特定商取引法、消費者契約法の早期成立を求める院内集会・シンポジウムにご参加を
高齢化の進展や悪質事業者の手口の巧妙化などにより、高齢者の消費生活相談件数は5年間で1.6倍に増えています。また、情報通信技術の発達や消費の国際化などにより、対応困難なタイプの消費者相談も急増しています。
2016年3月4日、「特定商取引に関する法律の一部を改正する法律案」、「消費者契約法の一部を改正する法律案」の2つの法案が閣議決定され、第190回国会(常会)に閣法44、閣法45として衆議院に提出されました。
http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/
2016年1月22日、安倍内閣総理大臣は施政方針演説で、「高齢者を狙った悪質商法には、規制を強化し、消費者の迅速な救済を図ります。」と表明しましたが、今回の、両法案は、この方針を推進していく上で不可欠なものです。
それぞれの法案の改正点は以下の通りです。
1.特定商取引法
特定商取引法の一部を改正する法律案については、近年の高齢化社会の進展、悪質事業者の手口の巧妙化等の社会経済情勢の変化に対応するため、
①業務停止を命ぜられた法人の役員等に対して、停止の範囲内の業務について新たに業務を開始することを禁止すること。業務停止命令の期間が1年から2年に伸長されます。
②所在不明の違反事業者に、公示送達による処分を可能とすること
③不実告知等に対する法人への罰金を300 万円以下から1億円以下に引き上げる等刑事罰全般の抜本的強化を実施すること等の措置が盛り込まれています。
また、
④いわゆる指定権利については、役務の提供を受ける権利以外の一定の権利(社債や未公開株等)を新たに規制対象として追加した上で、「特定権利」と位置づけられ、その販売が法の規制対象とされました。
特定権利に関する条文の抜粋
第2条
4 この章並びに第五十八条の十九及び第六十七条第一項において「特定権利」とは、次に掲げる権利をいう。
一 施設を利用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであつて政令で定めるもの
二 社債その他の金銭債権
三 株式会社の株式、合同会社、合名会社若しくは合資会社の社員の持分若しくはその他の社団法人の社員権又は外国法人の社員権でこれらの権利の性質を有するもの
さらに、
⑤処分事業者(業務停止命令を受けた悪質事業者を想定)に対して消費者利益を保護するために必要な措置を指示できることとされています。
第7条 主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第三条、第三条の二第二項若しくは第四条から第六条までの規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、当該違反又は当該行為の是正のための措置、購入者又は役務の提供を受ける者の利益の保護を図るための措置その他の必要な措置をとるべきことを指示することができる。
2.消費者契約法
消費者契約法の見直しについては、高齢化の進展を始めとした社会経済情勢の変化や法施行後の裁判例等を踏まえて行うものです。消費者契約法の契約締結過程及び契約条項に関する規律については、今回、2011年の法施行後初めの本格的な見直しを行うものです。
今回の法律案においては、
①過量な内容の消費者契約の取消権の新設(第4条第4項)
(例:事業者が特別な事情がないことを知りながら、高齢者等に必要以上に商品を大量購入させるなど)
②不実告知の重要事項の範囲の拡大(消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するため通常必要と判断される事情の追加;第4条第5項第3号)現行法では取消の対象外だった範囲である「契約締結の動機にかかわる事項」にも取消権が認められます
(例:「床下にシロアリがいる」等の虚偽の事実を告げてリフォーム工事の契約をさせるなど)。
③取消権の短期の行使期間の伸長(6か月から1年へ)
④事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項の無効(第8条の2)
⑤第10 条の例示等(消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項)の追加などの改正が盛り込まれています。
この2つの法律案は、両者あいまって高齢化社会の進展や悪質事業者の手口の巧妙化に対応するため、必要な法整備を行うものです。高齢者を始めとした消費者被害の防止・救済を図るために重要なものでありますので、早期の成立が必要です。
このほかにも、先送りされましたが、弁護士会や消費者団体では以下のような検討を求めています。
2.早期にさらなる検討を求める事項
なお、今回の両法改正にあたっては、いくつかの論点が先送りとなりました。社会経済状況の変化による消費者契約被害が後を絶たない現状をかんがみ、以下の論点等について、すみやかに消費者委員会専門調査会を再開し、消費生活相談の動向分析や消費者・消費者団体の声を踏まえつつ、さらなる検討に入ることを求めます。
<消費者契約法における検討すべき論点>
○合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型(認知症高齢者へのつけこみ型勧誘行為など、過量販売以外の類型)
○不当条項の類型の追加
○「勧誘」要件の在り方
○不利益事実の不告知
○消費者を困惑させる事業者の不当な行為の類型(威迫や執拗な電話勧誘)の追加
○第三者による不当勧誘
○違約金の定めが無効となる範囲の基準となる「平均的な損害の額」の立証責任の在り方
○契約条項が不明確な場合に条項の使用者に不利な解釈を採用する「条項使用者不利の原則」の要件や適用範囲
<特定商取引法における検討すべき論点>
○勧誘規制の在り方
○インターネット取引をはじめとする通信販売の虚偽・誇大広告に関する契約取消権付与
○国及び都道府県の執行体制の強化に向けた連携措置の在り方
<その他の制度整備の論点>
○行政による悪質事業者の違法収益のはく奪に向けた制度的検討
(古賀)
早期成立を求める院内集会が開催されます。ご参加ください。
2016年4月12日(火)
時間:16:00~17:00
開催場所:衆議院第二議員会館
第一会議室
主催:一般社団法人 全国消費者団体連絡会
※15:30から衆議院第二議員会館入り口で通行証の配布を始めます。
参加費:無料(要・事前申込)
院内集会
プログラム(予定)
- 改正法案説明
- 国会議員からのご発言
- 参加団体からの発言
(問い合わせ先)
一般社団法人 全国消費者団体連絡会
Tel: 03-5216-6024
Fax: 03-5216-6036
消費者契約法・特定商取引法改正に関するシンポジウムのご案内
【日時】 2016年(平成28年)4月12日(火)午後6時から午後8時まで
【場所】 弁護士会館12階 講堂
【内容】 基調報告(法律改正の状況‐到達点と残された課題について)
①消費者契約法改正について
②特定商取引法改正について
パネルディスカッション
残された課題の実現の必要性と獲得に向けた運動の展開について
【主催】 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会把握
【共催(予定)】 日本弁護士連合会・関東弁護士会連合会
【申込み】先着順(事前申込み)
【お問い合わせ先】
第二東京弁護士会 人権課 TEL:03-3581-2257