特定商取引法と消費者契約法の改正法案が可決成立
悪質商法は時代とともに手を変え品を変えて消費者を狙ってきます。消費者保護に資する法律として消費者契約法、製造物責任法、特定商取引法などがあります。2016年5月24日、特定商取引法と消費者契約法の改正法が可決成立しました。
*参議院本会議において「特定商取引に関する法律の一部を改正する法律案」、「消費者契約法の一部を改正する法律案」の2つの法案を無修正で、全会一致で可決されました。
消費者庁ウェブサイト「国会法案」
http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/
2016年1月22日、安部総理は施政方針演説で、「高齢者を狙った悪質商法には、規制を強化し、消費者の迅速な救済を図ります。」と表明しました。これら2つの法律の改正は、この方針を推進していく上で不可欠なものです。
1.特定商取引法について
特定商取引法については、CNJも以前から、他団体とともに改正や特に迷惑勧誘の中止にむけての運動を行ってきました。
今回改正された、特定商取引法の一部を改正する法律案は、近年の高齢化社会の進展、悪質事業者の手口の巧妙化等の社会経済情勢の変化に対応するため、①業務停止を命ぜられた法人の役員等に対して、停止の範囲内の業務について新たに業務を開始することを禁止することや、②所在不明の違反事業者に、公示送達による処分を可能とすること、③不実告知等に対する法人への罰金を300万円以下から1億円以下に引き上げる等刑事罰全般の抜本的強化を実施すること等の措置を盛り込んでいます。
④いわゆる指定権利については、役務の提供を受ける権利以外の一定の権利(社債や未公開株等)を新たに規制対象として追加した上で、「特定権利」と位置づけ、その販売を法の規制対象とされました。(以下参照)
特定権利に関する条文の抜粋
第2条
4 この章並びに第五十八条の十九及び第六十七条第一項において「特定権利」とは、次に掲げる権利をいう。
一 施設を利用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであつて政令で定めるもの
二 社債その他の金銭債権
三 株式会社の株式、合同会社、合名会社若しくは合資会社の社員の持分若しくはその他の社団法人の社員権又は外国法人の社員権でこれらの権利の性質を有するもの
⑤さらに処分事業者(業務停止命令を受けた悪質事業者を想定)に対して消費者利益を保護するために必要な措置を指示できることとされました。
第7条 主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第三条、第三条の二第二項若しくは第四条から第六条までの規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、当該違反又は当該行為の是正のための措置、購入者又は役務の提供を受ける者の利益の保護を図るための措置その他の必要な措置をとるべきことを指示することができる。
2.消費者契約法について
消費者契約法の見直しは、高齢化の進展を始めとした社会経済情勢の変化や法施行後の裁判例等を踏まえて行われるものです。消費者契約法の契約締結過程及び契約条項に関する規律については、今回、平成13年の法施行後初めてとなる本格的な見直しが行われました。
今回の法律案においては、
①過量な内容の消費者契約の取消し(第4条第4項)
②重要事項の範囲の拡大(消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するため通常必要と判断される事情を追加;第4条第5項第3号)
③取消権の短期の行使期間の伸長(1年へ)
④事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項の無効(第8条の2)
⑤第10条の例示等(消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項)の追加などの改正が盛り込まれています。
これらの法律案は、両者あいまって高齢化社会の進展や悪質事業者の手口の巧妙化に対応するため、必要な法整備を行うものであり、高齢者を始めとした消費者被害の防止・救済を図るために重要なものです。今後とも消費者保護の推進のための運動を強めていきましょう。