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予防接種ネット・de・講座36回 タミフル等抗インフルエンザ~歯切れの悪い「見守り・鍵かけ」~安全性を検証する研究者が該当企業から寄付金受け取り?

2017年11月27日、医薬・生活衛生局 医薬安全対策課が、安全使用推進室長名で、「小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は、異常行動にご注意下さい」との標題の注意喚起を報道宛にだしました。マスコミ報道はこれをうけたもののようですが、本来であれば、国民全体にいきわたらせなければならない重要な内容です。異常行動による注意喚起はどんな議論を経てだされたのか、今回はこの注意喚起のもとになった、2017119日 平成29年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の議事録をみてみましょう。(太線と下線、着色は筆者)

2017119日 平成29年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000187864.html

○日時 平成29年11月9日(木)17:00~

○場所 共用第6会議室(厚生労働省3階)

抜粋

前略・・

○事務局 事務局より、議事参加について御報告いたします。本日御出席の委員及び参考人の方々の過去3年度における関連企業、対象品目及び競合品目の製造販売業者からの寄附金・契約金などの受取状況を御報告いたします。

本日の議題に関して、競合品目、競合企業については、事前にリストを各委員にお送りして確認をいただいておりますが、柿崎委員より、バイエル薬品株式会社より50万円以下の受取、長縄参考人より、第一三共株式会社及びバイエル薬品株式会社より50万円以上500万円以下の受取岡田参考人より、第一三共株式会社及び塩野義製薬株式会社より50万円以下の受取、岡部参考人より、第一三共株式会社より50万円以下の受取と申告いただいたほかは、受取の申告はありませんでした。

中略・・資料3-1「インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究」、資料3-2「オセルタミビルリン酸塩の研究報告について」、資料3-3「オセルタミビルリン酸塩 ( タミフル ) の国内副作用報告状況」、資料3-4「ザナミビル水和物 ( リレンザ ) の国内副作用報告状況」、資料3-5「ペラミビル水和物 ( ラピアクタ ) の国内副作用報告状況」、資料3-6「ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 ( イナビル ) の国内副作用報告状況」、参考資料2「リン酸オセルタミビル ( タミフル ) について」、参考資料3「抗インフルエンザウイルス薬の使用状況」、参考資料4「抗インフルエンザウイルス薬の添付文書」。参考資料5は委員と参考人限りの資料とさせていただいていますが、資料3-2で示したオセルタミビルリン酸塩に関する文献を付けております。最後については「競合品目・競合企業リスト」となっています。不足等がありましたら、事務局までお知らせください。

中略

○五十嵐座長 では、議題3「抗インフルエンザウイルス薬の安全性について」に移ります。まず、事務局から経緯と抗インフルエンザ薬の使用量についての説明をお願いいたします。

○事務局 事務局から御説明いたします。資料は参考資料2と、参考資料3を御準備ください。参考資料2は、タミフルに関する経緯ということで、平成21年6月にまとめられた報告書です。こちらを用いて経緯を御説明いたします。参考資料2の3ページ目を御覧ください。

3ページ目、「タミフルの安全対策の経緯等について」です。こちらは3ページ目の上から3つ目の○を御覧ください。平成19年2月にタミフルを服用したと見られる中学生が、自宅で療養中、自宅マンションから転落死するという事例が2例報道されております。当時、大変社会問題になったというものです。この際、万が一の事故を防止するために予防的な対応として、特に小児・未成年についてはタミフルの処方の有無にかかわらず、異常行動のおそれがあることから、自宅において療養を行う場合に、(1)異常行動の発現のおそれについて説明すること、(2)少なくとも2日間、保護者等は、小児・未成年者が1人にならないよう配慮するよう、医療機関に注意喚起を行ったというところです。

そのすぐ下の上から4つ目の○です。こういった対策を当時行っておりました。しかしながら、更に同じ年の3月に、タミフルを服用後に、12歳の患者が2階から転落し、骨折するという報告が2例ありました。この事例を受けまして、添付文書の警告の欄に、「10歳以上の未成年の患者には、ハイリスク患者と判断される場合を除いて、原則使用を差し控えること」、もう1つは、先に述べた「小児・未成年者への予防的対応」を、追加するという対応がなされております。また、同時に「緊急安全性情報」を医療機関に配布しまして、注意喚起を行っています。

なお、タミフルについて書いてありますが、タミフル以外の抗インフルエンザ薬については、警告ではなくて「重要な基本的注意」という添付文書の項目に、自宅で療養を行う場合の注意事項について、タミフルと同様の説明が記載されているところです。ただし、10代への使用の差し控えということは、タミフル以外のものについてはありません。その後、平成21年にこの報告書が取りまとまっております。その概要については、参考資料2の1ページを御覧ください。

平成21年6月の報告書をまとめるに当たっては、主に異常行動を中心として、動物実験、疫学調査等が検証されております。結果の部分については、1ページ目の一番下の3つ目の○を御覧ください。2つの疫学調査の解析が行われております。この中では、タミフルの服用の有無に関わらず、異常行動はインフルエンザ自体に伴い発現する場合があることが、より明確になったということ、ただ一方で、先ほど申しました対策を変更する積極的な根拠も得られていないということから、予防的な安全対策を継続することが妥当という結論をまとめております。

また、この報告書の中では、平成21年6月以降も、異常行動との因果関係について情報収集をするということが記載されておりまして、今回のように毎年、岡部参考人の研究班の調査結果、副作用報告の報告状況について報告し、先生方に御確認いただいているという状況です。以上が、タミフルの経緯になります。

続いて、参考資料3、「抗インフルエンザ薬の処方患者の推計」です。こちらのデータは、製造販売業者が、日本医療データセンターのデータベースの情報等を用いて作成したデータです。昨シーズンの使用状況です。縦に製品を4つ記載しております。上からタミフル、リレンザ、ラピアクタ、イナビルとなっています。主にこの4つの製品が抗インフルエンザ薬として使用されている状況です。右側の縦のほうに「全推定処方患者数」というのをまとめております。縦に見ていただくと、上から、タミフルが約313万人、リレンザが約197万人、ラピアクタが約27万人、イナビルが約475万人という推計です。なお、括弧の中に記載しているのは、2015/2016シーズン、昨々シーズンのデータになります。

また、その左側のほうには、0~9歳の推計と、10~19歳の推計を記載しています。特に注目すべき点としては、真ん中の10~19歳の処方患者数になります。一番上のタミフルについては約10万人、一方、その下のリレンザは約72万人、イナビルは約138万人ということで、タミフルに比べて処方数が多くなっております。これについては、冒頭申し上げましたタミフルの警告の欄に、10代での投与を原則差し控えるようにという記載がなされているためというように考えられます。この処方の傾向については、これまでのシーズンも同様でして、今回も同様であったということです。冒頭の経緯、処方量についての説明は、以上でございます。

○五十嵐座長 続いて、資料3-1になります。インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究2016/2017シーズン報告を、おまとめいただきました岡部参考人から御説明をお願いいたします。

○岡部参考人 川崎市健康安全研究所の岡部です。インフルエンザ罹患に伴う異常行動の研究は11シーズン目です。私が国立感染症研究所に居たときからスタートしていまして、この会でも毎シーズン説明をさせていただいております。結論から言うと、2016/2017シーズンも、従来と大きい相違はないということになります。少し細かいところも御説明しようと思います。資料3-1のパワーポイントの下のほうは、研究班の構成になります。今日お越しの桃井先生にも入っていただいておりますが、いろいろな分野の方の御意見を頂きながら結論を出しているということになります。

パワーポイントの5枚目、これが昨シーズンのインフルエンザの状況です。ピークとしては、割に高いほうに位置するというところですが、全体の流れは同じ、余り変わりないということになります。

パワーポイント資料8枚目、ただいまの後ろのほうですが、調査の概要は、全ての医療機関にお願いをする形にして、インフルエンザ様疾患と診断され、かつ重度の異常な行動を示した患者さんについて、FAXで報告を頂く。従来はインターネットも使っていましたが、経費削減ということ、実際にはインターネットでの報告が少ない、ということでFAXのみにしたということです。その右側、パワーポイント9枚目、報告基準は、ここに書いてあるとおりで、対象はインフルエンザ様疾患です。ただ、後でお示ししますが、インフルエンザ様疾患といいながら、もう、ほぼ100%近く「迅速診断キット」でインフルエンザであるというように診断されているので、ほぼインフルエンザに関する調査と言ってよろしいのではないかと思います。

パワーポイント14枚目、これが患者さんの年齢です。n数は、11シーズン目は非常に少なく、53例の報告でした。これからは重度な異常な行動全て、マル1突然走り出す・マル2飛び降り・マル3その他を分析しております。患者さんの年齢は小学校の年齢ぐらいから始まっているという状況があります。

裏ページです。性別も圧倒的に男児が多いということになります。これは、それぞれの表があるのは、今までの11シーズン分をバーッと書いてあるので、傾向としては、この円グラフは、毎シーズン大体同じだということがお分かりいただけると思います。

パワーポイント19、表2、発熱から異常行動発現までの日数と書いてありますが、ほとんどが発熱後1日以内、2日目がピークであることが大体シーズンによって多少違いがありますが、大方、2日以内に、ほぼ多くの患者さんが発症していると言えます。

パワーポイント25、図7-1、インフルエンザ迅速診断キット実施の有無ですが、これで見るように、毎年ほぼ全ての、97、98%の患者さんは、この迅速診断キットで診断されております。

ちなみに、一般の臨床でも、今、インフルエンザの疑いがあると、97、98%の患者さんが、迅速診断の検査を受け、その陽性になった人の90%以上は、何らかの抗インフルエンザウイルス薬のが使われているというのが現在の臨床背景にあると言っていいと思います。

次ページ、右側のほうに図9-1、異常行動と睡眠の関係です。エビ茶色の部分がほとんど占めているのは、眠りがちょっと覚めて、直ちに起きたというのが大体の患者さんで、寝ていてちょっと目覚めたあたりに、バーッと異常行動が出るというのが多い傾向にありました。

今のページの裏側ですが、パワーポイント資料31、これが本研究の一番中心の結果になると思いますが、服用した薬の組合せ、マル1突然走り出す・マル2飛び降り・マル3その他について、どの薬を飲んでいたかというのが色別に円グラフになっています。一番上にあるのが2016/2017シーズン、先シーズンになるわけですが、n数が53の中で、下に見る円グラフに比べて、「全て服用なし」が3件なので、やや少ない。アセトアミノフェンのみが3件、これも同じぐらいになりますか。いろいろな組み合わせであるので、これだけザッと見ると、どのノイラミニダーゼ阻害剤で異常行動は発生するということと、過去11シーズンを見ると、一定数は「全て服用なし」あるいは、「アセトアミノフェンのみ」というのがあります。その前のシーズンの調査から、できるだけ、「いずれか不明」というのをなくす調査票にしていますので、今までの半数ぐらいが、いずれか不明だというシーズンもあったわけですが、それが、もう少し細かく分かるようになってきたというのが、パワーポイント資料31で、2016/2017シーズンと、2015/2016シーズンの2つになります。

スライド40、図11-3の下側ですが、重度の内、特に、マル1突然走り出す・マル2飛び降り、放っておけば、生命に関わるというようなものを重点にしましても、ただいま申し上げたような全体とほぼ同じ傾向にあると見ていいのが、この先のスライドが、それぞれになっております。細かいところは省略させていただきます。

一番最後のページの表側、スライド62、NDB(National Database)による服用薬剤ごとの発症率の比較です。NDBで処方箋枚数、患者数などが取れるようになりましたので、これの調査も昨々シーズンに始めていますが、先シーズン、つまりこのデータでは、NDBのデータが得られるのが、もうそのシーズンの終わった後の秋になるので、この間のシーズンの分析はまだできていないということで御了解いただきたいと思います。今までのは年齢別において、服用薬剤ごとですと、ペラミビルが高いという状況が出ていますが、n数が非常に少ないので、断定的なことは言えないというのがあります

一番最後に、まとめの(1)と(2)として、結論を上げていますが、まとめ(1)では、重度の異常な行動の報告数は、過去11シーズンで一番少なく、年齢は10代から始まり、13歳がピーク、男性が圧倒的に多く、重度な異常な行動の発生状況については、これまでの報告と類似している、としてあります。件数などは、ここに書いてありますので、後で見ていただければと思います。NDBを用いた使用薬剤ごとの異常行動については、今後、出てくることになります。

まとめ(2)のほうです。したがって、これまでと同様に、抗インフルエンザウイルス薬の種類、使用の有無と異常行動については、特定の関係に限られるものではないと考えられる。報告内容には、飛び降りなど、結果として重大な事案が発生しかねない報告もありました。3番目のポツで、以上のことから、インフルエンザ罹患時における異常行動による重大な転帰の発生を抑止するために、次の点に対する措置が引き続き必要である、として、抗インフルエンザウイルス薬の処方の有無に関わらず、インフルエンザ発症後の異常行動に関して、注意喚起を行うこと、としてあります。

今回は3年研究の、これが2年目の成績になるので、この後、NDBからの結果を加えて御報告いたします。3年目も行いますが、これは研究は年度ごとなのですが、インフルエンザシーズンは年度ごとではないので、3年目の研究は、多分、全成績が出ないうちに研究班はお終いになるので、完璧なデータとしては、来年度は途中報告までにとどまざるを得ないということを前提にせざるを得ません。そうすると、これまでの11シーズンのデータ、それから、今年度の追加の調査成績を踏まえた上で、添付文書、その他の書き方として、継続していくのか、あるいは、何らかの変化を付けていくかどうかの議論を、できれば今年度までの成績でしていただきたいというのが研究班からの提案になります。

それから、今後は、新しいノイラミニダーゼ阻害剤、あるいは、ノイラミイダーゼ阻害剤以外の薬剤の登場という可能性もあるので、そうなったときに、こういう研究を続けるかどうか、これは御判断を頂きたいと思います。そういったような課題は残されております。以上です。ありがとうございます。

○五十嵐座長 ありがとうございました。インフルエンザ薬全体の安全性、例えば異常行動のことも含めまして、この議論は、各々の医薬品の副作用報告状況をこれから事務局からお話をいただきますので、そのときにしたいと思います。それ以外の点で岡部参考人から頂いた御説明について、何か御質問等ございますでしょうか。

○事務局 事務局から1点、よろしいでしょうか。

○五十嵐座長 どうぞ。

○事務局 岡部先生、御説明をありがとうございます。NDBのデータがそろってから、また事務局のほうに御報告いただくということですが、そちらのデータについては、また別の安全対策調査会の場で、事務局より御紹介させていただき、一般の方も見られるような形にさせていただければと思います。そのような対応でよろしいでしょうか。

○岡部参考人 我々のほうは構いません。

○五十嵐座長 それではよろしいですか。では、資料3-2以降の説明をお願いします。

○事務局 続いて、資料3-2は研究報告です。こちらについては昨年の11月の調査会以降に製造販売業者の中外製薬から頂いているタミフルに関する研究報告についてまとめたものです。新たに4件、報告があったということです。なお、この4件については、委員限りの資料、参考資料5としてお手元に配布しております。個別の文献ということですので、傍聴者には配布しておりません。

1つずつ概略を説明します。No.1については、ただいま御説明いただいた岡部参考人の研究班の研究成果をまとめたものです。レセプトの情報はNDBの情報に基づいて、処方薬剤ごとのインフルエンザ患者指数から、薬剤ごとの異常行動発症率についてまとめたものです。

その後、No.2~4までですが、こちらについては学会の要旨になっております。No.2の研究報告については、PMDAの副作用のデータベースのデータを用いて精神神経症状の関連性について、検討を行ったというものです。この中ではオッズ比が高くなっておりますが、こちらについて、PMDAの専門委員のほうからは、「自発報告による報告バイアスは避けられず、本報告をもって関連性を評価することは困難であろう」というようなコメントを頂いております。

続いてNo.3です。こちらについては、耐性菌の関係、薬剤耐性の関係の話になります。抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスを解析し、二重耐性変異ウイルスが検出された可能性というものを報告したものです。

最後のNo.4です。こちらは基礎の分野です。マウスを用いてタミフル投与による異常行動の作用機序解明のために、受容体との関係性を検討した研究成果になります。こちらについてはPMDAの専門委員からは、「本研究で用いられたタミフルは高用量で、ヒトへの外挿性は不明」という評価を頂いております。また、「研究内容についても詳細が不明」というコメントを頂いております。資料3-2は以上です。

○事務局 続いて、資料3-3~3-6ですが、各剤の国内の副作用報告状況について、説明します。まず資料3-3を御覧ください。オセルタミビルリン酸塩(タミフル)についてです。こちらの資料は、2016年9月1日~2017年8月31日、以降は、「2016/2017シーズン」と申し上げますが、その間に製造販売業者から寄せられた副作用報告について、まとめたものです。

まず、1ページを御覧ください。これが2016/2017シーズンの副作用報告状況です。本剤推定使用患者数が約313万人、製造販売業者からの重篤な副作用報告の症例が104例、150件。異常行動については、裏側2ページに記載しておりますが、35件でした。

3ページ目からは昨々シーズンになりますが、2015/2016シーズンの副作用報告状況について、参考として示しております。こちらは推定使用患者数が約305万人、重篤副作用報告数68例、108件で、異常行動は、これも裏側にありますが、21件であったという状況です。

続いて、横向きの資料ですが、異常な行動が記録されている事例の概要です。ここで「異常な行動」というのは、報告された副作用の名前にかかわらず、急に走り出す、部屋から飛び出そうとするなど、飛び降り、転落等に結び付くおそれがある行動と定義をしており、そういった異常な行動が報告された症例について、経緯など、この概要にまとめたものです。

5ページ目から16ページほど続きますが、全体で38症例、今回は報告されております。その中で乳児、10歳未満の小児の症例が18症例、10歳代の症例が3症例ということで、その他、高齢者や成人による症例もありました。具体的な経過については省略します。

続いて、死亡症例の概要、21ページからですが、死亡症例について、同様にまとめております。今回、報告された死亡症例は、裏表で計4例ありますが、この中には先ほどの異常な行動として挙げられた症例は含まれておりません。死亡症例に関しては、被疑薬と因果関係があるかどうかという評価も行っていただき、今回、挙げられている症例、いずれについても専門家からは「情報不足等により、被疑薬と死亡との因果関係は評価できない」という評価を頂いております。

続いて23ページ、こちらがこれまで平成16年度以降にPMDAで因果関係評価を行った死亡症例をまとめたものです。これまで99症例の評価をしており、そのうちAという評価が、「被疑薬と死亡との因果関係が否定できないもの」ということですが、これが4症例、そしてBですが、「被疑薬と死亡との因果関係が認められない」とされたものが14例、Cですが、今回の4症例も全てこのCの中に含まれますけれども、「情報不足等により、被疑薬と死亡との因果関係が評価できない」という症例が81症例ありました。その裏側、24ページ以降は、これまでの死亡症例全例における患者背景等々、背景の情報を集計したものですので、後ほど参考に御覧いただければと思います。

続いて資料3-4は、ザナミビル水和物(リレンザ)についてです。1ページ目、2016/2017シーズンの副作用報告状況は、まず、推定使用患者数が197万人、製造販売業者からの重篤な副作用報告症例が33例、67件。そして、異常行動の件数は1ページ目の下の辺りに書いていますが7件でした。先ほどと同じように、次の3ページ目に2015/2016シーズンの状況を示しておりますが、こちらは使用患者数が255万人、重篤副作用報告数が33例、61件で、異常行動については4件という状況でした。

続いて、また横の資料になりますが、5ページ目から異常な行動が記録されている事例の概要を示しております。こちらについては全部で11症例あり、10歳未満の症例が1症例あって、残り10症例は、全て10歳代の症例という状況です。

最後の1枚が死亡症例をまとめたものですが、今回、報告されている死亡症例は1例で、先ほどの異常な行動のリストにも全く同じものがありますが、この死亡症例については異常な行動が報告されているものです。また、因果関係についても評価を頂いており、「情報不足等により因果関係は評価できない」とされております

続いて資料3-5は、ペラミビル水和物(ラピアクタ)についてです。同様に御説明をしますが、1ページ目、2016/2017シーズンについては、使用患者数が約27万人、重篤な報告症例数が42例、63件。異常行動については、裏側2ページの一番上に書いてありますが、1件と報告されております。また次のページは、2015/2016シーズンの報告状況ですが、使用患者数が約29万人、重篤副作用報告数が35例、44件ということで、昨々シーズンについては異常行動は報告されていませんでした。

最後のページですが、異常な行動に該当する症例はありませんでしたので、死亡症例のみのまとめです。全体で4件ありましたが、先ほど申し上げたとおり、異常な行動が報告されている症例ということではありませんでした。また、この4症例いずれについても、「情報不足等により、因果関係は評価できない」という評価を頂いております。

最後、資料3-6は、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル)についてです。まず1ページ目、2016/2017シーズンの状況ですが、推定使用患者数が約475万人、重篤な報告症例が24例、31件で、異常行動については、中ほどにありますが4件でした。裏側が2015/2016シーズンですが、使用患者数が約392万人、重篤な副作用報告症例が33例、51件で、異常行動は、これも中ほどに記載しておりますが、11件ということでした

次のページが、異常な行動の概要をまとめておりますが、全部で5例あり、全て今回は10歳代の症例です。最後のページですが、死亡症例が1件あります。この1症例については、先ほど5例あると申し上げた異常な行動の事例の1つであり、異常な行動が起きた症例ということですが、評価としてはこれまでと同様、「情報不足等により、因果関係が評価できない」ものということで、評価をされております。各剤の副作用報告状況については、以上です。

○五十嵐座長 それでは、先ほどの岡部参考人の調査結果も含めまして、異常行動についての御議論と、それから、ただいまの事務局からの説明に対する御質問、御意見を一緒にお受けしたいと思います。いかがでしょうか。

○水口参考人 すみません、資料3-2でオセルタミビルの研究報告について、リストを出していただいたのですけれども、文献を検索した時期の問題なのか、1つ何か重要な文献が落ちているように思いました。最近、見付けましたので、紹介させていただきました。質問というよりコメントですけれども。

これは大阪市大の廣田先生のグループが、例の1万人スタディのデータを基に追加の解析をしておられて、新しい疫学的な方法、これは「セルフコントロールド・ケースシリーズスタディ」というのですけれども、それを用いて解析をしてみたと。この「セルフコントロールド・ケースシリーズスタディ」というのは、ある時間帯をケースとして、同じ人の、それ以外の時間をコントロールドするというような手法でして、そうすると、その人にまつわる様々な交絡因子が、みんなキャンセルされるので、比較的少数のMでも結論が導きやすいというものらしいです。ちょっと私も疫学の専門ではないので、詳しくは分かりませんでしたけれども。

今回は、タミフルを飲んでから、血中濃度がマックスに達するまでの時間をケースとして、それ以外の時間をコントロールとしたと。そうすると、結論としては、そのケースの時間帯には、「アブノーマルビヘイビア」のタイプAというのは、自傷他害の危険のある重度な異常行動ですけれども、これのリスクが29倍であったというような結論であります。

ただ、その後の最終的な因果関係に関しましては、この29倍であっても、やはり時間によってインフルエンザそのものの症状の重症度も変わっているので、その要素を完全にこの処方でキャンセルできていないから、このタミフルのせいで異常行動が起きたという結論はできないとコメントしております。それにしても29倍はかなりのショッキングな数字ですので、これは8月に発刊された「ワクチン」という日本から出ている国際雑誌に発表されています。これについても考慮に入れた上で、いろいろな施策を討論していく必要はあるのではないかと考えました。以上です。

○五十嵐座長 ありがとうございます。文献検索は、また次の機会にも御紹介いただけるかもしれませんので、御検討いただきたいと思います。何かほかにありますか。

○桃井参考人 岡部先生に大変端的に分かりやすくおまとめいただきました。頻度はまだこれからだといえ、このデータが出ているということで、特に医薬品の安全性に関する意見ではないのですけれどもそれと関連して、このインフルエンザ及び医薬品に関する死亡事例に関して、2016/2017年度は、異常行動が少なかったとはいえ、死亡例があるということは、極めて大きな問題であると思います。非常に異常行動による死亡例の数が少ないとはいえ、これはゼロにできるはずのものであるということから、そういう意味でこれをゼロにするにはどうしたらいいだろうかと考えなくてはいけない。

症例の詳細を先ほど御説明いただいた資料で見ますと、薬剤師も医師も詳細に患者さんの保護者に説明をしていると。しかしながらマンションから飛び降りてしまったと。そしてもう一例は深夜であって、深夜ですとなかなか止めることが難しい。これもマンションからの飛び降りです。マンションからですと直で死亡につながります。今の日本の住居状況を思うと、薬剤師、医師が説明しているにもかかわらず、その深刻さが一般の方々に伝わったのだろうかと。

 医者も薬剤師もその死亡の事例を大変よく知っていますから、深刻さを分かっていて話しますけれども、それは必ずしも患者さんといいますか、受け取る側はイメージを持っていませんので、インフルエンザによって死亡するというイメージがありませんので、十分に深刻さを受け止め切れているかと。2人も死亡例が出ているということは、やはりまだこの伝え方に改善の余地があるのではないかと思います。

それからもう1点は、2日間1人にしないでくださいと。今の日本の生活の中で、2日間も10代の子供を1人にしないで家で見ているというのは、極めて難しい課題です。特に共働きがありますと、なかなか難しい課題でもありますし、お母さんが一日中48時間、家にいて見ているということは難しい。またお母様が48時間、家にいて見ていたとしても、10代の非常に力が強い、異常状態になった子を止め切れるかどうかは極めて難しい課題です。

 そういう意味で、1人にしないでくださいという注意書きは、先ほども御説明がありましたけれども、これが果たして現実的な対応であろうかと思います。窓さえ開けなければ、錯乱した子供が窓さえ開けなければ飛び降りずに済んだのに、死亡しなくて済んだのにと思います。もう少し具体的な、この罹患の時期にまだ分からないですが、非常に簡単ですから、防犯の何か鍵を1つ付けて親が管理していれば絶対に窓は開きません。非常に簡単なことなのに、1人にしないでくださいということだけの情報伝達に頼っていることは、いかにも歯痒いという感じがいたします。もう一歩踏み込んで、親御さんに具体的な行動、死亡を1人でもなくする具体的な行動の情報伝達が行政のほうからできないものかと考えます。

○五十嵐座長 大変重要な御指摘を頂いたと思います。ありがとうございます。注意喚起をどのようにするかというのは、これからまた検討しなければいけないのではないかと思います。そのほかはいかがでしょうか。

○岡田参考人 異常行動でなくてよろしいですか。

○五十嵐座長 はい、結構です。

○岡田参考人 アナフィラキシーに関してです。2回前のこの調査会で、夾雑物としての乳蛋白を含む乳糖水和物の件がありまして、乳製品に対して過敏症のある患者さんに投与した場合、注意しながらということで、注意喚起が添付文書に書かれたと思います。本日の資料を見せていただくと、リレンザは前々シーズンはありませんでしたけれども、昨シーズンは2例、イナビルも3例起こっていて、この患者さんが乳製品に対してアレルギーがあったのかどうかということが解りません。

それと、「アナフィラキシー、あるいはアナフィラキシー反応」と書かれていましたけれども、これは果たして、臨床医を信じないわけではないのですが、アナフィラキシーなのかどうかというところを、できれば死亡例と同じように、症例の特出しをしていただけると、見るほうも有り難いかなと思います。次回からでも構いませんけれども、アナフィラキシー例は、せっかく添付文書に書いていただきましたから、添付文書に追加したときに、それはちゃんと評価されて、減ってきているかどうかということを検討いただければと思います。

○医薬安全対策課長 事務局です。岡田先生の今の御指摘の部分は、例えばワクチンの検討をするときに本調査会で使っている、ブライトン分類の一覧表で、5段階で評価をしたものでトレンドを見ていく、それと同じような様式で検討させていただければよろしいでしょうか。

○岡田参考人 是非とも、それをしていただいて、ブライトンでアナフィラキシーと、アナフィラキシーでないというものが、明確にある程度分類できると思います。先ほどの死亡例のように、ある程度の評価結果も含めて出していただけると有り難いかなと思います。

○医薬安全対策課長 そうしましたら、表形式のワクチンでやっているものを踏襲しつつ、あとは乳かどうかという部分の情報も入れてということで、対応させていただくことにいたします。

○五十嵐座長 そのようにお願いしたいと思います。そのほかいかがでしょうか。

○事務局 事務局です。桃井先生、貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございます。最初に、異常行動に係る死亡例が2件あると御指摘いただいておりましたので、どの事例か御紹介をさせていただきたいと思います。

リレンザ1件、イナビル1件ですけれども、資料3-4がリレンザの関係です。こちらの通し番号で言うと11ページになります。11ページ、12ページにかけてありまして、こちらは10代の男性がリレンザを服用した後に、母親が少し家から離れた間に、転落若しくは飛び降りがあり、その後、死亡に至ったというようなものです。それが1件目です。

もう1つは資料3-6のイナビルです。ページ数は資料3-6の3ページです。こちらは情報が余りないのですが、10代の男性が自宅のマンションから飛び降り死亡したという事例です。この2例が、いわゆる転落又は飛び降りの関係で亡くなったという患者さんです。以上が、まず事実関係です。

もう1つは、桃井先生から大変貴重な御意見を頂いた、情報提供の在り方というところです。この点については、どういうものがいいのか、先生方からお知恵を頂きたい部分です。先ほど桃井先生から、飛び降りないように鍵を掛けておくということもありました。岡部先生の研究班からは、異常行動が起きる時期として、目が覚めた直後に多いといった様々なデータが、今、集まってきているところです。それらを踏まえて、どういった効果的な注意喚起があるのかということを、今後、考えていきたいと思っております。

また、国のほうでやる注意喚起と、企業のほうで弾力的に行っていく注意喚起があるので、その辺は役割分担もあるのかと思います。現場で実際に行われている効果的な説明で、具体的にどういうものが行われているのか、もしかしたらその辺の情報も現場から得られるかもしれません。そういったことも、ちょっと今後ということになるかと思うのですけれども、専門家の先生方のお知恵を聞きながら、上手いものがあれば検討していきたいと考えております。

○五十嵐座長 そのほか、いかがでしょうか。

○伊藤委員 薬剤間の比較ということを考えますと、例えば岡部先生の資料の31ページに、各インフルエンザ薬の比較がされていると思うのですけれども、例えばこれで見たときに、イナビルは実際にかなり多く処方されているというデータもあったかと思うのですが、その処方数でノーマライズするとかできたらいいのかなと思います。それと、症例の数としても53例は少なめですので、統計をこれで取れるのか分からないのですけれども、例えばすごく重度な異常行動に限らず、もう少し異常行動の数を増やして統計を取ることが難しいのかどうかということを、ちょっと知りたいと思いました。

○岡部参考人 このスライド番号で言うと、7ページのところですけれども、調査概要というものがありまして、今、発表したのは、重度な異常な行動に関する調査だけの発表で、それとは別に研究班としては、軽度の異常な行動に関する調査というものをやっております。この場合だと数は増えてくるので、全医療機関というよりは、定点の先生にお願いして、求めているということがあります。これは軽度なので、軽微な行動も起き得るということですが、傾向としては重度と似たようになっております。

○伊藤委員 軽度なものも含めても、同じような薬剤間の比較結果が出てくるということですね。ありがとうございます。

○五十嵐座長 ありがとうございます。そのほかはいかがですか。よろしいですか。それでは、本日の御議論を頂きましたので、まとめをしたいと思いますが、よろしいでしょうか。まず抗インフルエンザウイルス薬の服用と異常な行動及び突然死との因果関係を示唆する結果は得られていないと考えられます。一方、現在の予防的な安全対策を変更する積極的な根拠も同様に得られていないということから、これまでの安全対策を継続するということにし、インフルエンザ罹患時の注意喚起を引き続き徹底することが適当であると考えます。しかし、この注意喚起の仕方については、検討を要するという御指摘を頂きました。

 それから、今後も引き続き抗インフルエンザ薬の関連情報を収集するということにいたしまして、新たな報告等が得られた場合には、得られた情報に基づいて、適切な評価を実施していくことが必要だということになります。それから、もう1つ、アナフィラキシーのブライトン分類に準じた公表の仕方も、改めていただきたいという指摘もありましたので、これも検討事項にしたいと思います。以上のようなまとめにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

ありがとうございます。それでは、本日、予定をしておりました議題は以上ですけれども、事務局から何かありますでしょうか。

○事務局 事務局です。次回の安全対策調査会につきましては、日程調整の上、改めて御連絡を申し上げます。また、来週11月17日金曜日18時より、医薬品等安全対策部会があります。場所は厚生労働省18階、専用22会議室にて行います。遅い時間の開催ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

○五十嵐座長 それでは本日の検討会は、これで終了したいと思います。どうもありがとうございました。

(了)

当日の資料

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000183979.html

 

(古賀 真子)

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