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消費者庁移転問題を考える その4 河野大臣に質問状を提出~成長戦略は消費者行政軽視そのもの!

2016年1月13日、安倍内閣は、地方創生策の一環として検討している政府機関の地方移転をめぐり、消費者庁を移転対象とする方針を固めたとされています。移転先は誘致活動を展開している徳島県とする方向で、具体的な移転規模や時期などは4月以降に調整する考えとの報道がされました。報道では、移転に反対する消費者団体の主張などは一切されていません。「寝耳に水」、半分冗談と思われていた消費者庁移転問題について、2016年1月14日、院内集会が開催される予定です。

CNJでは、河野太郎大臣あてに、質問状を提出しました。


2016年1月13日

内閣府特命担当大臣 河野 太郎 様

 

特定非営利活動法人コンシューマネット・ジャパン理事長 古賀 真子

 

消費者庁・消費者委員会・国民生活センターの徳島県移転構想に対する質問書

 

冠省 日頃のご活躍に感謝お礼申し上げます。特定非営利活動法人コンシューマネット・ジャパンは他団体とともに消費者問題に取り組んでいる消費者団体です。

早速ですが、消費者庁、消費者委員会、国民生活センター(消費者庁等といいます)移転問題については、全国のほとんどの消費者団体が「大反対」の意思表明や大規模な院内集会を含む緊急集会等を開催するなか、貴職におかれましては、終始移転に積極的であるとされています。

2016年1月12日の記者会見におかれましても、4月からの移転を想定し、3月からは国民生活センター(相模原)の行っている商品テストなどを実験的に徳島県で開始されるとされており、「時間をかけながら極めて前向きに、移転による課題と対応(問題点のクリア)を検討していく」と移転は不可避であるかのような発言をされています。

全国各地の消費者団体等は、消費者庁創設の趣旨、経緯から、関連省庁との連携等の観点を含め、移転には強い反対の意思を表明しているわけですが、このことは、当該省庁内部だけでなく関係省庁をはじめ、関連審議会の委員、消費者団体の意見等もていねいに聞きとり、消費者庁、消費者委員会、国民生活センターの職務・職責に照らしながら、移転によるメリットとリスクをきめ細かく判断する必要があることを意味し、貴職のいわれる、「課題の抽出と対応」は、密室的判断でなされるべきものでないと考えます。

消費者庁の仕事の中身を知るには消費者基本計画が大きな手掛かりとなります。消費者基本計画は消費者基本法に基づき策定され、来年度の基本計画を実施するための改訂が3月中旬には決定されます。これに対するパブリックコメントも募集中ですが、移転にからんで、機能がどう変わるのかは消費者問題に関わるものにとっての一大関心事であり、パブリックコメントへの意見提出にも影響します。

ご多忙中恐縮ですが、下記の質問にお答えいただきますようお願いいたします。

 

 

1 「商品テスト」は、消費者だけでなく事業者にとっても、公平で信頼できる公的機関が原因究明を行い、迅速に対応するために必須の消費者保護アイテムです。商品テスト機関が徳島県に移転することによって、どのようなメリット、デメリットを想定されているのか教えてください。また、商品テストの重要性に鑑み、相模原以外にも徳島にも商品テスト機関をおく(併設)ということは想定されていらっしゃいますか。

2 移転による課題と対応が検証されたうえで、全面移転をするのか、部門別の移転になるのかを考えられるのでしょうか。商品テスト機関を先発移転させてその後なし崩し的に移転をすすめていくことは、行政の姿勢としては極めて無計画かつ無責任であると考えます。消費者基本計画に照らし、多くの団体が主張している、行政としての一体化、機能低下については具体的にはどのように考えられていらっしゃいますか。

3 貴職は、「時間をかけながら極めて前向きに、移転による課題と対応(問題点のクリア)を検討していく」と発言されていますが、この課題の抽出と対応は、どのセクションで議論されるのでしょうか。すでに明らかになっている課題や対応の検討過程は公開の場で議論されるべきと考えますが、そのような検討の場は用意されているのでしょうか。

4 貴職は、消費者の権利の尊重、消費者の自立の支援、安心・安全で豊かな消費生活の実現などにかかわる政策を所管し、防災、規制改革、食品の安全性、食品の健康への影響評価などにかかわる政策を所管する、消費者及び食品安全担当の「特命担当大臣」です(内閣設置法第九条)。内閣設置法において義務づけられた必置大臣である上、国家公安委員会委員長、行政改革担当、国家公務員制度等も兼任されています。国務大臣として、また、国会議員としての国民の代表としての職責もおありです。

消費者担当大臣だけを取り上げても、その職域は広範かつ多面的であり、情報や国会機能の集中した東京にあってこそかろうじて全うできるものと考えます。消費者行政の司令塔として、消費者庁等とともに、かならずしも交通の便がよいとはいえない徳島県に、常駐しないまでも頻繁に往復するということは、大臣としての職責を果たすうえで大きな負担となるだけでなく、国民にとっても迅速な対応について危惧せざるを得ませんが、具体的にはどのような対応が可能であるとお考えでしょうか。

5 貴職が、「消費者庁が移転することで、他の省庁や国家機能のバランスのよい地方分権への足掛かりとなるとの信念のもとに移転に前向きだ」といわれている点については一定の理解はできます。しかしながら、内閣設置法第12条で、必置大臣とされた趣旨に鑑みると、「事務の遂行のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることができたり、関係行政機関の長に対し勧告や、勧告に基づいてとった措置について報告を求めることができる」という強い権限は消費者行政に対する内閣の責務の重要性と表裏一体をなすものです。内閣総理大臣に対しても、当該事項について内閣法第6条の規定による措置がとられるよう意見を具申することもできるとされている点からも、貴職に期待される消費者行政のトップとしての国民の期待は貴職のご想像以上のものがあると考えます。このような権限を十分に発揮するためには、関係省庁だけでなく、事業者や消費者団体等とも密に対面での交渉等ができることが必須ではないかと考えます。インターネットやテレビ会議などの方法により代替できるというのであれば、具体的な対応方法を教えてください。

6 消費者庁は消費者関連法や政省令の策定作業に深くかかわっています。消費者委員会との連携はどのようにすべきとお考えでしょうか。関係審議会の委員の人材選定や各省庁のヒヤリング等に支障をきたすことなどはないでしょうか。また、移転した場合、担当部局の職員等においては国会や関係省庁との往来に係る負担等についてはどのようにお考えでしょうか。

7 いうまでもないことですが、消費者政策を支えるのは、国家機関だけでなく、事業者も含めた国民全体です。多方面からの強固な反対を押し切って移転をすすめる以上、建設的で実現可能な抜本的な機関変革を含めた野心的な政策が求められます。貴職における消費者政策がどうあるべきかの基本的なスタンスを、消費者担当大臣としての立場から詳しくお聞かせください。

以上

 

 

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