知っておきたい!あなたを守る消費者契約法~恋人商法など「不当勧誘行為」が追加:改正消費者契約法が成立
2018年6月8日(金)、不当勧誘行為により取消しや不当契約条項の追加などを盛り込んだ、『消費者契約法の一部を改正する法律案』が参議院本会議で全会一致で可決、成立しました。修正箇所は「加齢」や健康による著しい判断能力が低下している消費者に対して、その不安に乗じて契約締結を迫る行為および霊感商法などによる勧誘等を取消し要件に加えたほか、不当な取引条項などを加えた点です。
2年前の改正では、「過量契約の取り消し権」や「消費者の解除権を放棄させる条項の無効」などが盛り込まれましたが、今回の改正は新たな消費者被害の増加や高齢社会の進展と成年年齢引き下げなどの消費者取り巻く環境の変化への対応が背景にあります。
改正消費者契約法は、2018年3月2日に「消費者契約法の一部を改正する法律案」として閣議決定された後、5月11日の衆議院本会議で審議が始まりました。衆議院消費者問題に関する特別委員会で質疑が重ねられた後、5月23日の同委員会で与野党修正案が提案され可決し、5月24日の衆議院本会議で全会一致で可決されました。その後、5月25日の参議院本会議で審議が始まり、その後の参議院消費者問題に関する特別委員会で質疑が重ねられました。6月6日の同委員会で法案と附帯決議案が提案され可決し、6月8日の参議院本会議で可決・成立しました。
この結果、消費者が申込みあるいは承諾の意思表示を取り消すことができる不当な勧誘行為としては、新たに 6つの類型が号で追加されました。
- 願望の実現に抱く過大な不安をあおる告知 (第4条第3項第3号)
- 恋愛感情等の好意の感情に乗じた人間関係の濫用(第4条第3項第4号)
- 加齢又は心身の故障による判断力の低下を利用した不安をあおる告知(第4条第3項第5号:衆議院修正)
- 霊感等合理的に実証することが困難な特別な能力による知見を用いた告知(第4条第3項第6号:衆議院修正)
- 契約締結前に債務の内容を実施し、原状回復を困難にすること(第4条第3項第7号)
- 契約締結前に事業活動が特に実施したものである旨及び損失の補償を請求((第4条第3項第8号)
さらに
- 不利益事実の不告知(第4条第2項)について要件緩和(故意の要件について、重過失を追加)
がなされることになりました。
無効となる不当な契約条項としては、
- 事業者が自分の責任を自ら決める条項(第8条及び第8条の2の各号の改正)
- 消費者の後見開始等を理由とする解除条項(第8条の3)が追加されました。
上記1~9については、いずれも適格消費者団体による差止の対象となります(第12条参照)
このほか、事業者の努力義務についても改正がなされています(第3条第1項)
詳しくは、添付の新旧対照表をごらんください。
今回は、消費者契約法が平成12年に成立して以来、消費者の取消権、無効の主張の機会を与える実体法部分としては、もっとも大きな改正になり、また、内容的にも、「恋人商法」や「霊感商法」という長年の懸案についても取消しができる場合を消費者契約法の中に、条文化するものとなりました。こうした権利は、消費者が実際に使えるようにならなければ、画餅となってしまいます。消費者教育の充実が喫緊の課題ですが、消費者団体も「より消費者の保護の強化」を求めてきました。今回、条文に入れられなかった点についても多くの課題が附帯決議として指摘されました。
消費者被害にあう前に、消費者契約法の中身や、多用なケースについての対応を知り(下記
参考、消費者庁と全国消費生活相談員協会のツイッター参照)、一人ひとりの方に、法改正の背景の消費者被害や政策を知り、社会全体で自立した消費者として生活するためにはどうしたらよいのかを一緒に考えていっていただきたいと思います。
(古賀 真子)
※今回改正された消費者契約法の条文および附帯決議は、追って消費者庁ホームページに掲載されます。ご覧ください。
消費者契約法改正については、消費者団体や弁護士会がよりよい法案成立に向けて活動を重ねてきました。各地での学習活動、地方議会への意見書採択の働きかけ、国会議員要請など、様々な取り組みが後押しとなり、今回与野党による法案修正が実現しました。ご協力ありがとうございました。他方、今回積み残しとなった論点も多々あり、次の改正に向けて取り組みを進める必要があります。(消団連コメントより)
参考
消費者庁のツイッター
全国消費生活相談員協会のツイッター
いずれも、日常の消費者被害や相談事例がでており、大変参考になります。若い方にもぜひ見ていただきたい充実した内容です。