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予防接種ネット・de・講座46 子宮頸がんワクチン再開問題~積極的勧奨(再開)はありやなしや 

子宮頸がんワクチン再開問題を考える

今国会では、厚生労働委員会等での、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の再開に関する活発な質疑がはじめられたようです。また導入時に活躍した議員等を中心に自民党では推進議連ができたとの報道がされています。自治体のなかには独自に接種を勧める動きもでてきているようです。

はたして、再開するだけの環境はととのったといえるでしょうか。

2019年11月22日副反応検討部会

再開論者の主張では、子宮頸がんが若い女性に増えているので、ワクチン接種を日本だけがしないことはしないことは日本の将来のためによくないこと、2013年6月の積極的勧奨中止以後の接種率が1%以下に落ちていることは、国際的にも不都合であること、接種勧奨中止以後、副反応に対応した新たな研究成果がでていること、因果関係をとわず副反応症状についての治療相談窓口や診療体制が整えられたことなどがあげられています。

HPVワクチンの副反応については、販売開始した2009年12月~昨年8月までに、計3493件が厚労省・医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告されています。全国での集団訴訟がすすめられる中、原告と被告の主張は真っ向から対立しています。

今後の再開をすすめる政策の当否を考えるために、審議会の状況、裁判の状況、被害者や支援の動きについて報告します。市民団体の学習会も活発におこなわれています。次回ご紹介します)

副反応検討部会も動きだした

予防接種の制度設計をする審議会や副反応事例の検証をするとされる直近の2019年11月22日に開催された副反応検討部会(第44回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和元年度第10回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)、以下副反応検討部会)でも再開にむけた議論がされました。(副反応検討部会はHPV以外のワクチンについても3か月ごとに報告と検討をするとの建前で開催されている審議会です。)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08004.html

今回の検討部会では、HPVワクチン関連の下記の情報提供がされました。

  1. 資料8 HPVワクチン(サーバリックス)の副反応疑い報告状況[PDF形式:636KB]
  2. 資料9 HPVワクチン(ガーダシル)の副反応疑い報告状況[PDF形式:544KB]
  3. 資料10 HPVワクチン接種後の失神関連副反応疑いについて[PDF形式:541KB]
  4. 資料11 前回のHPV ワクチンの副反応疑い報告状況について[PDF形式:142KB]
  5. 資料13-1 HPVワクチンの情報提供の評価に関する検討の経緯[PDF形式:447KB]
  6. 参考資料1-1 リーフレット(HPVワクチンの接種を検討しているお子様と保護者の方へ)[PDF形式:443KB]
  7. 参考資料1-2 リーフレット(HPVワクチンを受けるお子様と保護者の方へ)[PDF形式:432KB]
  8. 参考資料1-3 リーフレット(HPVワクチンの接種に当たって医療従事者の方へ)[PDF形式:670KB]

副反応件部会はHPVワクチンに限らずワクチンの副反応の頻度や内容を詳細に検討して、接種の継続の可否を検討すべきミッションがありますが、実際には3か月単位の医療機関と製造期間からの副反応報告(最近は桃井委員の強い意見から副反応疑い報告とされる)が簡単に読み上げられ、座長が意見をもとめてもほとんど実質的な議論がされないままに「前回の頻度等と相変わらず、格別見直しの必要はなし(このまま継続問題なし)」とされることがほとんどです。

リーフレットの改訂で接種再開に足掛かり?

HPVワクチンが議題に上がる部会は傍聴者も多くなっていますが、被害者側からのヒヤリングはなく、推進を望む側の参考人しか呼ばれていません。「HPVワクチンの情報提供に関する評価(調査)」まで開いてワクチン接種を啓蒙したいようですが、今回の部会でも「いかに国民に科学的情報を伝えるか」がテーマでした。前回8月30日の審議会で意見がでたリーフレットの表現で「積極的におすすめすることを一時的にやめています」の表現がわかりにくいので国民が理解しやすい表現にする。子宮頸がんがどういった疾患か、深刻度や実態の記載がない。ワクチンの予防効果について記載すべき、リーフレット改訂にあたっては、リスクコミュニケーションの専門家がかかわったわかりやすい表現にすべき。・・などの意見をうけて、今回は「科学的」評価を一般市民が受け取る場合の情報提供のありかたについて、「情報量が多すぎないこと、検討後の行動についての情報が不足、語彙が難しい、副反応の記載が不安を増す可能性や過度であることなど」を念頭に、「適切な知識と情報を得たうえで判断、意思決定してもらうリーフレットの作成について」の意見陳述がされました。(⑤⑥⑦⑧参照)

肝心の副反応の実態をどう把握すべきでしょうか。③ 資料10 HPVワクチン接種後の失神関連副反応疑いについてにあるように、メーカーからの詳細な報告は失神関連のものに限定されています。① 資料8 HPVワクチン(サーバリックス)の副反応疑い報告状況[PDF形式:636KB]と② 資料9 HPVワクチン(ガーダシル)の副反応疑い報告状況[PDF形式:544KB]から、
現在の副反応報告について少し詳しく見ていきましょう。

再開により副作用被害は必ず発生する

サーバリクス
販売開始からの接種のべ人数(回数)はサーバリクスが7,009,970人、医療機関からの重篤報告数は549人となっています。令和元年5月1日から8月31日までの接種のべ回数は1,701人。重篤報告例9名のうち8名は2011年から2012年に接種されたものですが、2013年4月30日(定期接種化された月)に接種されたものもありました。症状は頭痛、傾眠、倦怠感、光線過敏性反応、記憶障害、過眠症、注意力障害、学習障害、疼痛、月経障害、月経困難症、抑うつ症状、下痢、便秘、体位性めまい、過換気、多汗症、精神障害、悪心、胸痛、腹痛、疲労、関節痛、四肢痛、歩行障害、視力、学習障害、不安障害、聴覚障害、睡眠障害、疼痛、倦怠感、運動障害、記憶障害そう痒症、歩行障害、筋力低下、自己免疫性脳などで、裁判では一貫して被告側が無視しようとしているHANSの症候群に該当するものが報告されています。

ガーダシル
ガーダシルのこれまでの接種のべ回数の1,992,895人中、193人の重篤例があるとされていますが、2019年5月1日から8月31日まででは14,479人接種されており、重篤報告例の5例のうち、3例は2011年から2012年の間の接種のものでしたが、2019年7月24日接種の例と接種日不明の報告例がありました。

月平均6500人程度の接種を憂えての再開が強く叫ばれているようですが、検討部会では副反応の実態や症状についての検証はされていません。いうまでもないことですが、HPVワクチンは事業接種期から、重篤かつ広範な副反応報告の蓄積があります。まずなすべきことは、副反応についての真摯な検討であり、安全情報満載のリーフレット改訂ではないはずです。蛇足ですが、導入前から寄付金攻勢にあっていた委員がいる副反応検討部会で自らの失政を問うような副反応対応の施策のための議論はもともと期待できないと言えますが、再開にむけて、欺瞞的な情報提供をすすめる姿勢については声をあげていく必要があります。

裁判の経緯と被害者団体の日本医師会への申し入れ

2019年11月東京地裁での裁判の報告は支援ネットワークの報告を引用させていただきます。
2019年11月25日に東京訴訟第12回期日が開催されました。
支援ネットワークは裁判当日、接種再開を主張している日本医師会に対して、要請書の提出行動をしました。
https://www.hpv-yakugai.net/2019/11/25/jma/)のほか、期日に裁判所前でのリレートーク、原告番号59番の方の意見陳述など、写真を交えて、期日当日の様子がホームページにアップされています。https://www.hpv-yakugai.net/2019/11/25/tokyo12th/

原告の主張

東京地裁での裁判は1昨年来、原告被告の主張反論等に大きな変化はありません。今回も、原告は副作用の過酷な状況や、その後の経緯、現在も苦しんでいる状況を訴えました。(陳述書参照)

弁護団の主張は、「2016年の一斉提訴以来2019年7月19日の第三次提訴まで、132人の原告(うち東京地裁管轄が61名のうち5人は報告書に記載すらなされていないことから、国の報告自体の不完全性も指摘)が国とGSK,MSDを相手に訴訟を起こしている。共通して、国が有害事象を知りながら承認した行為、緊急促進事業として莫大な国費を投じておすみつきをあたえたこと、定期接種化したことの責任を問う。2013年6月に国が積極的勧奨を中止したのは、社会不安や安全確認をして国民を不安にさせないためのものであったはずであるが、2019年4月には安全性に問題がないなどの報道をしており、国が定期接種を中断した際の状況がを国も含めた被告側が正確に情報提供していないこと、国の疫学調査は副反応について具体的な検討ができるようなものではないことなどから、裁判所は、国が具体的な検討もせず、人生をくるわされた重い副反応の被害者に対して、科学的適切な判断をお願いします。」と括りました。

被告の主張

それに対して、被告は副作用の実態を究明するHANSを唱える医師たちを少数者と断定し、治療に真摯に取り組む医師に対して、HANS論は治療の機会を奪うなどと主張しました。被害者に対しても詐病や思い込みなどを印象づける言い方をし、家庭環境が問題(仮面夫婦や不登校、親子関係の問題)などとの心ない中傷ともとれる弁論に終始しました。治療方法をもとめて苦しみ悩む被害者に対して「ドクターショッピング」と揶揄しました。

GSKは有効性を過大に情報提供したという点に対しては、薬の処方は適切な判断でされるべく添付文書に詳細に記載されており、説明のサンプルも含め医師と患者のインフォームドコンセントで口頭補充されている。医師や専門家もあらゆる安全性情報を収集している。既知の免疫疾患の症状でなく、HANSでもない。副作用については、好ましくない症状をいうが、因果関係が否定できない報告については一般的関連性がなく報告は意味がない。因果関係の有無は臨床、疫学調査などのデータでする。名古屋市の3万人のデータでは因果関係は否定されている。

MSDは精神症状はワクチン接種以前からあったもの。ドクターショッピングをした人がHANSを信仰支持している。ストレスや親子関係、いじめなどの心理的影響が不登校や自傷行為、不随意運動などとなっており同条されるべきで尊厳をもって社会にうけいれられるべきではあるが。行動療法で改善もあり、ワクチンとは関係ないとの趣旨の主張をしました。

積極的勧奨中止以後再開にむけた改善はされていない

2013年4月1日にヒブ、肺炎球菌とセットで定期接種化された子宮頸がんワクチン(その後「がん予防ではない」との指摘をうけHPVワクチンと変更)は、子宮頸がんワクチンは2009年6月から、GSK社との利益相反が推測される国会議員により、議員立法が目指されましたが、単独立法ができず、二度の廃案の末、乳児用のヒブや肺炎球菌との抱き合わせ導入により、2013年4月1日に予防接種法が改正され定期接種A類になりました。

2013年6月の副反応検討部会で積極的勧奨を中止し、各方面からの再開を望む声も全国的なHPV薬害訴訟や被害者の真摯な運動、協力者の活動により再開のめどをたてられず、以後接種率は落ちています。幸い積極的勧奨中止以後、ワクチン接種による被害の目だった報告はでておらず、国がすべきは被害者の掘り起し、裁判被害者への迅速かつ真摯な対応、恒久対策のはずでした。
(この間の経緯について詳細はhttps://consumernet.jp/?p=4701
必要ですか?予防接種、受ける/受けない予防接種(コンシューマネット・ジャパン刊 参照)

自民党の議連は高い見識と洞察力を!

自民党の一部の議員は2019年11月26日、「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す勉強会」を開き、議員連盟(会長細田博之衆院議員、呼びかけ人三原じゅん子参院議員)を発足させました。議員連盟は、積極的勧奨の再開のほか、9価ワクチンの承認、接種後に体調不良を起こした人の治療や補償体制の充実を目標として掲げたとされています。補償体制の充実は当然なすべき政策ですが、再開と9価ワクチン導入には強い疑問の声がよせられています。

会長であり細田氏は子どもたちの命や子宮をまもるための政治的決断が必要とし、このように発言されたと報道されています。(下線は筆者)
HPV感染を防ぐワクチンの効果が証明され、世界中で使われていることを紹介した上で、

「ワクチン接種によって一定の割合で重篤な痛みや精神的な障害が出ていると強く言われる医師もおり、自民党の中でも原因を解明するまではワクチンを使用すべきではないという人もいる。副反応がワクチンのせいだという世論が形成されているのは事実」として、日本ではワクチンへの反対意見が根強くある課題を振り返った。
一方で、「子宮頸がんに年間1万人が罹患し、亡くなる方も2900人に達していることも事実。WHOからは日本だけがワクチンの空白地域になることは人類の健康にとっても問題であると言われている」と指摘し、こう呼びかけた。

「厚労省でも検討され、医師会でも学会でも研究は進んでいると思いますが、2019年になった今、猶予はならないのではないか。様々なご意見を関係者から伺って、国民世論を喚起して、子宮頸がんにかかる女性を少なくすることは大事だと思いますので、みなさんの真剣な議論をお願いしたい」(中略)

最後に挨拶をした細田会長は、HPVワクチンによる体調不良を訴えている医師と面会し、その医師の働きかけで自民党内にもワクチンに反対という議員グループがあることに触れながらも、こう述べた。

「原因は突き止めなくてはいけませんが、そういう反応が出る可能性があっても公益との比較の問題でもある。反対論者を切り捨てるのではなくて、そういう不具合が出た人は2回目はやめるとか、遺伝子的に影響があるのかなど、研究を進めたらいい」

「(副反応が)100%ゼロであるという必要はない。我々は世論形成をしながら、反対論者に耳を傾けながら、しかしそれでも進める。なぜなら公益の大きさが違うから。しかし十分な配慮はしましょう。十分な研究はしましょう」

議連は目標として、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、積極的勧奨の再開と共に、9価ワクチンの早期承認や、接種後に体調不良を起こした人への診療や補償の整備を提言することを目指すとしている。

細田氏の発言では、細田氏が副反応についての一定の認識を持っていることは明らかです。しかしそれにもまして、公益の比較としてそれでも接種をすすめるべきとされている論拠は不明確です。

再開への足掛かりとされている点は以下の点のようです。

  1. 積極的勧奨を差し控えた2013年6月から子宮頸がんが増加している(だから公益をまもるためにワクチンの定期接種をすべきである。
    (反論)しかしHPVは常在菌で感染は性的接触である誰にでもうつるものでもなくうつったからといってがん化するリスクは低いものである。そもそも本当に子宮頸がんは増えているのか。ワクチン接種をしなければならないほど切羽詰まった状況なのか。1万人の罹患、33000人の新規患者の根拠をあきらかにすべき。
  2. 積極的勧奨中止以後、安全性や効果を示す研究が十分積み重なった
    (反論)確かに積極的勧奨以後接種が激減したために副反応も発生はしていないが直近では1件発生している。しかも治療法はいまだに確立していないし、遺伝的影響の調査結果もでておらず、副反応リスク者の特定もできるような状況にはないなかで、副反応が100%ゼロの必要性がないというのは、他により安全で確実なとすべき手段がある場合になぜワクチンの公的接種再開すべきとの説明にはなりえない。

そもそも、子宮頸がんはHPV感染から発症まで数年から十数年といわれているので、特に若年齢層の検診を充実させて、発見し治療することのほうが有効です。日本では検診受診率が低いので検診での発見と対応の充実こそが、子宮頸がん死を減らすためには必要なのです。副作用の重篤さ、救済されない現実、治療法もないなか、確実にがんは防がないのに副作用は発生することを考えた時、再開議論をすること自体、時期尚早と言わざるを得ません。

自治体単位での推進の問題点

2019年10月25日、HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団は、岡山県に対し、子宮頸がんの予防に関するリーフレット「娘さんを持つ保護者の方へ」に関する申入書を提出し、岡山県が独自配布するリーフレットの内容が不適切であることを指摘し、その使用中止等を求めました。
https://www.hpv-yakugai.net/2019/10/25/okayama-leaflet/

岡山県の動きは特に目立ったものなのでここに紹介します。
2019年岡山県は本年度、ワクチンの有効性やリスクを独自に周知する事業を始める。情報が行き届いていないとみられる中、対象者にワクチンの存在に目を向け、予防のための選択肢の一つとして考えてもらう狙いとして、積極的勧奨を再開すべきとの方針を出しています。

岡山県産婦人科医会などは2019年5月23日、「子宮頸がんワクチンの接種率回復に向けた正しい知識の普及などを求める要望書」を伊原木知事に提出しました。同月以降、産婦人科医らの協力を得て、チラシの作成・配布やイベントでのブース設置などに順次取り組んでいます。有効性とともに全身のしびれ、頭痛や発熱といった副反応のリスクを伝え、起きた際に相談できる県内の2医療機関も紹介する。とされていました。

県によると、他県での同様の取り組みは把握しておらず、接種事業の主体となる市町村の動きも県内では見られないということですが、他の県でもこうした動きが再開議論とともに出始めています。

被害者団体等は岡山県に対して申入れを下記に紹介します。国の再開議論とともに自治体に対しても今一度HPVワクチン問題を問い直していく必要があります。


2019年10月25日

岡山県知事 伊原木隆太 殿     

子宮頸がんの予防に関するリーフレット
「娘さんを持つ保護者の方へ」に関する申入書
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団
共同代表 弁護士 水口真寿美
共同代表 弁護士 山西 美明

(連絡先)
〒530-0047 大阪市北区西天満4-4-13
三共ビル梅新8階 共立法律事務所
TEL 06-6365-9445
HPVワクチン薬害訴訟大阪弁護団
弁護士 幸長裕美

 私たちは,HPVワクチン薬害訴訟の全国弁護団です。HPVワクチン薬害訴訟は,HPVワクチンの深刻な副反応症状に苦しむ若い女性たちが,被害救済を求めて,4つの地方裁判所に訴訟を提起しているものであり,全国の原告数は,既に130名を超えています。
 2019年8月に岡山県保健福祉部健康推進課が作成された,子宮頸がんの予防に関するリーフレット「娘さんを持つ保護者の方へ」(以下,「岡山県2019年リーフレット」といいます。)の内容には,以下に記載する問題点があり,これによる情報提供は不適切であると考えます。
 ついては,以下のとおり求めます。

第1 申し入れの趣旨

 岡山県2019年リーフレットについて

1 情報提供の資料として使用することを中止し,接種対象者への個別通知(郵送または学校を通じての配布)等を行わないこと

2 仮に,既に,接種対象者に個別通知(郵送または学校を通じての配布)をされたのであれば,応急的措置として,厚生労働省作成にかかる平成25年6月版「子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ」を,岡山県2019年リーフレットを配布されたのと同じ方法により,直ちに配布すること を求めます。

第2 申し入れの理由

1 厚生労働省がHPVワクチン接種の積極的勧奨を一時中止していることが明記されていません

(1)HPVワクチンについて,厚生労働省は,都道府県に対し,接種の積極的勧奨の一時中止を勧告しており,市町村長は,接種の積極的勧奨をしてはならないこととされています(平成25年6月14日付都道府県知事宛厚労省健康局長通知 以下,「平成25年6月勧告」といいます。)。定期接種ワクチンでありながら,積極的推奨をしないよう勧告することは,異例の措置です。
 したがって,HPVワクチン接種について説明する場合には,定期接種ワクチンではあるものの,厚生労働省は積極的勧奨を一時中止していることを,接種対象者が容易に認識できるよう明記して説明することが必要です。

(2)厚生労働省作成にかかる平成30年1月版リーフレット(以下,「平成30年版厚生労働省リーフレット」といいます。)の保護者向けリーフレットにおいても,「積極的におすすめすることを一時的にやめています」と明記され,平成25年6月版「子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ」(以下,「平成25年6月版厚生労働省リーフレット」といいます。)では,より目立つように明記されています。

(3)しかし,岡山県2019年リーフレットは,定期接種であると記載するのみで,国が積極的勧奨を一時中止していることを目立つように記載しておらず,接種対象者に対しワクチン接種を受けるよう誘導する内容となっていますので,これを接種対象者に配布することは,前記平成25年6月勧告に抵触します。
 仮にこれを個別に通知することとなれば,前記平成25年6月勧告が,予防接種法施行令第6条の周知について,「ただし,その周知方法については,個別通知を求めるものではないこと」とあえて記載したことにも反し,同勧告に抵触する結果となります。

2 HPVワクチンによって重篤な副反応が生じる危険性を伝えていません

(1)前記平成25年6月勧告により,市町村長は,HPVワクチン接種の有効性及び安全性等について十分に説明することを求められています。

(2)HPVワクチンについては,副反応症状として,運動に関する障害(不随意運動,脱力,歩行障害等),感覚に関する障害(全身の激しい疼痛,光過敏等),自律神経や内分泌に関する障害(睡眠障害,体温調節障害,排尿障害等),認知機能や精神機能に関する障害(学習障害,記憶障害,全身倦怠感等)等,全身に及ぶ多様な症状が報告されています。これらの症状は,一人の患者に重層化して発現し,増悪と寛解を繰り返すという特徴があります。そして,治療法は確立していません。副反応症状を発症した者は,これらの重篤な症状に接種後10年近くたった今も苦しんでおり,これによって,生活が一変し,夢を奪われた被害者も多数います。
 しかも,HPVワクチンは,重篤な副反応が他の定期接種ワクチンに比して高い頻度で発生しており,予防接種の救済制度における認定例のうち,障害(障害年金・障害児養育年金の支給対象)と死亡の認定頻度が,主な他の定期接種ワクチンの平均値より10倍近くも高くなっています。
 HPVワクチンについて情報提供をする以上は,このような重篤な副反応症状が起こりうることを知らせることは当然です。原告らのように重篤な副反応症状で苦しむこととなったときに,副反応について説明されていない,こんなはずではなかったということにならないよう,危険性を知ったうえで自己決定ができるようにするため,十分に情報を提供する必要があります。

(3)しかし,岡山県2019年リーフレットでは,「接種した部位の痛みや腫れ,赤み」,「まれに発熱やじんましん」などの症状が起こることがあるとの記載しかありません。
 ワクチン接種後に広範囲の痛み等の症状が報告されているとの記載はありますが,これはHPVワクチン接種歴がなくても一定数存在する旨の記載があり,ワクチン接種とは関係がないと受け止めさせてしまう内容になっています。

(4)この点について,平成30年版厚生労働省リーフレットにおいても,医療従事者向けリーフレット(「HPVワクチンの接種に当たって 医療従事者の方へ」)には,不十分ながら(※1),感覚障害,運動障害,自立神経障害,認知機能障害が報告されていることについての記載があります。
 また,平成30年版厚生労働省の保護者向けリーフレット(「HPVワクチンの接種を検討している お子様と保護者の方へ」)は,認知機能障害に関する記載がないなどの点で医療従事者向けのものからさらに不十分ではあるものの(※1),少なくとも,添付文書に記載されている副反応症状を記載しているほかに,「まれですが重い症状が報告されています」というタイトルの下,アナフィラキシー,ギランバレー症候群,急性散在性脳脊髄炎(ADEM)等の重篤な症状報告があることを特に説明しています。そして,平成29(2017)年8月までに医師又は企業が重篤と判断した副反応疑い報告数が 1,784人(10万人あたり 52.5人)であることも記載され,重篤な副反応が生じうることが,報告を受けた数によっても示されています。

(5)このように,岡山県2019年リーフレットにおけるHPVワクチンの副反応に関する記載は,平成30年版厚生労働省リーフレットと比較しても,不正確・不十分であることが明らかです。 (※1) 平成30年版厚生労働省リーフレットの記載が不十分であることについては,当弁護団の厚生労働大臣宛「HPVワクチン新リーフレットの全面修正を求める緊急要望書」をご参照ください。 https://www.hpv-yakugai.net/2018/01/19/statement/

3 HPVワクチンの有効性の限界を適切に伝えていません

(1)前記のとおり,平成25年6月勧告により,市町村長は,HPVワクチン接種の有効性及び安全性等につ
いて十分に説明することを求められています。

(2)HPVワクチンが子宮頸がんを予防する効果は証明されていません。また,がんになる前の細胞の異形成,前がん病変を防ぐ効果についても,子宮頸がんの原因とされるハイリスクウイルスのうち16型と18型にしか認められず,しかも,その効果の持続期間として臨床試験で確認されているのは最長でも約9年です。

(3)この点,平成30年版厚生労働省の保護者向けリーフレット(「HPVワクチンの接種を検討している お子様と保護者の方へ」)は,前がん病変の予防効果の持続期間について触れていないという問題がありますが,それでも,子宮頸がんの予防効果が証明されていないことについては明記しています。
 また,厚生労働省の同リーフレットの子宮頸がん検診を受けることを呼びかける記載がされている部分には,「HPVワクチンは,全てのタイプのHPVの感染を予防するものではありません」と改めて明記したうえで,「ワクチンで感染を防げないHPVが原因の子宮頸がんを予防するには,子宮けいがん検診を受診して,がんになる前の前がん病変の段階で早期発見する必要があります。」との記載がされ,HPVワクチンによる予防効果には,対応するHPVの型という大きな限界があること,そのため子宮頸がんの予防には検診が必ず必要であることを伝えようとする記載がなされています。

(4)ところが,岡山県2019年リーフレットは,前がん病変の予防効果の持続期間の限界について触れていないだけでなく,子宮頸がんの予防効果は証明されていないということも明記していません。
 さらに,岡山県2019年リーフレットは,子宮頸がん検診については,「HPVワクチンを接種していても完全には子宮頸がんを予防できないため,検診も必要です。」との記載がされています。この説明では,HPVワクチンの接種によって,子宮頸がんは(完全ではないものの)ほぼ予防できるかのようであり,子宮頸がん検診は,念のために受けておいた方がよいものという受け止め方をされかねません。

(5)岡山県2019年リーフレットは,感染や前がん病変を予防する効果が確認されていることと子宮頸がんを予防することが期待されていることだけを記載し,子宮頸がんの予防効果は証明されていないという肝心なことをあえて記載せず,また,HPVワクチンには対応するHPVの型という点で予防効果に大きな限界があるために接種を受けても子宮頸がん検診は必須であるということを伝えない,不正確・不十分なものです。

4 紹介されている具体的症例及びその解説が不適切です

(1)岡山県2019年リーフレットでは,子宮頸がん検診を受けていたにもかかわらず,早期(Ⅰb1期)の子宮頸がんであることが分かり,胎児とともに子宮,卵巣,リンパ節を摘出した「赤ちゃんと子宮を一度に失った,希さんの症例」が,最終ページの大部分を使って,イラスト入りで記載されています。
 しかし,日本婦人科腫瘍学会の編集による一般向けのガイドライン書籍では,妊娠中に子宮頸がんが発見された場合であっても,慎重な検討を前提とした上で,「ほとんどの場合は出産することが可能です」と説明されているところであり(※2),そもそも,どのような治療をどのような時期に受けるかは,個々の症例で異なります。にもかかわらず,これらを捨象して,この症例の結末だけを述べ,「子宮頸がんは希さんから夢を奪っていきました。」と締めくくることは,「早期がんの段階で発見できても,妊娠は継続できず,子宮を直ちに切除するしかない」との誤解を与えるものです。
 しかも,ここで取り上げられた症例は,直近の検診実施が2年前ではなく,3年前であった症例です。子宮頸がん検診には,HPVの型を問わず子宮頸がんを予防する効果が証明されており,2年に一度の受検が推奨されています(厚生労働省健康局長平成20年3月11日通知にかかるガイドライン)。希さんの症例は,2年に一度の検診実施の重要性を示す症例であるはずですが,岡山県2019年リーフレットは,その点をとりあげるのではなく,「それだけの準備をしていても,子宮頸がんは希さんから夢を奪っていきました。」として,検診では子宮頸がんを防げないとの誤った印象を植え付けています。
 したがって,希さんの症例の紹介は,症例の選択の点においても,説明の点においても適切とはいえません。

(2)また,子宮頸がん罹患率について,1985年と2014年を比較するグラフを示して20代から30代で増加しているとしている点にも問題があります。
 1985年から2014年の間に,上皮内がんに高度異形成まで含めるように統計の基準上の変更がありました。そのため上皮内癌を含むグラフでは子宮頸がんが増えたようにみえることがあります。また,近年,子宮頸がん検診対象年齢の引き下げ,妊婦健診の拡大などで,若年層の検診の受診機会が増え,細胞診の精度管理の向上が図られた結果,検診における子宮頸がんの早期発見が進んでいます。こうした事情を考慮せず,分類基準が異なり比較に適さないデータを一つのグラフで示したうえで,20代から30代に子宮頸がんが増加している等と指摘することは適切ではありません。

(3)このように,岡山県2019年リーフレットは,不正確・不十分な情報により,子宮頸がんの疾病リスク・重篤性を不適切に強調し,接種対象者に不安をあおるものといわざるを得ません。

(※2) 日本婦人科腫瘍学会編「患者さんとご家族のための 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん 治療ガイドライン」(2016年4月金原出版(株)刊)

5 まとめ

 以上のとおり,岡山県2019年リーフレットは,厚生労働省がHPVワクチンの積極的勧奨を中止していることを接種対象者に容易に認識できるように明記しない一方で,HPVワクチンによる重篤な副反応が報告されていることや,その有効性に限界があることを伝えず,子宮頸がんについて不適切な症例やグラフを示すなどして子宮頸がんへの不安をいたずらにあおり,全体として,HPVワクチンの接種を積極的に勧奨するのに等しい効果をもたらすものとなっており,不適切です。
 したがって,岡山県2019年リーフレットを情報提供の資料として使用することを中止し,接種対象者への個別通知(郵送または学校を通じての配布)等を行わないことを求めます。また,仮に,既に,接種対象者に個別通知(郵送または学校を通じての配布)をされたのであれば,応急的措置として,既に送付したリーフレットに不適切な記載があったことを伝える書面及び厚生労働省作成にかかる平成25年6月版「子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ」を,岡山県2019年リーフレットを配布されたのと同じ方法により,直ちに配布することを求めます。

以上

【添付資料】(略)
1 平成25年6月14日付都道府県知事宛厚労省健康局長通知(「平成25年6月勧告」)
2 平成25年6月版厚生労働省リーフレット「子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ」
3 HPVワクチンと他の予防接種ワクチンとの副反応に関する比較表(厚生労働省の担当部会資料よりとりまとめ)
 (表1)副反応報告件数
 (表2)副作用被害救済件数
4 「HPVワクチン薬害訴訟・原告の声 ~提訴から3年を経た今の思い~」(2019年7月19日 HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団編)

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添付資料3(表1)
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添付資料3(表2)
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岡山県知事宛:子宮頸がんの予防に関するリーフレット 「娘さんを持つ保護者の方へ」に関する申入書
191025 okayama-leaflet.pdf
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添付資料3(表1) HPVワクチンと他の予防接種ワクチンとの副反応に関する比較表:副反応報告件数
191025 okayama-leaflet- 3_table1.pdf
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添付資料3(表2) HPVワクチンと他の予防接種ワクチンとの副反応に関する比較表:副作用被害救済件数
191025 okayama-leaflet- 3_table2.pdf
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岡山県の動きは日本医師会、副反応検討部会、自民党議連の動きなどとも共通しています。

予防接種はだれのためか、健康を望むすべての人とそれに応える行政の間でここまで被害状況が明確になりながらもあえて再開をするだけのメリットが本当にあるのか。深い洞察力と真の公益を個人の権利を根底に据えた政治判断が求められています。

一方で、真に適切な情報提供とそれを判断するための国民一人ひとりの知恵が求められているといえないでしょうか。

(古賀 真子)

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