予防接種ネット・de・講座 43回 インフルエンザウイルス増殖抑制剤ゾフルーザは安全か!?インフルエンザ対策どうすべきか?
昨年9月に発売されたインフルエンザウイルス増殖抑制剤のゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)をご存知でしょうか。インフルエンザウイルスの増殖を抑える新タイプの薬剤です。この薬はウイルスが増殖するのに必要な、ウイルス特有の酵素の働きを阻害してウイルス増殖を抑えるとされています。症状は服用しない場合と比較すると1日程度消失するとされています。服用開始時に鼻粘膜のウイルスが消え、抵抗性ウイルスが10~20%あるため6日目ごろにはまた増殖するようです。そのため症状の改善が逆に遅れる可能性があるとされています。
この薬でウイルスが早く減るために体内に免疫ができず3割程度抗体が低下するとされています。感染予防に役立つためにはIgA抗体が必要ですがこれの形成も落ちるようです。重症患者や免疫不全者などへの効果は調べられていないようです。副作用としては出血(凝固機能、肝機能その他検査が必要)、下痢、頭痛などがあげられています。(薬のチェック2018NO80より要約)
44歳の男性がインフルエンザではないのにこの薬を処方され、2日後に急性胃炎から敗血症になって亡くなったという相談がありました。男性は、通常に勤務して帰宅後入浴、食事後就寝。翌朝「かぜをひいたみたいだから病院に行く」と言って早朝受診、「インフルエンザは陰性だが症状はインフルエンザ」ということでゾフルーザを処方され1時間後に帰宅。帰宅後内服し、その後から下痢が続いたが自分でトイレに行っていた。その後下痢が続き救急コールセンターに連絡した際、「救急搬送したほうがよい」とのことで翌々日の朝救急車で到着。その時点で重とくとの診断され翌日死亡。検死の結果は急性腸炎から来る敗血症とされたということです。(概要:詳細は不明)
これまで、タミフルについては、さまざまな情報をお届けしてきました。この薬は服用からの経過など、添付文書の副作用には承認時に下痢12例(1.3%),ALT(GPT)増加8例(0.9%)とされています。転落等についての注意喚起もタミフル同様にされています。
PMDA薬の情報;添付文書
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6250047F1022_1_04/
インフルエンザにワクチンは期待されているほど効きません。タミフルの発病抑止効果も限定的です。(英国では備蓄を辞めています)。厚労省は大量に貯蔵されているタミフルの使用期限がくるために莫大な廃棄費用を入札して業者選定しています。
ゾフルーザの副反応情報
2019年1月22日現在公表されている、副作用報告の状況です。
90代の方の死亡が1例報告されています。ただし、情報不足で関係の評価はできないというC評価となっています。
http://www.info.pmda.go.jp/fsearchnew/jsp/menu_fukusayou_base.jsp
症例一覧の5頁
①2018年度第1四半期に消費者等から企業に報告された死亡例
性別不明、高齢者、アナフィラキシーショック
【評価C】
症例一覧の7頁
②2018年度第1四半期に医師が企業に報告した死亡例
男性、90代
2018年3月19日投与、3月20日死亡
【評価C)
※評価Cとは、
転帰が死亡の症例については、被疑薬と死亡との因果関係の評価を次の3つに分類し、参考として掲載しています。PMDAが評価中の症例は評価欄が空欄になっていますが、評価が済み次第、順次掲載します。転帰が死亡の症例以外の症例は評価を掲載していません。
A:「被疑薬と死亡との因果関係が否定できないもの」
原疾患との関係、薬理学的な観点や時間的な経過などの要素を勘案し、医学・薬学的観点から総合的に判断し、被疑薬との関連が疑われている副作用/有害事象が、直接死亡の原因となったことが否定できない症例
B:「被疑薬と死亡との因果関係が認められないもの」
原疾患との関係、薬理学的な観点や時間的な経過などの要素を勘案し、医学・薬学的観点から総合的に判断し、被疑薬との関連が疑われている副作用/有害事象が、直接死亡の原因となったとは認められない症例
C:「情報不足等により被疑薬と死亡との因果関係が評価できないもの」
情報が十分でない、使用目的又は方法が適正でない等のため被疑薬と死亡との因果関係の評価ができない症例
http://www.info.pmda.go.jp/fsearchnew/jsp/menu_fukusayou_base.jsp
ここに「注意事項」の説明があります。すでに副作用情報が出始めています。慎重な再検討が望まれます。
インフルエンザ対策をどうする
21世紀はインフルエンザは「治る時代」と宣伝されています。検査キット、ワクチン、抗インフルエンザ薬に加えて新薬がすすめられています。兵庫県の高齢者施設でのインフルエンザ死亡では、ワクチン接種の徹底と2度のタミフル予防投与をしたにもかかわらず死亡者がでたとしてマスコミが取材・報道しています。タミフルの予防投与時期が遅かったことが責任といわんばかりですが、施設としては、もはや打つ手なしでしょう。ワクチンやタミフルが常用されるようになった今こそ、それらの有効性についてのミスリーディングを見直すべきでしょう。
インフルエンザ流行で高齢者施設の死亡発生に加えて、インフルエンザで小学生が死亡、インフルエンザにかかった成人女性がホームで転倒などの報道がされています。詳細は不明ですが、インフルエンザ症状を緩和するための薬の副作用で死亡するのでは本末転倒です。インフルエンザにかかると、少しでも症状を緩和したいと思うのは当然でしょう。インフルエンザは感染症のなかで現在の日本ではもっともかかりやすい重篤化する病気です。撲滅はできず、誰もがかかる可能性が高い病気です。21世紀のインフルエンザ対策と銘打った3つの神器(ワクチン・検査キット・抗インフルエンザ薬(ウイルス抑制剤))への信仰を見直す時期です。それでも少しでも症状緩和したい方がリスクを覚悟して使用できることは必要(ニーズがある)でしょうが、「水分をとって暖かくしてゆっくり休む」重篤な合併症を起こさない限り死亡する病気ではありません。病気の時にゆっくり休める環境こそが最大のインフルエンザ対策です。
厚労省はワクチンやタミフル等の効果の限界と副作用情報を改めて情報提供する責任があると思います。副作用被害をださず国民に有用な医療をどう確保していくか。今後厚労省等に質問等していく予定です。副作用に関する関連情報をお持ちの方のご連絡お待ちしています。
(古賀 真子)
(参考)
予防接種ネット・de・講座36回 タミフル等抗インフルエンザ~歯切れの悪い「見守り・鍵かけ」~安全性を検証する研究者が該当企業から寄付金受け取り?