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回避可能費用算定方法変更に関する、よくある質問と回答(FAQ)

コンシューマネットジャパンCNJ)では、先般回避可能費用算定方法変更に関する意見書」を掲載しました。このなかで、予想される典型的な質問等に対してすでに当方の見解を述べていますが、この「意見書」に関して、よくある質問と回答をさらに詳細な形で以下にまとめてみました。


Q1.今後の制度変更によりインバランス料金はJEPXスポット価格連動となる予定であり、結果としてインバランス料金が現行より安くなることが想定される。これは新規参入に有利であると思われる。インバランス料金の市場連動にコンセンサスがある中で、回避可能費用を議論する時のみ、足下の回避可能費用の上昇だけを理由に市場連動に反対するのは論理的ではないのではないか?

A1.従来のインバランス料金が新規参入抑止的な制度であったこと、罰則的高単価であったことがそもそも問題であった。インバランス料金制度の改善は歓迎であるが、新電力の経営判断として、インバランス対処と電源調達は別物である。両者が非常に密接に関係することは事実であるが、前者は需給管理業務の一部であり、電源調達は全く異なる機能である。

また「意見書」では「回避可能費用の上昇だけを理由」とした反対をしているのではない。反対の第一の理由は、「JEPXスポット価格は電力会社にとっての真の市場価格ではない」ことであり、またJEPXスポット価格はボラタイルであることを指摘している。その中で、仮に回避可能費用が上昇する場合、再エネ発電事業・再エネ小売事業を抑制する結果となることを懸念している。


Q2.回避可能費用の上下自体は国民負担の増減と関係ないことはそのとおりだが、現行の回避可能費用とJEPXスポット価格に値差が生じている現状では、本来あるべき国民負担の水準から増えていることが問題ではないか?

A2.FITによる買取費用総額および事務経費が一定の場合、途中で卸取引所(JEPX)を経由するか否かは、総額としての国民負担に違いをもたらさないと考える。


Q3.買取制度運用WGの議論では、2016年4月1日から全てが市場連動となるわけではなく、既存案件については激変緩和期間を設ける方向性である。よって一定期間、現行の算定方法が維持されるのではないか?

A3.WGで議論されているのは、小売事業者と需要家間の契約だけを見た激変緩和・経過措置である。これは当然に不可欠であるが、これ以外に小売事業者と発電所間の契約を見た激変緩和・経過措置も必要であることを「意見書」では指摘している。なおWGでは、この後者については多くの委員および事務局により否定されている。


Q4.JEPXスポット価格は変動するものであり、スポット価格が高い時は新電力にとって電源調達費用が高くなり損を生じるかもしれないが、低い時はむしろ新電力の儲けになるのではないか?算定方法の変更により新電力が存続できないとする議論は目先だけを見た短絡的な議論ではないか?

A4.JEPXスポット価格が下がる場合、小売価格を改訂させない短期間においてはそのようになると想定される。が、中期的には小売事業者がそれを原資として小売価格を下げることにより消費者利益となることも期待できる。十分に競争的な小売市場であれば、一部小売事業者がレントを獲得できるのは短期間であることが想定される。

なお、「意見書」では既存新電力の存続問題と同時に、今後の新規参入者の喪失を懸念している。新たな参入者が現れない場合、目先だけではない非常に長期的な問題となりうる。


Q5.プレミアム支払前提の電源開発はFIT制度の趣旨ではなく、これは制度的に保証されたものではないのではないか?

A5.承知している。「意見書」ではこれを制度的に保証せよなどという無茶な要望はしていないうえ、FIT電源の需給逼迫が解消されるにつれ、プレミアムは自然に消滅することを想定している。


Q6.FITは広く電力会社にとって中立的であるべきであり、新規参入者・新電力を支援するための制度ではないのではないか?

A6.FITの制度目的はご指摘のとおりである。が、「意見書」にも記したとおり、本来一定期間、新電力を優遇する幅広い非対称規制が必要であると考えている。回避可能費用の算定方法だけで大それたことができるわけではないが、現行制度が一般電気事業者(今後、一電という)と比べ相対的にFIT電源の活用度(構成比率)の高い新電力に有利であるならば、この算定方法を維持することも新電力を支援することに役立つ旨を主張している。新電力総体として競争力を増すことは、電力小売競争の活発化を通じた消費者利益につながることと期待している。

現実的には新規参入者を優遇する他の措置は少ない。そのような他の優遇政策が豊富になった時点で、回避可能費用による優遇を廃止などすればよいと考える。その適切な時期は現在ではない、ということを問題視している。


Q7.回避可能費用算定方法をJEPXスポット価格連動にした場合、回避可能費用が上がることもあれば下がることもある。回避可能費用があたかも必ず上がるような誤解を与えるべきではないのではないか?

A7.全く同意である。「意見書」では慎重に、回避可能費用は上下いずれの方向にも変動しうることを述べている。同時にこの上下変動性(ボラティリティ)が大きいことも問題として指摘している。


Q8.「意見書」の12ページに記されている「FIT定価+プレミアム支払」が、賦課金の抑制・減額に役立つとはどういう意味か?詳しい説明が必要である。

A8.仮想的に非常に単純な、極端な例を挙げて説明する。

日本にFIT再エネ発電所がA発電所1つしかないとする。A発電所はFIT固定単価30円/kWhとして、年間100億kWh発電しており、3000億円の固定価格を受け取る。回避可能費用は10円/kWhとして費用負担調整機関は無視し、見込総需要電力量は1兆kWh/年とする。この場合、賦課金は0.2円/kWhとなる。

ここで他の条件は同じとして、FIT固定単価が遡及的に25円/kWhに下げられると同時にプレミアムが5円/kWhほどA発電所に支払われるとする。A発電所の採算は維持されたまま、賦課金は0.15円/kWhに抑制される。


Q9.「意見書」13ページの補論で記された(3)のケースでは、現実にJEPXスポット価格として15円/kWhで取引されているのではないか?

A9.現実のJEPXスポット価格の推移は承知している。「意見書」では、通常の一物一価的に小売市場価格がほぼ一つに収斂しうる競争的市場や、また真に一つの価格だけが存在する取引所取引価格の原則を説明している。

イメージ図(3)の例で、仮に需要家が15円で良しとするならば、青の新電力が12円で仕入れたFIT電力をそのまま15円で小売すればよいのであって、取引所を経由するか否かは、需要家負担の大小と直接的に関係するものではない。この(3)ケースの、仮に赤い新電力と青い新電力が、同一の持ち株会社による子会社であったことを想定すると2社の合計利益は同一であることが理解されよう。まったく資本関係のない別会社であっても2社の合計利益、つまり国全体の小売事業者利益は同額であり、国全体の需要家負担も同額である。


Q10.結局、今回の回避可能費用算定方法の変更案は新規参入者に不利、ということなのか?

A10.回避可能費用の水準つまり、JEPXスポット価格の水準は誰も予想することはできないため、これをもって有利不利を議論することはできない。ただし、ボラティリティが高い算定方法であることは、相対的に事業規模の小さい新規参入者には不利であることは「意見書」で指摘したとおりである。

一方、「新規参入者」にも2つの視点がある。第一に、すでに発電設備を豊富に保有する事業者(主に一電)とそれ以外の新規参入者、という観点である。

第二に、経過措置の観点である。経過措置は既参入者に有利である。これは一電だけでなく、既参入の新電力にも有利である。経過措置は、古い認定設備・古い契約を持つ既参入者のみが、今後も一定期間、安い回避可能費用を享受し続けることができるためである。つまり新電力間での公平性も担保されていない。よって、「意見書」では単純な「経過措置を要望する」とは主張しておらず、すべての新規参入者にとって望ましい実質的な「導入延期」を要望しているのである。


Q11.現在のJEPXについては、一定の指標性はあることが買取制度運用WG資料で示されているのではないか?また、JEPXスポット価格の変動幅は諸外国に比べて大きくはないのではないか?

A11.「意見書」でも示したとおり、スポット市場だけを見るならば、JEPXスポット市場は現時点、一定の指標性はあると言えるが、①今後仮にFIT電力の売り札が減れば市場の厚みは一層薄くなり、指標性が大きく損なわれる可能性も否定できないこと、②広義の電力市場とはスポット市場だけではないこと、を主張している。また、③現在のJEPXの変動幅が諸外国と比べ小さいとしても、今後、本来あるべき活性化された取引所となる場合、諸外国並みに変動しないとは言えない、と考えている。


Q12.仮に算定方法が変更される場合、新電力は事業リスクを低減するために、どのような行動を取ると考えられるか?

A12.事業者ごとに考え方は大きく異なると想定されるため一つの例として示すと、新電力は相対取引による長期的調達契約を増加させることが考えられる。実は、現状すでに多くの電力会社(取引の大勢は一電によるもの)はこのような行動を行っている。これこそが、電力会社の行動・調達の実態であり、今回の算定方法変更はこの実態を反映していない、ということを最大の問題点として指摘している。

また電力会社にとっての価格とは、取引所価格だけではなく、相対取引も含む総合的なものであることを「意見書」では指摘しており、取引所価格の変動リスクは取引所内だけでは解決されないことを意味している。


Q13.電力の価値を最も適切に表しているのは卸電力市場の30分スポット価格なのではないか?

A13.回避可能「費用」の議論と、その「価値」の議論は表裏一体の関係である。

このご指摘は、買取制度運用WGにおける議論と、CNJ「意見書」の大きな違いの一つであると認識している。WGで主流の意見は、大まかには限界費用の観点であると推測している。FIT電力を小売電気事業者が追加的に1単位受け入れたときに回避できるマージナルな費用は幾らか?という視点であると推測する。これはマージナルな電気価値を表していると言える。これは、一電のような大きな電力会社が、少ない量のFIT電力を受け入れるときに、相性がよい考え方であろうと考えられる。

が、CNJ意見としては、一電も含め電力会社の経営上、その調達費用は決して限界費用だけではなく、長期固定費用も含めた判断をしているはず、と考えている。

特に相対的に小規模な新電力にとってFIT特定契約を締結するかしないかは、経営を左右する非常に大きな判断となることが想定される。

なお買取制度運用WGの当初の事務局資料では、この限界費用的な考え方と、長期費用的な考え方の両論が併記されている。


以上

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