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予防接種ネット・de・講座 その24 子宮頸がんワクチン禍訴訟~「それでも受けますか?予防接種」で伝えきれなかたことを白木博次博士の著書から考える~被害者へのバッシングは許されない

コンシューマネット・ジャパン(CNJ)では、予防接種ネット・de・講座として、これまで23回予防接種問題について連載してきました。

冒される日本人の脳 白木博次 藤原書店 化学物質等被害訴訟を考える必読書

冒される日本人の脳
白木博次 藤原書店
化学物質等被害訴訟を考える必読書

2016年3月11日、子宮頸がんワクチンの導入から被害の経緯を振り返りながら、予防接種被害を起こさないためには何が必要なのかを考えるために、ブックレット「それでも受けますか?予防接種~知っておきたい副作用と救済制度のこと」を出版しました。

新刊ブックレット それでも受けますか?予防接種~知っておきたい副作用と救済のこと

被害者、被害者救済活動に取り組んできた方だけでなく、医師や自治体窓口の方、厚労省のOBのかたにも、副作用被害の歴史と予防接種の現状の問題を考えるための資料としてまとめられたものとして評価していただきました。

この本は予防接種禍東京裁判の被害者や支援された弁護士さんの意思を受けた自由人権協会の関連NPOの海野人権基金のご支援をうけて上梓したものですが、代表の弁護士である更田義彦さんから「本書が、広く普及し、副作用と救済制度についての理解が進むことを念願しています。それにしても、予防接種と副作用の因果関係について、科学的な研究がなぜ進められないのでしょうか。よく存じませんが、いろいろな要因がありそうです。」との感想をいただきました。

2016年3月、国と責任を真っ向から否定する製薬会社を相手取り提訴の準備が進められていると報道されました。2016年3月には子宮頸がんHPVワクチン薬害訴訟弁護団が結成され、2016年6月以降を目途に全国での集団訴訟が予定されています。訴訟提起が困難であっても不可避であることについては、ブックレットでも述べましたが、訴訟に関しては被害者へのバッシングともとれる意見がネット上散見されます。

今回は、子宮頸がんワクチンを再開すべきでない理由とともに、訴訟の鍵を握る因果関係の立証について、水俣病、スモン、予防接種禍訴訟で原告側証人として活躍され、予防接種因果関係について、「白木4原則」を打ち立てた白木博士の書籍をご紹介し、薬、ワクチン、化学物質による被害と因果関係問題について、過去の予防接種禍がどう因果関係立証の壁を克服したのか考えてみたいと思います。

子宮頸がんワクチン問題とは

これまでも、HPでお知らせしてきましたが、子宮頸がんワクチンは、2010年11月に子宮頸がん等ワクチン接種緊急接種促進事業により事業接種(実質は任意接種)としてはじめられ、2013年4月1日に定期接種化されたものの、わずか2か月半で積極的勧奨中止となり現在に至っています。

全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会や自治体議員や教員による取り組み、民間の研究者による治療や原因究明への努力は、国の救済に向けた動きを促してきたものの、国は未だに因果関係を認めず、相談体制や協力医療機関の設置など小手先の対応に終始しています。子宮頸がんワクチンについては、医療関係者からも「推進姿勢を疑問視する」との強い声がある一方で、産婦人科学会をはじめ、一刻も早い再開の主張もされています。まずは、接種再開への主張の問題点を考えてみたいと思います。

子宮頸がんワクチンは必要か 副作用の激烈さだけではない、中止すべき4つの理由

1 市民の声が届かない、非民主的な予防接種行政に根本的な問題点

2013 年 3 月に「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」が設立され、その後各地に支部が広がりました。学習会や院内集会、国への要請やメーカーへの抗議活動など、薬害オンブズパースン会議や薬害対策弁護士連絡会による各地の被害者の聞き取り調査、講演会、ジャーナリスト等による本の出版などが行われるようになりました。養護教員が独自に被害者への支援をはじめたところもありました。

複数の自治体では、独自にこのワクチンを疑問視し、早い段階から定期接種化中止の決議があげられました。自治体が加入した損保ジャパン等おもな引き受け会社による保険は国の因果関係の認定がないと適用されないため、全く役に立たないものでした。そこで、地方議員の取り組みなどにより、自治体独自の救済(医療費の支援)も始められました。救済のための追跡調査の要請や、被害者の声を直接大臣や国会議員に届けるための集会などが幾度となく行われました。しかし、ほとんど受ける人がいなくなった現在でも、定期接種として中止されることなく存在し、再開が求められています。市民の声が届かない。だれのための接種なのか。予防接種政策には大いに疑問があります。

2 因果関係を認めないで救済する姿勢をみせるという欺瞞

被害者の声を無視できない厚労省は、頑なに因果関係を認めない一方で、2015年9月17日に、副反応を検討する審議会の合同開催の委員であり、疾病・傷害認定審査会感染症・予防接種審査分科会(分科会長五十嵐隆、稲松孝思、岡部信彦、多屋馨子(敬称略))連名で、「ワクチン接種後に生じた症状に関する今後の救済に対する意見」をだしました。ここでの結論は、因果関係は認めないまま、ある程度の救済は行うという中途半端なものでした。

その内容は、1.患者とのていねいな個別交渉で対応する、2.入院以外にも医療費、医療手当を払う(接種を受けた時期が定期接種化(2013年 4 月)の前か後かで救済範囲に差があるのを改善し、定期接種化前では入院相当しか出なかった医療費と医療手当(月額 34,000~36,000 円)を、定期接種化後と同じように通院でも出す)、3.患者の治療のために患者からの研究への協力を得やすくする仕組みを検討する(因果関係が否定された場合でも、治療が必要な人には研究に協力してもらうとの名目で支援金を出す)、4.協力医療機関が全都道府県に整備されたが、患者に適切な治療ができるよう、更に診療の質の充実を図る、5患者の学習支援や教育現場との連携等、患者の生活を支えるための相談体制を拡充する、というものでした。翌9月18日から疾病・障害認定審査会感染症・予防接種分科会(認定部会)ではHPVワクチンの審査が始められました。しかし、申請自体が多くない中、しかも定期接種前の接種が大半であることから、もともと被害者を絞っておこなう審査制度は真の被害者の救済のための審査とは程遠いものです。

そもそも、政府の予防接種関連の審議会は、ワクチンの導入から、評価、救済にいたるまで、一貫してワクチン擁護の立場を取っており、その委員構成は利益相反を強く疑わせるものです。子宮頸がんワクチンも最初にワクチンの医学的な評価をするためのファクトシート作成にあたって、グラクソスミス・クライン(GSK) 社員の論文が重用されたり、関係委員がメーカーからの寄付金を受け取っていたことなども明らかにされていますが、このようなことは氷山の一角です。副反応の検討すべき審議会(厚生科学審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会と予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の合同開催、以下合同開催)の委員長が、メーカーから多額の寄付金を受け取っていて、合同開催の審議規程により参加できないことも多々あります。しかし実際はその委員の知見が必要として発言を許し、審議会の議論をリードしています。しかも、その委員が最終的な個々の副反応を審査する認定部会の部会長をしているのがこの国の実態です。信頼できる審議会体制とは到底言えないところで、実質的な予防接種行政を決定づける審議会は国の責任回避のためのノウハウを蓄積しているとしか思えません。

それ以上に問題なのは、こうした失政が明らかになると審議会内の一部委員が「意見」を出して小手先の救済の対応(ポーズ)をとることです。国としては訴訟回避しながら被害者の声にこたえるための苦肉の策かもしれませんが、責任をあいまいにする姿勢は許されるものではありません。国の責任を検証しないままの再開などあってはならないことです。

3 副作用被害を認めないことによる二重三重の被害をどう救済するのか

子宮頸がんワクチンは導入当初から、接種直後の失神やその後の激しい疼痛をはじめ ADEMやギランバレー症候群、記憶障害、認知症など深刻な神経障害が多発しました。「うけるのは当たり前」という空気の中で接種し、原因がわからず、多くの病院を転々とした少女たちがどんなに訴えても、国も診察する医師も因果関係を否定し、診療ハラスメントといえるような状況が起きました。こうした状況への反省からか、日本医師会と日本医師学会は2015年8月19日には「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」を出しています。いかに被害者への対応がひどかったか推測できる内容です。実際に、良いものと信じ込まされて接種し、受診時に「ワクチンのせいでは」というと診療拒否や家族を含めた人格否定をされたという多くの事例があります。

第 15 回の合同開催では、「患者の学習支援や教育現場との連携等、患者の生活を支えるための、相談体制を拡充するべきである」と意見がだされ、厚生労働省と文部科学省が連携し、子宮頸がん予防ワクチン接種後に生じた方からの相談に一元的に対応する相談窓口を各都道府県等に設置する事となりました。

2015 年 11 月 2 日、各都道府県の衛生局および教育局に相談窓口設置に係る説明会が行われました。相談窓口での対応の留意点として、教育部局に設置する相談窓口は、教育に関する事項に対応すること、内容によって衛生局部と密に連携をとって柔軟に対応すること。特に通学、学習、進級、・進学に関する相談等に対して、個々の事情に応じて所属学校に連絡をとる等により、指導・助言に努めること、とされています。しかし、この対策も遅きに失したと言わざるを得ません。

遡及的に公的な支援が必要

子宮頸がんワクチン副反応による症状は、各個人によって症状の出る時期、程度、持続時間、天候や月経周期によって変化し、時間的な経過で症状は重層化しています。これらの症状は、日常生活活動に大きな影響を与え、学校生活が継続できず、将来の展望も持てない状況に至っています。子宮頸がんワクチンを接種した対象者は、12 歳から 16 歳の女子生徒です。すでに 17 歳から成人となっています。過酷な時期を過ごした子どもや家族も多くいます。大切な時期に取り返しのつかない教育の機会を奪われた子どもたちには遡及的に公的な支援と将来にわたる就業の支援等が必要です。今現在の治療や援助が必要なことは言うまでもありませんが、損害を真に填補するためには「因果関係」を認め、将来の補償も含めて国や製薬会社の責任を明確にすることが必須であり、小手先の対策に終始する国に対しては訴訟という途しか考えられないと思います。

4 被害実態はいまだに明らかではない~法的救済体制なし、検証なしの再開はありえない

「第 15 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成 27年度第 4 回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」(合同開催:2015 年 9 月 17 日)で、厚労省は「子宮頸がんワクチン副反応報告」を提出しました。この中で、これまで副反応報告で集積した 2,584 人を副反応疑い例とした上で、発症日・転帰が確認できたものが 1,739 人、うち未回復者を 186 人と発表していますが、この数はあまりにも少ないとの批判があります。この数字が独り歩きし、被害を矮小化することが危惧されています。

一方、全国子宮頸がん被害者連絡会に寄せられた 400 名ちかい被害報告では1.被害者は全国におよぶこと(とりわけ首都圏に多い)、2.接種年齢は 13 歳をピークに 12、14、15 歳が大半を占めること、3.20 代~45 歳までの接種者もいます。初交以後の接種も含め、このワクチンの有効性についての正確な情報提供がされないままに接種が推進されていたこと、などがわかります。2016年3月の提訴会見以後、被害者登録数は530件余になったとされています。潜在的な被害者数は計り知れません。

子宮頸がんワクチンは定期接種前の被害者が大半を占めます。ですから定期接種以外の PMDA での審査も詳しく公表される必要があります。公表されることで、同じような症状に悩むより多くの全国の被害者が被害に気が付くことが必要です。入院レベルでないものも救済するとしていますが、入院できずにさまざまな不調を訴えたり、学校に通えなくなっている多くの子どもがいます。接種から数年たち、患者記録の保存もむずかしくなってきています。症状が改善している例もありますが、症状によってはこうした救済の土俵にすら上がれない人も多くいます。また、副反応報告に挙げられた人のほかの被害者への救済の告知が今後きちんとされるのか、中長期的に審査対象はどう選択されるのか全く不透明です。

被害者のための救済体制の整備もされていません。厚労大臣は超法規的な救済も視野に入れるとの発言をして、予防接種リサーチセンターで、わずかばかりの救済事業を始めましたが、その手続きも煩雑で被害者を苦しめています。

因果関係を認めた上で、法的裏付けのある公的な救済体制を求めての提訴は当然の権利です。提訴にネガティブな意見がネット上散見されますが、再発防止の観点から、国は真摯に訴えを受け、検証委員会を設置し、第三者機関として導入の経緯から再発防止の観点から、国自らその姿勢を問うことがなければなりません。それをしないで、接種再開など許されるはずもありません。

被害は明らかなのになぜ被害者へのバッシング?過去の裁判に学ぶべきこと

1994年に予防接種禍4大訴訟の敗訴をうけた国は、予防接種法を改正しました。予防接種は集団社会防衛から個人の健康を守るため個別接種となり、接種は基本的に義務ではなくなりました。どのようなワクチンも基本的には、接種を受ける側が選択できることが保障されたわけです。

しかし、その後の制度設計そのものが、経済成長戦略の観点から、ワクチンの増加による市場規模の急速な拡大と、り患するリスクの少ない疾病についても、ワクチンで防げるものは防ぐVPD(Vaccine Preventable Diseases)という考えのもと、国と業界、医師界の太宗、一部マスコミをあげての接種推進政策が続けられている点に根本的な問題があります。うつらない病気、他に安全で有効かつ経済合理性ある対策があることを情報提供し、副作用被害防止のために必要な政策へシフトすることが必要ですが、子宮頸がんワクチンはまさに、WHOが推奨しているとか、世界では日本のような被害はない、最近では、ワクチン接種をやめたままでいると将来的に日本は、子宮頸がん対策で世界の遅れをとるなどの意見があり、被害者を詐病や思春期の一過性の症状扱いしたり、提訴を「不幸なこと」などと揶揄したりする主張がされています。しかし、実際にはがん予防効果は限定的であり、「がん予防ワクチン」というネーミング自体おかしいこと、世界的にも深刻な副作用被害が多発していること(注1)などが明らかになっています。

こうしたネット上での被害者へのバッシング記事は、厚労省が因果関係を認めないことに起因すると考えられますが、そもそも因果関係とはなんでしょう。因果関係がなくても「一応の救済をする」とか、「無過失補償の制度を持ち込むべき」との主張を、予防接種4大訴訟の医学的観点から因果関係の立証を行い、白木4原則をたてた、白木博次博士の著作「冒される日本人の脳」(藤原書店)から考えてみます。

白木4原則はどうしてうまれた?

白木博次博士は、優れた臨床神経病理学者であり、水俣病、スモン、予防接種の被害者側の証人として、公害・薬害事件に大いなる寄与をされました。化学物質とそれよる被害の因果関係の立証は極めて困難です。白木博士は、終始、厳密細心に自然科学の手続きを踏みながら、同時にそのなかで、(物)の局面での「客観性」に固執して魂の訴え(自覚症状など)を軽視する科学の手法の本質的な限界に警鐘を鳴らしながら、今日の科学技術文明は、自然には存在しない人工化学物質の多用による速効性の追求と、反面、そのマイナスの副作用の顕在化を特色としていて、水俣病やスモンなどはまさにその象徴としています。

その上で、白木博士は、ワクチン禍の医学的解明は、ほとんど不可能に近いとみられた。・・ワクチン禍の総論または原則論を組み立てるのに参考になる医学関係のわが国の文献は全くないに等しいということで自分で考えて行くしかなかった。として因果関係の立証のための白木4原則を考えだしたのです。ワクチン禍の総論として、4つの原則論とは、

①ワクチン接種と予防接種事故とが、時間的、空間的に密接していること、

②他に原因となるべきものが考えられないこと、

③副反応とその後遺症(折れ曲がり)が原則として質量的に強烈であること、

④事故発生のメカニズムが、実験・病理・臨床などの観点からみて、科学的・学問的に実証性や妥当性があること、の4つを組み合わせて、その蓋然性の高低の視点から、ワクチン禍の有無を考えることを提唱しました。そして、現にある被害は動物実験のように条件づけできないので、あるがままの状態を受け取る経験科学ととらえ、4つの原則論の組み合わせによって蓋然性が60%以上の確率によりワクチン禍の存在を肯定すべきとし、これが全国の裁判所に受け入れられたのでした。(その後の因果関係判定のためのルンバール事件も同様のロジックである(注2))

白木博士の卓越した点は、東京裁判以外の全患者を診察、CT、MRI、PET、脳波などの特殊検査を加味し、主として母親と近親者の聞き取り調査も行い、死亡した患者の剖検所見も参考として、その実態について総合的に把握することを怠たらずにされたことです。 その上で、因果関係の立証は、動物実験のように条件づけできないので、あるがままの状態を受け取る経験科学として、4つの原則論の組み合わせによって蓋然性が60%以上の確率によりワクチン禍の存在を肯定させたことです。(注3)

こうした化学物質による被害の因果関係の立証については、経験医学、社会医学の観点から解決されるべきだと提唱されていると考えられます。

被害者や被害実態を見ないで因果関係をあいまいにしようとするバッシングの底浅さ

ネット等で被害者へのバッシングをしている論調に、「国際的にはHPVワクチンの有用性・安全性は確立されています。」との前提のもとに、「因果関係がないことは国際的にも明らか」とか、「米国疾病予防管理センター(CDC)や欧州医薬品庁(EMA)もHPVワクチンの安全声明を出し、「これまでの科学的検討から、HPVワクチンが複合性局所疼痛症候群(CRPS)や起立性調節障害(POTS)を引き起こすことを支持する知見はない」と断言している」とし、(被害者の副作用を)「日本で年間約3000人の命を奪う子宮頚がんの脅威と比べて、ゼロではないとしても如何に小さい「副反応」であるはあきらか」としたうえで、(私の目的は)「彼女たちを「科学的ではない」と批判することにはありません。彼女たちは「HPVワクチン接種後に、それぞれの後遺症を受けた」被害者です。科学的方法とは、A→Bの順番に起こったことをそのまま「因果関係」と認めることではありません。適切な証拠、明確な結論、証拠と結論を結ぶ推論過程、並びに事象の再現性。このような条件を揃えて、科学者はある事象を(少なくともその時点での)科学的事実と捉えます」としています。「(原告となることを決めた「被害者」12人を批判する気はありません。「因果関係」が科学的に認められようと認められなかろうと、彼女たちが「被害」を受けたことは事実であり、それに対して「無過失補償」を行うことは必要だと考えています。最終的に因果関係が明確に否定される(あるいは「被害者」たちが納得する)日が来たら、「無過失補償」ではなく、通常のCRPSやPOTSに対する保険診療のみで対応しても良いでしょうが、まだ原告たちが納得できる社会状況にはないと考えています。)としています。(「」内2016年4月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会寄稿文より抜粋)

白木博士が渾身の力を込めた因果関係の立証と予防裁判の緻密な記録に比して、「日本に科学を人道を!」としながら、いかにも底浅いと言わざるを得ない論調です。因果関係がはっきりしないでも補償がされれば被害者は救われるかもしれません。訴訟という多大なる時間と費用を考えた場合に、無過失補償という立法的解決は有用な選択肢であることも論を待たないでしょう。しかし、「気の毒だから無過失補償」という考えは、真の意味での原因究明や責任所在をあいまいにするものであり、こうした失政を糊塗し擁護するだけでなく、将来にわたって化学物質等における被害救済にとってマイナスの影響があり、いつまでたっても薬害や予防接種被害を繰り返すことになるということも考える必要があります。なによりも、被害者はなぜ、このようになったのか、その原因を知りたい、そしてもとの状態にもどしてほしいというのは当然の権利というべきものです(*無過失補償と損害賠償については追って掲載予定。無過失補償の立法そのものについては賛成するものです)

予防接種問題についての白木博士の「遺言」

ワクチンがどう改良されても絶対になくならない事実

予防接種訴訟や被害について、白木博士は、著書でこう述べられています。

「ワクチンを製造・管理する人が自らいわれているように、ワクチンは所詮「毒をもって毒を制する必要悪]であって、「たとえ防御抗原のみの純粋な製剤が開発されたとしても、それ自体は抗原であるから、アレルギー反応による神経系の傷害を惹起する可能性を避けられないであろう。(中略)

正と負の効果(アレルギー反応とワクチン禍)とは常に表裏一体をなしている。特に神経障害のように、少数であっても犠牲者が出てしまうことを、今後いかにワクチンを改良しようとも避けて通ることができないのは、理論上または経験上からも明白である。またもし副作用を避けるために本来の毒性を薄めてしまうなら、その防御効果は全く期待できないことになる。しかも神経細胞は容易に失われやすい事実に加えて、失われた神経細胞は二度と再生されることはなく、後遺症として永久かつ不可逆性に残ってしまうという厳然たる事実がそこにある。これが神経組織が他の臓器や組織と違う最大の特徴をなしている。

残された2つの問題ほか

①弱毒化したワクチンが強毒化する点についての症例は述べなかったが、これはワクチン自体の問題か、それとも接種を受ける個体側の問題か、それは大きな学問的な問題として未解決。いずれ実現するであろう遺伝子組み換えワクチンによる安全性について、特に大きな問題になるであろう。遺伝子組み換えの基礎的な部分が完全にわかっていないのではないだろうか。

②ワクチン禍には第1から第4アレルギー型まであり、それぞれ相互の移行型もあり免疫学の領域から見ても未知の部分が数多く残っている。また、遅延型アレルギーの重大な問題が残っている。4原則目は、医学のうちの特に免疫学のうちで、未知の領域が数多く残っている。今後のワクチンの改良、強制接種の廃止、その他によって、将来の問題としてクローズアップされるのは、国賠がそのまま適用できなくなるというのは思い過ごしか。

どのようにワクチンが改良され、被害者の数は減ってこようと、ワクチン禍がなくなってしまうことは考えられないとすれば、今後のワクチン禍訴訟は、どのような総論・原則論に基づき、国の責任論はどのようなものになるのかの問題を今からでも真剣にかんがえておかなければならない。」

白木博士が、1998年12月に危惧されていた見解は、子宮頸がんワクチン問題を見据えていたかのような重みがあります。官民問わず、今後の予防接種被害支援に関わる多くの方のぜひ参考にしてほしいと思います。

(古賀 真子)


(注1)*日本医事新報:ヒトパピロマーウイルス・ワクチン関連神経免疫異常症候群の臨床的総括と病理の考察。

*第56回日本社会医学会一般演題 2015年7月25日久留米大学 海外におけるHPVワクチン副反応被害報告と補償・訴訟の実態(第3報)健和会臨床・社会薬学研究所(片平洌彦、榎宏朗)。

(注2)訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、この判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。

(1975年10月24日判例時報792号、793号)

(注3)人体を対象とする医学、特に臨床医学または人体病理学は、あらかじめ食・住その他の諸条件を設定でき、また一定化し、単純化、純粋な動物の種族を選択する動物実験とは明らかに異なっており (中略) いわば、経験科学のカテゴリーに属している医学に他ならないことをまず強調しておきたい。したがって、人体におけるワクチン接種による、特に精神・神経学的副作用はそれ自体、「一点の疑義もゆるされない自然科学」にもとづくものではなく、「高度の蓋然性」を証明していく科学分野のほかならない。

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