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コロナ対応を知るシリーズ その5 日本で新型コロナによる死者がすくないのは?~ガイドラインは改善の余地ありだが、現衛生管理には評価すべき点があり!

連日新型コロナの報道でもちきりですが新年度がはじまっても学校も始まらず、テレワークや自宅待機で外出もできない状況で将来への不安を切実に感じていらっしゃる方も多いのではないかと思います。

何かと批判の多い日本の対策ですが、冷静に見て、諸外国にくらべて死者がすくないのはなぜか、今回は日本の衛生観念がそのカギを握るのではないかと言う点から、シリーズ第3回でも登場いただいた、柳元和医師が中国等での感染対策の検証から、いま、いま国のとっているガイドラインや国立感染症研究所、国立国際医療研究センター、国際感染症センターによる「 新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」の問題点、改善すべき点についての見解を寄せくださいましたのでご紹介します。(問題提起は青字、国のガイドライン(引用)は緑字、提言については橙色でしめします)

柳さんは、日本のガイドライン

「新型コロナウイルス感染症に対する保健所の対応への助言 ver.4」(2020/02/12)(新興再興感染症対策等健康危機管理推進事業班による)の検討をされ、以下のような指摘をされています。

1.対象者定義のあいまいさ~検査対象者を明確に規定できないし、検査体制もできていない

この助言では、「保健所対応で重要となるエビデンス」として、「軽症者からも感染する。(なお、無症候病原体保有者から感染するかどうかは、現時点では明らかではない。)」と明記しています。ここに言う軽症者とは、呼吸器症状を念頭に書かれているようで、そうすると全てのカゼ症状が対象になってしまいます。したがってカゼ症状を呈する人々をどのように振り分けるかが大問題になります。

ところが続く「『V.新型コロナウイルス感染症に対する具体的な対応方法』1.患者対応の流れ」では、サーベイランスの検査対象者を以下のように設定しています。

「流行地への渡航歴、軽症者との接触歴、疑似症サーベイランスの報告対象で新型コロナウイルス感染症の鑑別が必要なもの(指定感染症とする)」

つまり全てのカゼ症状がある人と、疑い症例接触者は「検査対象である」というのです。しかし本助言が出された時点でコロナウイルスの検査体制は確立していませんでした。現時点でも、どのように検査を進めるのか十分明らかにはなっていません。保健所等相談窓口へ電話が殺到し職員は疲弊しています。誰が重症化するのか明らかでないので、国民の不安は高まるばかりです。特に問題なのは「各自治体において…柔軟に検査を行っていただきたい。」とし、自治体に責任を押し付けているように読めることです。これでは世界的流行が起きた時に諸外国から「日本は本気で検査をする気があるのか」と批判を受けても仕方がないことになります。

 

2.呼吸器症状にのみ注目する症例定義の問題点

コロナウイルスは色々な細胞に感染できる?

 続く「7.症例定義」では以下のように述べられています。

「検査材料:喀痰、気道吸引液、肺胞洗浄液、咽頭拭い液、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、剖検材料」そして感染が疑われる患者の要件として発熱と呼吸器症状が挙げられています。しかしながら、入院患者の4割に食欲不振が認められ、1割には下痢も認められるという報告があります1)。コロナウイルスは全身の細胞に感染できる可能性があるのです。また口腔拭い液で陰性化した患者でも肛門拭い液で陽性であったことが報告されています2)ので、呼吸器症状に限定するのは危険です。 

しぶといコロナウイルス

消毒についてですが、ヒトのコロナウイルスは器物の上で最長9日間生存可能です3)。これらを触った手で目や鼻をこすると危険だとされています。消毒にはアルコールや次亜塩素酸ナトリウムが有効で、ベンザルコニウムやクロルヘキシジンの効果は劣るようです。現時点では、予防のために、消毒が何よりも重要だと言えるでしょう。

 

3.患者(確定)および疑似症患者への行政対応の問題点 

再度の陽性化が起きることも念頭に対応すべき

本助言では、退院に関する基準として、

・37.5度以上の発熱が24時間なく、呼吸器症状が改善傾向である。

・48時間後に核酸増幅法の検査にて陰性を確認

・上記検査の検体を採取した12時間以後に再度倦怠採取を行い、陰性を確認

 

としています。ここでも呼吸器症状以外は記載されず、消化器症状や肝機能、腎機能のチェックは推奨されていません。

また2月末、新型コロナウイルスに感染した患者で症状が改善し陰性反応が出たあとに、再び陽性と診断された例が報道されました。陰性化のあと再度陽性化する例は既に報告されています4)感染拡大防止には、検査陰性化で大丈夫とは残念ながら言えないのです。退院後も引き続き消毒等に細心の注意を払いながら、身体症状の変化に注意を払うべきだと思われます。

 

4.国立感染症研究所、国立国際医療研究センター、国際感染症センターによる「 新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」(改訂2020年3月19日)の検討

 

この文書では、

  • 外来患者の待合室では、発熱や呼吸器症状を訴える患者とその他の患者、または発熱や呼吸器症状を訴える患者どうしが、一定の距離を保てるように配慮する。呼吸器症状を呈する患者にはサージカルマスクを着用させる。
  • 医療従事者は、標準予防策を遵守する。つまり、呼吸器症状のある患者の診察時にはサージカルマスクを着用し、手指衛生を遵守する。サージカルマスクや手袋などを外す際には、それらにより環境を汚染しないよう留意しながら外し、所定の場所に破棄する。さらに手指衛生を遵守し、手指衛生の前に目や顔を触らないように注意する。としています。これらを遵守している医療機関では、医療従事者が患者と接触しても濃厚接触者として扱わないためです。 
  • 一方、医療機関に準ずる施設でも標準予防策の徹底が図られました。介護関係や保育関係の施設は閉じることができなかったので、医療機関と同様の措置を取らざるを得なかったのです。特に効果的だったのは「手指衛生を遵守」だった可能性があります。また、これらの施設以外の店舗など、たとえば食料品店や食堂からは自由に取り分けするためのトングなどが見られなくなりました。公共施設などのトイレでも、病原体をばらまく危険性のある、手のドライヤーが使用禁止になりました。これらはあまり強調されていないものの、保健所等の公共機関を通じて指導されたもので、関係職員の奮闘に敬意を表したいと思います。イタリアやアメリカで感染爆発が起こっているのに比して、日本では比較的ゆるやかな進行となっているのは、決して偶然ではないでしょう。
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5.台湾の対策が世界から称賛されるわけ

 世界から称賛される台湾の新型コロナウイルス対策5)は、かつてSARSに悩まされた経験がもとになっています。感染爆発の危険性がある時、まず守るべきは医療従事者であるという考えから、感染者の交通整理が実施されています6)。全ての疑い症例は、病院施設外のステーションで検査し振り分けられてから、陽性例は隔離病棟に、疑い例は検疫病棟に直接移されます。医療従事者の動線は完全に一般病棟と遮断されているのです。また全ての病院訪問者は、入り口で手の消毒とマスク装着が義務付けられます。この方法を実施すると医療従事者の発症はゼロになったとのことです。

 

6.消毒と一般診療の大切さ

 日本のこれまでの対応は、お世辞にも整理されたものとは言えません。しかし現場では、かなり実践的な対応がなされ、それが感染爆発を抑えた可能性があるのです。したがって引き続き標準予防策を続けることが強く勧められます。

コロナウイルスは世界中にありふれたウイルスであり、また変異を繰り返すことでしょう7)。新型コロナウイルスを初め全てのコロナウイルスを人間界から遮断することは不可能です。したがって重症化する可能性のある人々が健康を脅かされないで生活できるように、「消毒」を徹底することが非常に重要です。

 重症化防止法の確立も急がれます。現時点で重症化する可能性のある人とは、高齢であること以外に、リンパ球減少と好中球増加、CRP上昇、血清生化学検査の異常(AST、LDH、BUN、血糖などの増加、コリンエステラーゼの減少など)などを示す人です8)。明確な症状は無いが疑わしい方々には、こういった一般的な血液検査が必須ではないでしょうか?

(以上 柳元和さんの見解)

次回は日本でのこれまでの肺炎死亡の実態と新型コロナウイルス感染と死亡を中国やイタリアと比較して、なにをどう恐れ、どのような注意をして生活するのが良いのかを医療問題研究会の山本英彦医師の提言をもとに考えていきたいと思います。         

  (古賀 真子)

 

参考文献等

  1. J Hosp Infect. 2020 Mar;104(3):246-251.
  2. Emerg Microbes Infect. 2020;9(1):386-389.
  3. J Hosp Infect. 2020 Mar;104(3):246-251.
  4. JAMA. 2020 Feb 27. doi: 10.1001/jama.2020.2783.
  5. https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5e730079c5b63c3b648a6720
  6. Clin Infect Dis. 2020 Mar 12. pii: ciaa255. doi: 10.1093/cid/ciaa255
  7. Methods Mol Biol. 2015;1282:1–23. doi:10.1007/978-1-4939-2438-7_1.
  8. JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2020.0994
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