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9月15日締め切り~改正消費者契約法のパブコメに意見を出しましょう

消費者契約法は、消費者と事業者の情報力・交渉力の格差を前提とし、消費者の利益擁護を図ることを目的として制定された法律です。昨年の通常国会で法制定以来の改正が行われましたが、その検討の際に積み残された論点について、内閣府消費者委員会「消費者契約法専門調査会」で継続審議が行われ、本年8月に報告書がとりまとめられました。

報告書では、「措置すべき内容を含むとされた論点については、消費者と事業者の双方から幅広く意見を聞く機会を設ける」ことが求められており、消費者庁では本「消費者契約法の見直しに関する意見」を募集しています。

民法の成年年齢引き下げの動きもある中で、法改正を実現することは消費者団体としての大きな課題です。消費者契約法は消費者の権利を担保する大切な法律ですので、多くの消費者および消費者団体のみなさんの意見の提出が重要です。

 

詳細は下記参照 

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235030029&Mode=0

 意見募集期間:821日(月)~915日(金)


2017年9月6日、CNJとして意見を出しました。

 

消費者契約法の見直しに関する意見

 

1 法第3条第1項関係(1)について

(意見)

消費者契約法(以下、法という)第3条第2項として下記の趣旨の規定を入れる。

「契約条項においてその意味を一義的に確定することができない場合には、条項の使用者に不利な解釈を採用するものとする。」

(理由)消費者契約法は、事業者と消費者との間に情報・交渉力の格差が存在することが、事業者と消費者との間で締結された契約において発生する紛争の背景となることが少なくないことを踏まえ、事業者の努力義務として、消費者契約の条項を定めるに当たって明確性に配慮することを定めています(法第3条第1項)。

条項使用者不利の原則は、明確性について、解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残る場合には、事業者自らが条項を策定していること、消費者は事業者から不利な解釈を押し付けられる可能性が大きいこと等から、消費者を合理的に保護する見地から、条項の使用者である事業者に不利な解釈を採用すべきとするものです。事業者における努力義務を実質的に補完するために、「条項使用者不利の原則」の明記を求めます。

2 法第3条第1項関係(2)について

(意見)

法第三条第1項に下線部分の追加を入れる。

「事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに、消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、当該消費者契約の目的となるものの性質に応じ、当該消費者契約の目的となるものについての知識及び経験についても考慮した上で、当該消費者の年齢も考慮し、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない。」

(理由)消費者保護の観点から、当該消費者契約の目的となるものの性質に応じ、当該消費者契約の目的となるものについての知識及び経験、についても考慮すること規定案に賛成するが、加えて、事業者の情報提供に関して、考慮すべき要因となる個別の消費者の事情に「当該消費者の年齢」も明記してください。

今回、成年年齢の引下げ対応検討ワーキング・グループの報告書の内容を踏まえて、配慮に努める義務が検討されていたにも関わらず、考慮要因として年齢が明示されませんでした。若者の消費者被害については、未成年取消権がなくなる20歳を境に急激に増えています。成年年齢の引下げを盛り込んだ民法改正案が秋の臨時国会に提出される可能性が高い中、未成年者取消権に代わる若年成人の消費者被害の防止・救済のための制度整備が手当されることなく成年年齢の引き下げが実施された場合、消費者被害が増えることは明らかです。本論点は消費者委員会からの答申書にも付言として特記されており、喫緊の課題として「年齢」も明記することを求めます。

3 法第4条第2項関係について

(意見)

不利益事実の不告知(法第4条第2項)の規定において、事業者の主観的要件に「重大な過失」を追加することに賛成する。

(理由)不利益事実が告げられていなかったことによって生じた消費者被害について「重大な過失」を規律の対象に含めることにより、取消権を拡充すべきです。取消しを認めてもよいはずの被害事例について、故意の立証が困難であるために、取り消せない場合の立証の困難に起因する問題に対処するためには、不利益事実の不告知の主観的要件に「重大な過失」を追加することが消費者被害の救済につながると考えます。

4 法第4条第3項関係について

(意見①)法第4条第3項の規定において掲げる行為(当該行為によって消費者が困惑して意思表示をしたときは取消しが認められることとなる行為)として、

(1)当該消費者がその生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険に関する不安を抱いていることを知りながら、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該損害又は危険を回避するために必要である旨を正当な理由がないのに強調して告げること

(2) 当該消費者を勧誘に応じさせることを目的として、当該消費者と当該事業者又は当該勧誘を行わせる者との間に緊密な関係を新たに築き、それによってこれらの者が当該消費者の意思決定に重要な影響を与えることができる状態となったときにおいて、当該消費者契約を締結しなければ当該関係を維持することができない旨を告げること

(3) 当該消費者が消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に当該消費者契約における義務の全部又は一部の履行に相当する行為を実施し、当該行為を実施したことを理由として当該消費者契約の締結を強引に求めること

(4) 当該事業者が当該消費者と契約を締結することを目的とした行為を実施した場合において、当該行為が当該消費者のためにされたものであるために、当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしないことによって当該事業者に損失が生じることを正当な理由がないのに強調して告げ、当該消費者契約の締結を強引に求めることの趣旨の規定を追加することに賛成します。

(理由)いずれの趣旨の規定も、事業者が消費者の不安をあおり合理的な判断をできない状況に追い込んだり、威迫的な言動で消費者を困惑させて契約させるものであり、これらのケースでの取消権を認めることにより消費者の利益が守られるものと考えられます。

(意見②)法第4条第3項第5号(追加条項)として、

「事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者の年齢又は障害による判断力の不足に乗じて、当該消費者の生活に不必要な商品・役務を目的とする契約や当該消費者に過大な不利益をもたらす契約の勧誘を行い、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる」との規定を設ける。

(理由)消費者委員会専門調査会報告書では「その他の今後の検討課題」として整理されるにとどまりましたが、判断力の不十分な消費者が、事業者による執拗な勧誘ないし威迫的な勧誘により望まぬ契約を締結させられた類型の救済は十分にできません。このような場合にも契約を取り消すことができるという規定を新たに設けるべきです。

(意見③)法第4条第3項6号(追加条項)として、

「前1号から5号の行為については、電話勧誘に限らない執拗な勧誘行為等の場合についても新たな困惑類型と見做す。」と規定する。

 (理由)電話勧誘に限らない執拗な勧誘行為については、今後の課題とされましたが、今回の規定案で追加される困惑類型の規制によっても、消費者が、事業者による執拗な勧誘ないし威迫的な勧誘により望まぬ契約を締結させられた類型の救済は十分にできません。平成27年報告書において取りまとめられたところに従い、今回の改正で規定することを望みます。

4 不当条項の類型の追加関係(1)について

(意見)

不当条項の類型に、消費者の後見、保佐または補助開始の審判を受けたことを理由として事業者に解除権を付与する条項を追加し、無効とする旨の規定を設けることに賛成します。ただし「当該消費者が後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたこと『のみ』を理由として」の、『のみ』の文言は不要です。

(理由)審判開始による解除権行使により、成年被後見人、被保佐人または被補助人に関する契約トラブル防止の一助になることや、成年後見制度の利用が促進されるという観点から有効な条項と考えます。ただし、「当該消費者が後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたこと『のみ』を理由として」とする要件については、同規定の適用範囲を不当に狭めるおそれがあるので、法制化に当たっては、この「のみ」という文言は削除すべきです。

5 不当条項の類型の追加関係(2)について

(意見)

不当条項の類型に、ア~ウの条項を追加し、無効とする旨の規定を設けることに賛成します。

(理由)事業者の債務不履行や不法行為などにより消費者に不利益が生じるケースは現に存在します。消費者に損害が生じた場合の責任の所在について、その要件の一切の決定権限を事業者に与えるという条項は、消費者の不利益につながります。こうした条項を無効とすることで消費者の権利が守られると考えます。

6 不当条項の類型の追加関係について

(意見)

今回消費者委員会専門調査会報告書で「その他の今後の検討課題」などして整理された、いわゆる解釈権限付与条項・決定権限付与条項、サルベージ条項(ある条項が強行法規に反し全部無効となる場合に、その条項の効力を強行法規によって無効とされない範囲に限定する趣旨の条項)、軽過失による人身損害の賠償責任を一部免除する条項についても、速やかに導入の検討を進めるべきです。

(理由)事業者と消費者の間の条項に関する情報や理解の差は大きく、消費者が保護の観点からこれらの条項についても速やかに検討を進めてください。活発な論議がされたにもかかわらず、今回の改正に反映されなかったことは残念です。

7 法第9条第1号関係について

(意見)

本規定案には賛成しますが、「平均的な損害の額」については、事業者が立証責任を負うとすべきです。仮に消費者に立証責任または法律上の推定規定を入れる場合には、事業者に必要な算定根拠資料を提供すべき義務を課すべきであると考えます。

(理由)消費者契約において消費者と事業者のもつ情報量には格段の差があり、消費者が「平均的な損害の額」を立証することは困難です。事業者が損害賠償の額を予定しまたは違約金を定める条項を定める際には、合理的な根拠をもって「平均的な損害の額」を算定しておくことが当然期待されており、トラブルが起きた場合も算定根拠の説明は事業者においてなされるべきです。最高裁判決では、事実上の推定が働く余地があるとしても、基本的には、消費者が立証責任を負うものと判断しました。しかし、「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」はその事業者に固有の事情であり、立証のために必要な資料は主として事業者が保有していることから、裁判や消費生活相談においては、消費者による「平均的な損害の額」の立証が困難な場合がほとんどであると考えられます。

その対応策の一つとしては、法律上の推定規定を設けることによってその立証の困難を緩和することが考えられます。法律上の推定については、そのように推定することが経験則によっても支えられるべきものと考えられることから、「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」を推定する前提となる事実関係としては、当該事業者と同種の事業者であって、かつ事業の内容が類似することが認められる事業者についての平均的な損害の額とすることなどが議論されたと承知しています。

今回の報告書では、消費者が「事業の内容が類似する事業者に生ずべき平均的な損害の額」を立証した場合には、その額が「当該事業者の生ずべき平均的な損害の額」と推定される旨の規定を設けるとのまとめがなされましたが、それでもなお、判断が明確に行われるような類似する事業者を選定し、根拠資料提供を受けることは消費者にとって容易ではありません。「平均的な損害の額」についての立証責任は事業者が負うべきであるとすべきと考えますが、次善の策としては立証における事業者側の情報提供義務を規定すべきと考えます。

以上

(古賀 真子)

 

 

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