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水道事業民営化は成功するのか?~水道施設運営等事業の実施に関する検討会はじまる

2019年2月26日、第1回水道施設運営等事業の実施に関する検討会(以下、水道検討会という。)が開かれました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000143569_00003.html

水道改正法は2018年7月の国会で与党などの賛成多数で衆議院で可決しました。

しかし会期切れとなり継続審議となり、2018年12月に野党の反対などを押し切って強行採決・成立しました。水道法の一部を改正する法律 (平成 30 年法律第 92 号) による 改正後の 水道法(昭和 水道法(昭和 32 年法律第 177 号)(以下「改正水道法」という。)第 24 条の4 において 、公共施設の所有権を地方 公共団体 が所有したま施設に関する公共施設等運営権を民間事業者に定する 方式 (いわゆるコンセッショ方式) に ついて、 地方公共団体が、水道事業者等としての位置付けを維持しつ、 厚生労働大臣の許可を受けて 、水道施設に関する公共施設等運営権(以下「水道」という。)を民間事業者に設定できる仕組みがつくられました 。

改正水道法の施行に向けて、 水道施設運営権の設定に係る許可の基準と留意すべき事項や、水道施設運営権の設定に係る許可申請時の実施計画書の記載内容 、 改正水道法第 24 条の4に規定する水道施設運営等事業の実施に際して地方公共団体が検討すべき事項等について検討すべき事項等について検討することを目的としあ検討会として、 学識経験者、弁護士、業界関係者等の幅広い構成員からなる「水道施設運営等事業の実施に関する検討会」が開催されたわけです。

検討会のメンバーは、下記の8名です。今回は初めての開催ということで、事務局からの水道改正法の説明と座長の選任、この問題についての研究者が中心となった議論が少し行われました。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000483317.pdf

官民連携とは?

検討会では、今回の水道法改正の趣旨、自治体から事業委託されるについての条件整備が議論されるようですが、強調されているのは、「官民連携の推進」ですが、実際にどのような形での連携がされるのか、消費者への負の影響はないのかなど、検討会の議論に注目していく必要がありそうです。

改正法では、最低限の生活を保障するための水道経営についての市町村経営原則は変わらないとしつつも、水道基盤強化のための多様な官民連携の選択肢の拡大が謳われています。具体的にはPFI法(*)に基づく議会承認の手続きと厚労大臣の許可による民間事業者の施設運営権設置が認められ、運営権者には運営権の範囲での利用料金の収受が認められ、自治体には料金を事前に条例で決められることと、運営権者の監視・監督権があるとされています。

水道問題とは?

「人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図ることを目的とした水道法の改正ですが、実際に民営化された際、非常時に安定した水道供給網の維持が可能なのか、営利企業が水道事業の運営を担当する場合、水道料金が高騰するのではないか、という点が指摘されています。(注1)

民営化後に公営に戻されたフランスのパリや再公営化が検討されているイギリスのロンドンの事例などからも、こうした懸念はあり得ますが、審議会でも海外の失敗例が提出されました。

PDF 資料3:海外の水道事業における民間事業者の関与の状況について(PDF:2,557KB)

施設管理は大丈夫か

生活祭必需品である水。宮城県では2021年度に民間業者への委託を計画しているようですが、村井嘉浩知事が「施設は県が所有し、災害時も県が責任を持って復旧する」と発言されているようですが、水道料金が自治体の条例で定められた範囲の中でのみ設定されるとしても、また、施設を県が所有するとしても、施設の維持に多額に費用を必要とすることが水道法の改正の主たる理由の一つである以上、県が不断に施設の維持を行わなければ、どれほど「責任を持って復旧する」と表明しても施設が稼働しない可能性があります。また、経営上、民間業者は高品質で低価格の手法が導入されない限り、あらゆる受託業者は利益を得られる水準まで水道料金を引き上げるか、業務の品質を落として経費を節減することにならざるを得ないことから、水道料金の高騰は避けられないと言わざるを得ません。水道事業の民間業者への委託は「水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図る」だけでなく、「水道の基盤の弱体化」をももたらすことが懸念されます。

水道料金は上がるのか?

日本ではかつて「水と安全がただ」といわれており、良質な水道水が飲める国と評価がされていました。世界的に水道水を飲める国は8か国ほどとされているようで、恵まれた環境であると言ってよいと思います。しかし、自治体が管轄するなかで、各地の水道料金には大きな格差があること、少子高齢化や過疎化などのなかで、公共料金としての水道料金については、国民生活の安全安心の視点からも新たに監視・監督する必要があると思います。

引き続き検討会の議論に注目して行きたいと思います。

(注1)水道事業の民間委託 推進. 日本経済新聞, 2018年12月7日朝刊5面.

(古賀 真子)


(*)PFI法の改正(平成30年)

民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の整備等の促進を図るため、(1)公共施設等の管理者及び民間事業者に対する国の支援機能の強化、(2)公共施設等運営権者が指定管理者を兼ねる場合における地方自治法の特例、(3)水道事業等に関し地方公共団体に対して貸し付けられた地方債の繰上償還に係る補償金の免除に係る措置を講じた「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律」が可決・成立した。

○参考資料

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