mag_bn72.html

日本化学物質安全・情報センター https://jetoc.or.jp/e-commex/category/item/1/1_1-item/

裁判の経過

2016年11月、原告らがEPAに対し飲料水にフッ素を意図的に添加するを禁ずべくTSCAの6条の行使(ヒトへの不当な毒性リスクがあるとされる既存の化学物質に対処する)を申請したにも拘わらず、EPA2017年2/28第6条の改正を求めた請願を拒否している(以下参照)。

https://chemicalwatch.com/53882/us-epa-rejects-petition-calling-for-tsca-section-6-rulemaking

その間原告側は2回の予備審査(2017年12/22と2018年3月)を通過した後、本裁判が2019年8月末に予定されていた。米合衆国では予備審査(preliminary hearing)により、刑事訴訟における正式の裁判に先立って、当該案件を審理(起訴)するに足る証拠があるか否かを判断する手続きがあり、その後正式な裁判となる。しかし、EPAによる裁判延期要望やコロナ禍の影響で、2016年の提訴から既に4年が経過している。

今回の裁判は双方の証言者の宣誓の下,7日間(6/8,9.10,12,15,16,17)に及ぶウェブ会議により開廷された(日本時間では主に深夜12時30早朝4時)

双方の証人に対して、両者の弁護士が尋問と反対尋問を実施してフッ素化推進と中止の根拠を質した。

裁判官は一人北部カルフォル二アサンフランシスコ連邦地裁):Edward M Chen

告訴団体:Fluoride Action Network, フッ素化に反対する母親の会、Food&Water Watch.

原告側弁護士: Michael Connet(FAN代表ポール コネットの子息)

原告側の4証人

1)Philippe Grandjean, MD, PhD. 内科医、環境疫学者(労災職業病)

ハーバード大学公衆衛生学(Harvard T.H. Chan School) 兼任教授、南デンマーク大学

環境医学主任教授、 EPAでは食物中水銀摂取量の安全量(BMD)設定に貢献した責任者。

1980年以後にフッ素(クリオライト)労働者の認識機能低下などを研究。

2) Howard Hu, MD, MPH, ScD. 内科医、環境医学者(労災職業病)、疫学公衆衛生学者として20年以上従事。

新生児、小児のフッ素暴露による脳の発育への影響(ELEMENT:メキシコ研究プロジェクト2017,2018))の主任研究者。フッ素と鉛の神経毒性の類似性を指摘。

3) Bruce Lanphear, MD, MPH. 小児科医、カナダSimon Fraser大学健康科教授

カナダで進行中の母親と子どもへの早期フッ素暴露と子どもの知的能力への影響(2018,2019,2020年のMIREC研究:合衆国NIHの研究資金提供)の共同代表研究者。

EPAでは鉛の神経毒性の研究で貢献。

4) Kathleen Thiessen女史 PhD.オークリッジリスク評価研究所(テネシー州)にてリスク評価研究者として、30年以上勤務。フッ素を含め、微量な環境中混入物質がヒトに与える影響(暴露濃度)のリスク評価研究に従事。

現行のフッ素の毒性に関する論文では、フッ素の神経毒性によるのか、また水道水フッ素化の濃度(0.7mg/L)が危険なのかを決めるに際し、EPAで使用されているリスク評価の概念が適用できるかどうかの検討を依頼されている。

いずれも、裁判の開始前からフッ素に詳しい研究者であり、EPA自体が上記4人の研究者に水銀、鉛の毒性やその他の化学物質のリスク評価など信頼していた存在である。

いわばEPAの内部告発に相当する。

その他の証言者: Dr. Joyce Donohue女史:2019に撮影したビデオ録画で証言

EPA水道部門に1996から所属し、フッ素のスポークスパースンである。

フッ素に関するEPAの関心は、歯と骨であり、発育中の脳への影響は関心外である。

NIHの(メキシコ、カナダ)研究は、現行のフッ素の既成概念を全て再評価するに足るしっかりした、良い研究である、とビデオで述べている。

被告:EPA(環境保護庁)

被告側弁護士:Brandon Adkins女史(EPA法務担当部門を代表)

Debra Carfora女史 (EPA代理人:雇われ弁護士、科学顧問会社に所属)

被告側の2証人EPAに雇われた,科学顧問会社の専門家で、フッ素に関する著作はない。

1)Joyce Tsuji女史 PhD. EPAの雇われコンサルタント

2)Dr. Ellen Chang女史. 企業の利益のために長年貢献してきた

いつもその論法は、その製品が原因となる因果関係を証明するには、証拠が不十分である(原因による完璧な証明を求める:原告側による立証責任に相当する)とするシステマティックレビューを企業と協力して作成することである。

これらの中には、ダウケミカルの枯れ葉剤(エイジェントオレンジ:ベトナム戦争で米軍が使用)の発がん性の否定、モンサントのグリフォサート(除草剤),3M社のPFOA(有機フッ素)除草剤(農薬)販売する多国籍企業シンジェンタ、クロップライフなどのレビューがありその他American Chemistry Council, American Petroleum(石油) Institute, the Manganese(マンガン) Interest Groupなど企業と親密である。

今回の裁判ではEPAに対して個人的に$150,000顧問者全員では$350.000を請求したことが判明している。(裁判5日目6/15の報告に詳細

その他の証言者

3)Dr.Tala Henry女史 EPA リスク評価部門に25年勤務。フッ素の専門家ではない。

EPAは以前に6条に基づいて物質を注視したことはない(6/16に証言)

4)Casey Hanna CDC(疾病対策センター)の口腔衛生部門管理者

フッ素は胎児や小児の神経毒とするいかなる文献もない。フッ素は無害であるとする、他の機関を信頼している。フッ素化は虫歯予防に有効であり推進している(6/10に証言)

5)Kristina Thayer PhD EPA の化学物質及び汚染物質のリスクアセスメント部門の管理者。収集したフッ素暴露による動物実験での結果は、限界はあるにしても、ヒトでの神経毒性を支持する結果であり、子どもは成人に比べて脳関門が十分に発達しておらず、フッ素に対し敏感である(6/10に証言)

 

裁判での論争点

この裁判ではフッ素の虫歯予防効果は争点としていない。Chen裁判官はオレンジ(効果)とリンゴ(害)は同時に論じられないとして争点を胎児と乳幼児の発育中の脳への影響に絞っている

原告側の主張(冒頭にある資料で各証言者の報告書を入手可能)

*Philippe GrandjeanBashash2017,Green2019の研究結果から、IQ低下の安全なフッ素の一日総摂取量(Rfdを0.15mgとしている。フッ素化された0.7ppmの飲料水は1Lで0.7mgのフッ素を含み、安全量を超える。RfdやBMDは以下の文献を参照のこと。

file:///C:/Users/akiniwas/Downloads/BMD%20Benchmark%20dose.pdf (6/9に証言)

Howard HuBasash2017,2018の主任研究者である

Basash2018ではフッ素ADHD(注意欠如多動性疾患)との関連を指摘しているまたフッ素と鉛の神経毒性との類似点を挙げている(6/8に証言)。

Bruce LanphearEPAでは鉛の神経毒性の研究で貢献した。2018,2019,2020のカナダ研究の共同研究者である。Green2019年の研究で男女差があるのは珍しいことではなく,鉛の神経毒性の研究や、Mullenix(1995)によるフッ素の動物実験でも指摘されていることであり、調査結果の信頼性を揺るがすものではない(6/10に証言)。

Thiessen女史6論文の動物実験の結果から、ヒトでの安全なフッ素の一日総摂取量を体重1kg当たり0.03mg(最大)~0.0007mg(最小)/kgと推定している。0.7ppmにフッ素化された飲料水で粉ミルクを溶くと、0.5Lを飲めば0.35mg/体重5kg=0.07mg/kgとなり安全量を超える。EPAのリスクアセスメントと同じ方法論を使い、フッ素の毒性を証明。

EPAのリスクアセスメントの方法は動物実験の結果を外挿法により、ヒトの安全量を推定するのが主流で疫学調査ではない。

原告側が根拠とした4文献

1. Bashash ほか.2017: 4歳、6~12歳でIQ低下

掲載雑誌Environmental Health Perspectives 2017.9月号

2. Bashash ほか:2018で、妊娠中尿中フッ素濃度の上昇とADHDの発症を報告している。
3. Green ほか.2019.8月:3~4歳でIQ低下掲載雑誌

JAMA Pediatrics(アメリカ小児科学会雑誌)

4. Till ほか. :飲料水フッ素化でIQが低下、フッ素化された水で溶いた粉ミルクを飲用すると更にIQが低下。雑誌名Environmental International.134(2020)105315

 

被告側の主張

Joyce Tsuji女史 PhD.フッ素による動物実験で、行動、記憶、学習障害の発症しない(NOAEL)濃度を20ppm(Mcpherson,2019)としている。ヒトに換算すると1.3ppmであり、フッ素による毒性は体重減少などによる間接的な作用である、としている6/15に証言

Dr. Ellen Chang女史上記4文献の批判をした後、10文献のフッ素の使用によりIQが増加した例を挙げている(そのうち5文献は間違っているまだ出版されていない文献も挙げている(6/15に証言)。ちなみに、フッ素と知的能力に関する研究は73あり、知的能力の低下は65文献で報告されている。また動物実験では60以上の文献が学習、記憶障害を報告している(2020年5月現在)。

EPAはフッ素症(歯と骨)だけを問題としている。原告側がフッ素による発育中の脳へ影響を含め、有害物質規制の6条による既存の化学物質であるフッ素の規制(水道水へのフッ素添加は中止)を求めたにも拘わらず、EPAは回答をしていない。

EPAは一般原則(standard causation)により規制している

EPAはフッ素の脳への影響について資料を持っていない。

EPAはルール作りができる研究者と資金がない6/17EPAの弁護士Debraが告白した)

裁判官の提案(Recommendation:勧奨

Chen裁判官は、閉廷に当たり以下のコメントを発表した。

2016年の告訴の後、誰もが同意する最高の研究方法による2つの重要な連続文献が出版された。確固とした研究であり、最高の科学的根拠であることは皆が同意する。

TSCAに関して私が理解する限りでは、EPAが採用した一般原則は正確ではない。正しい基準ではない。原告が申請書を修正し、EPAによる再評価が可能かどうかを議論し、それが成し遂げられるまで、裁定の最終判断は保留する」との提起をした。

原告は4年間の労力を費やし、EPAによる申請書の拒否や裁判の引き延ばしに会い、更に再度申請をするのは苦痛であるが、受け入れざるを得ないだろう

今後の経緯

裁判官の提案により6/17から90日以内(8/6裁判所で双方のhearingを設定双方の歩み寄りによるルール作りを模索する。この提案はEPAの配慮がうかがわれる。

無理なら裁判官の裁定(おそらくFANの勝訴)

EPAは政治的に無視してこのままを維持し、控訴するかもしれない。

その間にソフトランディングを模索する可能性もある

フッ素問題だけではなく、EPAはNGOから多くの告発を受けており、フッ素問題がアリの1穴になりかねない。

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