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コロナ対応を知るシリーズ その2 中国コロナ患者72314人のデータ解析と妊婦さんからの垂直感染結果もふくめ、知っておくべきことをわかりやすく説明

今回は、田中真介さん(京都大学国際高等教育院准教授、大学院人間・環境学研究科兼任)に新型コロナについて今私たちが最低限なにを知っているとよいかをわかりやすく書いていただきました。学生たちの健康管理などの職責もある田中さんが、学生や教職員の方からの問い合わせに答えて、対応案を説明するときの参考資料として準備されていたものです。京大でさえ、いろんなイベントの「自粛」要請が続いているのが実情だそうです。

新型コロナウイルス(COVID-19)への対応について(参考資料のまとめ)

田中真介(京都大学)

■はじめに

新型コロナウイルス(COVID-19)について、1)実態をとらえた研究報告の要点と、2)インフルエンザなど他の感染症との比較検討をもとに、3)本ウイルス感染症に関する現状の理解の観点と今後の対応の試案をまとめます。学生たちからの質問に答えて準備した資料です。ご参考までに。

■(1)実態をとらえた調査資料より(インフルエンザとの比較検討)

1)新型コロナウイルスの感染者数や死亡者数(感染率、致命率)は、例年の季節性インフルエンザの場合を下回っています。特に乳幼児の感染例は少なく、また、死亡者数は今のところ報告されていません。
 実態をとらえたデータからみると、現時点では、普通のカゼと同程度の感染率・致命率と考えてよいように思いました。ただし、インフルエンザの場合と同じく、高齢者と基礎疾患がある場合には気をつけてあげてください。
 ※基礎疾患…糖尿病、心不全、腎障害・透析患者や、生物学的製剤、抗がん剤、免疫抑制剤の投与を受けている方など。また妊婦さんも留意必要。
 体調をととのえておくことが、最も大きな予防策になりそうです(感染は原理的に防げませんが、発症した際の症状が軽くなると思いました)。
… 

2)実態としては、例年のインフルエンザの方が感染者数や死亡者数が圧倒的に多いです。まだコロナウイルスの問題点(感染力や症状の度合い、今後の動向など)がよく見えていない段階なので何とも言えませんが、冷静に対応する必要がありそうです。

(参考情報①)わが国でのインフルエンザの感染実態:

  • インフルエンザの発症者数:日本で、1シーズン20~30万人以上。100万人を超えるという報告もあります。
  • さらに「不顕性感染」がかなりあると推定されます。2008年の「新型」インフルエンザ(A/H1N1)の場合には、発症者を上回る人数の人たちが不顕性感染だったことが確認されています。
  • 例年の季節性インフルエンザでの死亡者数は、「超過死亡」者数を含めると1シーズンで平均1万2000人と推定されています(厚労省、国立感染症研究所)。インフルエンザそのものによる死亡者数は、2018年は3325人でした(上記の2009年のシーズンの「新型」インフルエンザのときは、発症者数21万人、死亡者数は2185人でした。このA/H1N1型ウイルスは、のちに「季節性」と認定されました。近年のインフルエンザA型の主流となっています)。

(参考情報②)アメリカ合衆国でのインフルエンザの感染実態:

アメリカでは例年1万2000人~5万6000人がインフルエンザで死亡(米CDC報告。人口は日本のおよそ3倍、3億2775万人です)。2017年~2018年のシーズンは特に大規模なインフルエンザ流行があり、死亡者数は6万1000人。米ではその後、2020年3月現在にいたるまで流行が続いているとの報告があります。

■(2)新型コロナ対応案(現時点での試案メモです)

  • コロナウイルスそのものは、既存の、カゼの原因となってきたウイルスです。
  • 新型コロナウイルスの大きさは、0.1~0.15μ以下(ミクロン。1μは1/1000㎜)。マスクの網の目を余裕で通過します。インフルエンザウイルスよりさらに小さめです。
    (ウイルスをサッカーボールとすると、通常のマスクの網の目は東京ドームくらい。ウイルスを完全防御するには防毒マスクが必要です。また、私たちは必ず素手で何かをつかむ生活をしているので、ウイルスと自然に友だちになっています)。

  • 感染拡大を防ぐのはむずかしい。ウイルスたちにも暮らしがあります。
  • 高齢者や基礎疾患をもつ人たちのケア重要。

9歳以下の子どもたちで重症化した事例は少ない傾向にあります(子どもの感染率・重症化率が低い理由はよくわかりません。インフルエンザウイルスは1年ごとの変異が大きいのですが、インフルエンザの場合には、子どもでは感染~発症の率が高く症状も明確。高齢者ほど罹患率、発症率は低下します)。

  • 非感染者がマスクや手洗いをすることによって大規模な感染が予防できたことを実証した研究はありません。無菌状態の生活は困難です。
  • ただ、マスクや手洗いは、感染者・発症者が行う場合にはある程度の感染抑止(感染確率の低下)の効果があると期待されます。


■(3)新型コロナ研究報告例
①中国コロナ患者72314人のデータ解析結果:
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202002/564443.html
原題は「The Epidemiological Characteristics of an Outbreak of 2019 NovelCoronavirus Diseases (COVID-19) – China, 2020」
(*原著論文:http://weekly.chinacdc.cn/en/article/id/e53946e2-c6c4-41e9-9a9b-fea8db1a8f51

  • ウイルス検査による確定例:44672人(62%)…30歳代~70歳代が86%を占める。基礎疾患ありがおよそ半数か(武漢大学中南病院では、136名中64名46%に基礎疾患があった)。
  • 確定例のうち1023人が死亡(致死率は2.3%)。高齢者ほど致死率が高く、9歳までの小児では死亡例なし(湖北省の人口は5850万人。その省都である武漢市の人口は1108万人)。
  • 確定例 44672人(62%)に対して、疑い例:16186人(22%)、臨床診断例:10567人(14.6%)
  • 不顕性感染者:889人(1.2%)…ただし不顕性感染者は検査・診断そのものを受けていない場合が多いため、低く見積もられる傾向にある。

「新型」なので、インフルエンザなどの例年の感染症よりは「発症」する人が多くなります。「コロナウイルス」自体は、カゼの原因として普通にいるウイルスですが、今回のウイルスはほとんどの人が感染を経験したことのない新型のウイルスなので、不顕性感染は少なくなる。体調がよければ(自然免疫系がしっかりと働くので)症状は軽くなると推察されます。

②武漢市の大学病院に入院した138人の分析結果(JAMA誌電子版、2020年2月7日報告):
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202002/564267.html

  • 重症患者の特徴は①顕著なリンパ球減少、②白血球と好中球は増加など。
  • 中国の武漢大学中南病院で、新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染による肺炎(NCIP)で入院した診断確定例138人の特性を分析した。
  • 重症になりICUでの治療を受けた患者と、重症化しなかった患者の臨床特性を比較。ICUに移された患者は138人中36人(26.1%)で、6人(4.3%)が死亡していた。
  • 感染確定者136名中、64名(46%)に基礎疾患があった。


③母子間の「垂直感染」があるかどうかを妊婦での事例で検討:
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202002/564342.html
原題「Clinical characteristics and intrauterine vertical transmission potential of COVID-19 infection in nine pregnant women: a retrospective review of medical records」(概要はLancetで閲覧できる)

  • 新型コロナウイルスに感染していた妊婦9人から生まれた赤ちゃんの場合にも、感染・発症していなかった。妊婦と胎児のあいだの「垂直感染」はみられない。


■おわりに

日本では、現時点ではまだ感染拡大が続いています。肺炎などの重篤な症状にいたる場合がある一方で、全体としては症状が軽いために(発熱37~38度台、呼吸器症状など)、初期症状の段階で普通に出歩く人たちが多いためかもしれません。また、報道が多いだけで、冷静に見ると、やはり例年のインフルエンザの拡大経過とほぼ同程度かそれよりゆっくりとした感染傾向のようです。

中国では、1日ごとの新たな発症報告数は2020年1月26日、確定診断数は2月4日をピークに減少に転じており、全体として収束に向かっているように思います。

(2020年3月10日、田中真介)

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