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コロナ対応を知るシリーズ その1 自治体の困惑、内科学会の見解、感染症学会対応の問題点~海外文献から考える

CNJの協力者のみなさまからの、コロナウイルス関連情報を連続してご紹介することにしました。今回は、根拠に基づく医療(evidence-based medicine, EBM) 「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる(conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence)」医療のあり方を追及し、コクランレビューなどの分析をすすめて実践医療に応用されている、帝塚山大学の現代生活学部の柳元和医師からの情報をご紹介します。研究途中のものをご好意により掲載させていただきますので、文責はすべてCNJにあります。(下線と青字は筆者による)。

自治体・保健所等の公衆衛生の実務はどうすべき

新興再興感染症対策等健康危機管理推進事業班による「新型コロナウイルス感染症に対する保健所の対応への助言 ver.4」(2020/02/12)の検討について中間報告です。

「保健所対応で重要となるエビデンス」

  • 軽症者からも感染する。(なお、無症候病原体保有者から感染するかどうかは、現時点では明らかではない。)

 軽症者については、呼吸器症状を念頭に書かれているようですが、そうすると全てのカゼ症状が対象になってしまいます。これについては国としての深入りを避けているようです。

V.新型コロナウイルス感染症に対する具体的な対応方法」

1.患者対応の流れ

サーベイランスの検査対象者を以下のように変更

  • 流行地への渡航歴
  • 軽症者との接触歴  これは大変なことになります!
  • 疑似症サーベイランスの報告対象で新型コロナウイルス感染症の鑑別が必要なもの(指定感染症とする)  現場の医師に判断を丸投げ?
  • 各自治体において柔軟に検査を行っていただきたい  自治体任せ!

軽症者との接触歴へのサーベランスは風邪やインフルエンザとの紛れ込みも含め、ほぼ不可能でしょう。検査体制は自治体に丸投げですので、どこまで合理的な判断のもと資源活用ができるのかわかりません。

そもそも症例をどのように定義するのでしょう。

7.症例定義

検査材料:喀痰、気道吸引液、肺胞洗浄液、咽頭拭い液、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、剖検材料

(4)感染が疑われる患者の要件

要するに、発熱と呼吸器症状に限定されています。

(柳医師の疑問点)

添付のFarcasらの論文(注1)に見られるように、
SARS-CoV was detected in lung (100%), bowel (73%), liver (41%), and kidney (38%)
となっていますので、消化器症状や肝機能障害、腎機能障害にも注意すべきと考えられます。(サーズと新型コロナの違いも含めた分析を柳医師のグループはすすめています)

Leungらは、数日間の下痢はありふれた症状であると報告しています。

The mean number of days with diarrhea was 3.7± 2.7, and most diarrhea was self-limiting.

残念ながらRNA検査では73日間ウイルスの残骸が検出された症例があるそうです。ただし生きたウイルス粒子を便中に検出することは難しいそうです。

Coronavirus was also isolated by culture from these specimens, and SARS-CoV RNA can be detected in the stool of patients for more than 10 weeks after symptom onset.

したがって呼吸器症状にだけ注目している本助言は誤りだと思います。

9.患者(確定)および疑似症患者への行政対応

=退院に関する基準=

  • 37.5度以上の発熱が24時間なく、呼吸器症状が改善傾向である。
  • 48時間後に核酸増幅法の検査にて陰性を確認
  • 上記検査の検体を採取した12時間以後に再度倦怠採取を行い、陰性を確認

(柳医師の疑問点)

ここでも呼吸器症状以外は無視されています。消化器症状や肝機能、腎機能のチェックは推奨されていません。

発熱の有無だけで症状の軽減を判断するのは早計のような気がします。

ただし、いつまで拘束するべきかの判断もよく分かりません。

もしYu-ling Shiらの報告が正しいとすると、一部の症例ではコロナウイルスが生着し慢性炎症を引き起こすと推測されます。大変です。

JAMAの報告から考える~感染症状はどうなのか

JAMAに確定診断例での重症化予測の報告が出ており、飛沫感染のほうが警戒すべきだろうとされています。さらに重症化(ICU)例では、

  • 7割に食欲不振が出現(非ICU例の3割と有意差有り)
  • 重症化例で下痢は17%(非ICU例では8%で有意差なし)
  • 重症化例でリンパ球の減少が著しい。
  • LDHASTが上昇する。
  • 重症化例ではBUNやクレアチニンも上昇。

と報告されています。

またオセルタミビルを初めとする抗ウイルス剤や抗菌薬は無効であったとも報告しています。

日本内科学会の提言と日本感染症学会の暴走?

日本内科学会が緊急の総説をまとめたようです、印象としては、まだ良くわからないからと逃げ腰です。抗ウイルス剤や抗菌剤、ステロイドについても、推奨はできないと書いており、判断を避けています。

ところが、

日本感染症学会covid19_antiviral_drug_200227のサムネイル

COVID-19 に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第 1 版 (2020 年 2 月 26 日), 一般社団法人日本感染症学会

日本感染症学会は(2020 年2 月26 日抗ウイルス剤を億面も無く勧めています。しかも海外で「ランダム化比較試験が進行中」「国内では使用例が…」と記載し、根拠は無いけど使って良い(それは倫理委員会を通しての臨床試験でなくても良い、という意味で)としています。

感染症についての大原則は体温を下げないこと。つまり解熱剤を使わないことです。ウイルスは40℃で失活を早めるようですから、一番よく効く治療ということになるそうです。

風邪はもちろん、感染症にかかった場合、解熱剤を使うことは禁忌です。過去にはライ症候群やNSAIDsによる子どもの脳炎・脳症が問題とされました。インフルエンザにも抗インフルエンザ薬は百害あって一利なしです。

それでも抗ウイルス薬があればというのは、今回のようなコロナパンデミック?には薬やワクチンが「なにかあること」が経済的に安心材料となるだけでなく、風評被害的な重層化する被害連鎖(休校や過剰な検査、拙速な薬や適用外使用の容認)を止める一つの有力材料になるからでしょう。余談ですが、2009年の新型インフルエンザ流行の時(この時の経緯も再度検証する必要があります)、米国がタミフルを大量に世界的に普及させました。時の国務長官との利益相反がささやかれていました。

特措法の制定を急ぐとしていますが、現場の対応ができず「風評被害」を払しょくするためだけのものにならないよう注視していく必要があります。過剰な対策は回復困難な人権侵害を引き起こすことを過去の経験から学ぶときです。

*次回は消費者にわかりやすいまとめを予定しています。

(古賀 真子)


SARS1-s2.0-S0016508503012150-mainのサムネイル

(注1)

内科学会Novel-coronavirus-disease-COVID-19のサムネイル

(注2)【緊急寄稿】 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) – Novel coronavirus disease (COVID-19) – 川名 明彦1) 三笠 桂一2) 泉川 公一3)

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