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教えて電力改革 シリーズ3 EUとドイツでは電気の購入契約における消費者保護をどのようにはかっているのか?

小売りの全面自由化にむけて、制度設計WGの議論が進んでいますが、表示制度がどうあ るべきか、ドイツやEUがどうこの問題に取り組んでいるのか、取り組んできたのかを知ることが日本の制度設計についての参考となります。

ドイツの再生可能エネルギー事情について詳しい弁護士千葉恒久さんに、ドイツの表示制度についての最新情報に関して、ドイツの電力小売り事業者の表示義務に関する法令等の訳文とその解説をご投稿いただきました。( ドイツの電力小売り事業者の表示義務に関する法令電力小売り事業者の負う表示義務は「自由化の大黒柱」2014年12月8日の修正版です)

ドイツの電力小売り事業者の表示義務に関する法令等の
訳文と解説

千葉 恒久

はじめに

消費者が選択でき選択を促すための情報提供~環境保護に関する情報提供(発電源に関する情報、CO2排出量、放射性廃棄物排出量も対象)

消費者への情報提供は、自由化されたエネルギー市場における大黒柱として位置付けられています。消費者が選択するうえで必要な情報を提供することにとどまらず、消費者に選択を促していくことも情報提供の目的となっています。そのために、いかにわかりやすく、実効的に情報を提供するか、が焦点になっています。

この点に関する裁判例も増えており、消費者への情報提供はいまや一大テーマとなりつつあります。

環境保護に関する情報の提供も、欧州では自由化の重要な柱とされています。発電源に関する情報、CO2排出量、放射性廃棄物排出量がその対象です。

ドイツでは、さらにグラフでの明示や比較も義務付けられてます。発電源のデータは前年の供給実績が基礎データとなります。「日々変動するから発電源を明示できないのではないか」という点はデータの開示義務を妨げるものとは考えられていません。

供給約款に基づく供給では公的賦課金、託送料金にも情報提供義務あり

ドイツでの新しい動きとして、約款に基づく供給(小売事業者を選択しない消費者に対する供給。ドイツでは「基本供給」と呼ばれています)における消費者に対する情報提供義務が、2014年10月末から一層強化されました。

これによって、基本供給をおこなう事業者は、供給料金に占める電力税、再エネ賦課金などの公的賦課金だけでなく、託送料金も明示しなければならなくなりました。

料金の内訳はインターネットでも公開しなければなりません。

ドイツの家庭向け電力料金の5割は税金などの公的賦課金、2割が託送料金です。残る3割が調達原価とマージンです。ですので、公的賦課金と託送料金を明示させることによって、料金のうち7割が透明化されます。

ドイツでは電力の調達が市場でおこなわれるため、調達価格もかなり明確です。となると、必然的にマージンの部分も明確になってくる、というわけです。このため、公的賦課金と託送料金を明示は、不正な料金形成を防ぐことにつながると期待されています。

一例として、ミュンヘン市のエネルギー供給事業者(SWM)の公表資料を添付します。

Grundversorgung SWM 2014.12(pdfファイル)


自由化された欧州のエネルギー市場において、消費者保護の必要性がどれだけ強く意識されているかを示すEU電力自由化指令とエネルギー事業法

EU指令とドイツのエネルギー事業法の訳文と解説および最終供給料金に関する表示義務の規定と解説(最新欧州裁判所の判決も含む)は以下の通りです。


訳および解説

 

欧州議会及び理事会の指令200972EC (2009713日)

(EU電力域内市場指令)

 

第3条 共同経済上の義務及び顧客の保護

(1) 加盟国は、加盟国の組織構成と補完性の原理に配慮しつつ、電力企業が(2項に反しない限りで)この指令が定める基本原則に従い、競争的、確実的及びエコロジー的観点で持続的な電力市場を形成するという観点で事業をおこなうこと、並びに、これらの企業が権利及び義務の点で差別されないことを確保する。

 

(2) 加盟国は、EU条約の関連する規定、とりわけ86条を完全に遵守しつつ、電力企業に対し、供給の確実性、定期性、品質及び環境保護(エネルギー効率性、再生可能エネルギー、気候保護を含む)に関係しうる一般経済上の義務を課すことができる。これらの義務は、明確に定められ、透明で、差別性がなく、検証しうるものでなければならず、共同体内の電力企業が顧客に平等にアクセスすることを確保しなければならない。供給の確実性、エネルギー効率性/需要コントロール、環境目標及び再生可能エネルギーのための目標の達成に関して、加盟国は長期的な計画を定めることが出来る(そこでは第三者が送配電網へのアクセスの実現を望むことを考慮しなければならない)。

 

(3) 加盟国は、すべての家庭顧客、及び必要に応じて中小企業(従業員が50名未満であり、かつ年間売上高又は貸借対照表上の決算高が1000万ユーロ以下の企業)が、自国内で基本供給[1]を受け得ること、すなわち、一定の品質を有し、適切で、簡明かつ明確な比較性を有し、透明かつ非差別的な価格の電力の供給に対する権利を確保する。基本供給を確保するため、加盟国は最下流部の供給者を指名することができる。加盟国は配電企業に対し、37条6項の手続において定められた様式、条件、料金によって顧客を送配電網に接続することを義務付ける。この指令は、加盟国が家庭及び中小の消費者による自主的なグループの結成を支援することによって、これらの者の市場における地位を強化することを妨げるものではない。

本項は、透明かつ非差別的な方法で実現されるものであって、33条による市場の開放を妨げるものであってはならない。

 

(4) 加盟国は、すべての顧客が供給者から‐供給者が同意する限り‐電力の供給を受ける権利を保持することを確保する(それは供給者が現行の取引及び決算の規則を遵守している限り、加盟国によって供給者として許可されているか否かにはかかわりない)。この関係で、加盟国は、他の加盟国で供給者としてすでに許可された供給企業が行政手続において差別されないためにすべての必要な手段を講じる。

 

(5) 加盟国は、

a) 顧客が契約条件の枠内で供給業者の変更を求める場合、事業者が3週間以内に変更をおこなうこと、及び、

b) 顧客が、自己に関するすべての消費データを受け取る権利を有すること、

を確保する

加盟国は、a)とb)に掲げられた権利が、すべての顧客に、費用・負担・期間の点で差別なく保証されることを確保する。

 

(6) 加盟国が2項及び3項の義務を履行するために、財政的な補償その他の反対給付又は独占的な権利を認める場合は、差別なくかつ透明な方法でおこなわなければならない。

 

(7) 加盟国は、最終顧客を保護し、とりわけ保護が必要な顧客が適切な保護を受けられるよう適切な措置を講じる。この関係で、加盟国は「保護が必要な顧客」のコンセプトを定義する(それは特に、エネルギー貧困及び逼迫した時間帯にエネルギー供給を中断することを禁止することに関しうる)。加盟国は、保護が必要な顧客に関する権利及び義務が守られることを確保する。加盟国はとりわけ辺境地内の最終顧客が保護されるための措置を講じる。加盟国は、特に契約条件の透明性、一般的な情報及び紛争解決手続において、高度な消費者保護を確保する加盟国は、許可された顧客が実際に供給先を容易に変更することを確保する少なくとも家庭顧客については付属表Ⅰに掲げられた措置が含まれる

 

(8) 加盟国は、例えば国のエネルギー政策上の行動計画の策定又は社会保障システム内でのサービスにおいて、保護が必要な顧客に必要な電力の供給確保、エネルギー効率性の向上のための補助又はエネルギー貧困に対する対策のために適切な措置を講じる。この措置は、33条で要求されている市場の開放又は市場の機能性を侵害してはならず、欧州委員会に対し必要に応じて本条15項に従って報告しなければならない。この報告には、社会保障の一般的なシステムにおける対策を盛り込むこともできる。

 

(9) 加盟国は、電力供給企業が請求書又はその添付書及び最終消費者向けの広告において、以下のことを表示することを確保する

a) 理解しやすく国内で明確に比較可能な方法による、供給者が前年に用いた全エネルギー源構成に占める個々のエネルギー源の比率

b) 環境影響についての情報-少なくとも供給者の前年の全エネルギー源構成に起因するCO2排出量及び放射性廃棄物量を含む-が公表されているインターネットなどの情報源

c) 紛争が生じた場合に利用出来る紛争解決手続に関する権利についての情報

a)及びb)において、電力市場で調達又はEU外の企業から輸入した電力の量に関しては電力市場又は当該企業から示された前年の合計量を基礎に算定することができる。

国内の規制当局その他の管轄庁は、供給企業から本項に基づいて消費者に提供される情報が信頼でき、かつ、国内で明確に比較可能なものとして提供されるよう必要な対策を講じる。

 

(10) 加盟国は、社会的及び経済的な共存並びに環境保護の目標(場合により、エネルギー効率の向上/需要コントロール、気候変動の防止策、供給の安全のための対策を含む)が達成されるよう対策を講じる。この対策には特に、必要に応じて一国内又はEU域内にあるすべての手段を活用しつつ、必要なネットワークのインフラ(容量を含む)を維持・拡充するための経済的な刺激策が含まれる。

 

(11) エネルギー効率を向上するため、加盟国又は規制当局は電力企業がエネルギーマネージメントシステムを提供するなどの方法で電力消費を最適化すること、新たな種類の価格モデルを展開すること、又は場合によってはスマートメーター若しくはスマート送配電網を導入することを推奨する。

 

(12) 加盟国は、消費者が彼らの権利と紛争解決手続についてのすべての必要な情報を受け取るためのセンターの設置を確保する。このセンターは、一般的な消費者情報センター内に設置することができる。

 

(13) 加盟国は、実効的な苦情の処理と穏便な合意の形成のために、エネルギーのための中立的な受託者又は消費者保護組織などの中立的なシステムを確保する。

 

(14) 加盟国は、7条、8条、32条及び/又は34条の適用によって、電力企業に課された共同体上の義務の達成が法律上又は事実上妨げられ、かつ、市場取引の発展が共同体の利益に反する程度には阻害されない場合に限り、これらの条項を適用しないことを決定することができる。共同体の利益は、とりわけこの指令及びEU条約86条に従っておこなわれる許可された顧客に向けた競争に存在する。

 

(15)  この指令の国内法化に際し、加盟国は、欧州委員会に対し、基本供給の保障、共同経済的な義務の履行(消費者及び環境保護を含む)のために講じたすべての措置とそれがもたらすかもしれない国内・国際競争への影響について報告する(その措置がこの指令の例外を必要とするか否かにかかわらない)。それに続き2年ごとに、措置の変更について報告をおこなう(その措置がこの指令の例外を必要とするか否かにかかわらない)。

 

(16) 欧州委員会は、すべての利害関係者(加盟国、国内の規制官庁、消費者組織、電力企業及び状況の進展に応じて福祉パートナーを含む)との協議を経て、わかりやすく短くまとめられたエネルギー消費者向けのチェックリストをエネルギー消費者の権利に関する実務的な情報とともに作成する。加盟国は、電力供給者又は配電網操業者が規制庁と協力しつつ、消費者がチェックリストのコピーを入手すること及び(チェックリストの)公表をおこなうための必要な対策を確実におこなう。

 

付属表Ⅰ 顧客の保護のための対策

(1) 3条に掲げられた対策においては、以下の事項が(共同体の消費者保護規定、とりわけ消費者保護に関する1997年5月20日の指令(97/7/EC)及び消費者契約における権利濫用的な条項に関する1993年4月5日欧州経済共同体の指令(93/13/EWG)の範囲内で)確保されるべきである。

a) 顧客は、電力サービスの提供者に対し以下の事項を定める契約を求める権利を有する:

‐ 提供者の氏名及び住所

‐ 供されるサービス、提供される品質の水準及び最初の接続開始時

‐ 提供されるサポートサービスの種類

‐ 最新の料金メニュー及びサポート価格に関するすべての情報を入手する方法

‐ 契約の有効期間、サービスと契約関係の延長及び終了の条件、手数料なきキャンセルが可能な否か、

‐ 約定されたサービス品質が守られなかった場合(不正確又は遅延した請求を含む)の補償又は填補などの定め

‐ f)による紛争解決手続の開始措置

‐ 請求書及び電力企業のインターネットサイトにおける消費者の権利についての明瞭な表示(苦情への対応、本項に掲げられたすべての情報を含む)

条件は正確にかつ先んじて明示されなければならない。これらの情報は、いずれにせよ契約の締結又は確認の前に提供されなければならない。仲介者によって契約が締結される場合においても、本項に掲げられた情報は契約の締結前に提供されなければならない。

b) 顧客は、適切な時期に、契約条件の変更及び解約権について説明を受ける。サービス提供者は、すべての手数料の値上げに際し、適切な期間をおいて(遅くとも手数料値上げに続く通常の請求期間の満了前までに)、顧客に対する直接かつ透明・明瞭な方法による通知をおこなう。加盟国は、顧客が電力サービス提供者から通知された新たな条件を受け入れない場合に契約を解除する自由を確保する。

c) 顧客は、最新の価格と料金メニュー、電力サービスを受けるための標準的な条件及びその適用に関する情報を与えられる。

d) 顧客に対し、不相当に不利益を与えることのない多様な支払様式が用意される。すべての前払いシステムは、公正であり、予想される消費量を適切に反映させたものである。契約条件の違いは、支払システムの違いにより供給者に生じるコストを反映している。一般的な契約条件は公正かつ透明でなければならない。それは明瞭かつ理解できるよう表記されなければならず、例えば多すぎる契約書類のように、顧客の権利行使を妨げるような契約外の阻害要因を含んではならない。顧客は、不公正又は紛らわしい販売方法から保護されなければならない。

e) 顧客は、供給先を手数料なくして変更できる

f) 顧客は、透明、簡明かつ廉価な苦情処理手続を利用できる。特に、すべての顧客は電力サービス提供者による高品質のサービスの提供と苦情処理を受ける権利を有する。この裁判外での合意のための手続は、事件の正当かつ遅滞のない解決を可能にし(主として3か月以内)、かつ、理由が認められるケースのための填補及び/又は補償システムを備えなければならない。この手続は、消費者トラブルの訴訟外での解決のための組織における基本原則に関する1998年3月30日の欧州委員会のガイドライン(98/257/EC)に掲げられた基本原則に出来る限り従うべきである。

g) 顧客は、3条3項に基づき加盟国によって定められた条件に従って基本供給を受ける際に、基本供給に関する権利について情報を与えられる。

h) 顧客は、消費データを利用でき、任意の登録供給者に対し、明示的な同意によって手数料なくして、自己の計測値へのアクセスを許すことができる。データの管理者は、関係する企業にデータを提供する義務を負う。加盟国はデータを取りまとめるフォーマット及び供給者と顧客がデータにアクセスするための手続を定める。顧客が追加料金を請求されることはない。

i) 顧客は、自分の電力消費をコントロールできるよう、十分な頻度で適切な形式によって実際の電力消費量と電力料金についての情報を受けとる。情報は、顧客の計測機器の容量と当該電力商品に照らして十分な期間ごとに与えられる。コスト効率は料金において考慮される。顧客が追加料金を請求されることはない。

j) 顧客は、電力供給者の変更後遅くとも6か月以内に最終請求書を受け取る。

 

(2) 加盟国は、消費者が電力供給市場に積極的に参加するためのスマートメーターの導入を確保する。スマートメーターの導入は、長期的なすべてのコスト、市場と個々の消費者にとっての利点、どのスマートメーターが経済的に代替可能で廉価であるか、どのような期間に導入することが実務的に可能であるか、についての調査に基づく経済的な評価にかからせることができる。

この評価は2012年9月3日までにおこなう。

加盟国又は管轄庁は、この評価に基づき、スマートメーターの導入についての10年間の計画目標を定めたスケジュールを策定する。

スマートメーターの導入が肯定的に評価される場合、2020年までに少なくとも80%の消費者がスマートメーターを有している。

加盟国または管轄庁は、自国内で導入される計測システムの互換性に配慮し、相応する規格と認証された手続の適用及び電力域内市場の構築における重要な意義について適切に考慮する。

 

【解説】

これは2009年7月制定の電力域内自由市場指令から消費者保護に関連する規定を抜き出して翻訳したものです。

この指令は、1995年と2003年の指令による欧州域内での電力自由市場をさらに進めるもので、各加盟国は2011年3月3日までにこの指令を自国の法律として定める義務を負っています。

欧州指令では、2003年の指令以降、消費者保護を非常に重要視しています。2003年指令(2003/54/EC)では、指令の冒頭部分で消費者保護についての諸規定がおかれ、契約条件の明示義務、請求書や広告媒体における発電源と環境影響(CO2排出量・放射性廃棄物量)の表示義務が定められました。これらの規定は、ここで訳出した2009年指令にも引き継がれ、さらに拡充されています。

欧州指令では、このほか、紛争解決手続の整備義務、契約の解約(供給先の変更)における障害を撤廃するための諸規則(手数料の撤廃や消費データの開示など)が定められています。

なお、3条はすべての顧客に関する規定ですが、顧客が一般家庭に関する場合は付属書Ⅰに掲げられた事項も遵守することが義務付けられます。

ガスの供給事業に関しても、2009年7月13日の欧州ガス域内市場指令(2009/73/EC)において、基本的に同内容の規定が定められています。

指令は以下のサイトでダウンロードできます。

http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2009:211:0055:0093:EN:PDF (英語)

http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2009:211:0055:0093:DE:PDF (ドイツ語)

(翻訳文にあるアンダーラインは訳者が加えたものです。カッコ書きも文意をくみ取りやすくするため、訳者が原文の一部をカッコ内に収めたものです。翻訳は独文をベースに、英文を参照しつつおこないました。)


 

ドイツ 電力及びガス供給法(エネルギー事業法)

 2005年7月7日制定(最終改正2012年12月20日)

 

40条 電力及びガス請求書、料金メニュー

(1) 最終消費者に対するエネルギー供給の請求書は、簡明で理解しやすいものでなければならない。請求にかかわる算定要素は、完全かつ一般に理解しやすい形で掲げられなければならない。

(2) 供給者は、最終消費者に対するエネルギー供給の請求書において、以下の事項を個別に掲げなければならない。

1 名前、店舗所在地と管轄の登録裁判所、迅速な電子的なコンタクトを可能とするための記述(電子ポストのアドレスを含む)、

2 契約存続期間、適用する価格、次に可能となる解約日及び解約期間、

3 供給に関係する計測ポイント名及び送配電網操業者のコードナンバー、

4 調べられた請求期間の消費量、家庭消費者については請求期間における開始時及び最終の計測値、

5 昨年の相応する期間の消費量

6 家庭消費者については、自分の年間消費量を対照顧客グループの年間消費量と比較するグラフ

7 最終消費者が負う自治体向け営業許可料及び送配電網使用料の負担、場合によってはそこに含まれる計測事業及び計測の料金、並びに、

8 家庭消費者については、紛争時に供される紛争解決手続についての権利(111条bによる消費者の苦情のための調停機関名及び住所、連邦ネット庁の電力及びガスに関する消費者サービスへのアクセスデータを含む)。

最終消費者が当該供給者のもとで前年に供給を受けていなかった場合は、前年の供給者は新しい供給者に対し、相応する前年の期間における消費量を伝えなければならない。供給者が自己の責めに帰すことができない理由でデータを調査できない場合、推定の消費量を伝えることができる。

(3) 供給者は、エネルギー消費量を、選択により毎月1回又はその他の期間ごとに(ただし12か月を大きく超えてはならない)計測しなければならない。供給者は、最終消費者に対し、毎月、3カ月ごと又は半年ごとに請求をおこなわなければならない。21条dによる計測システム[2]により消費量の計測がおこなわれる最終消費者は、料金に反映される毎月の消費情報を無料で受け取る。

(4) 供給者は、請求する期間の経過後遅くとも6週間以内に最終消費者が請求書を受け取ることを確保しなければならない(供給契約の終了時の最終請求については終了後遅くとも6週間以内)。

(5) 供給者は、技術的に可能であり、かつ経済的に期待可能である場合、電力の最終消費者に対し、エネルギーの節約又はエネルギー消費の調整を動機付ける料金メニューを提供しなければならない。第1文にいう料金メニューは、とりわけ需要量に応じて柔軟な、又は時間帯により異なる料金メニューである。供給者はそのほかにも、データの徴収と伝達が一定の期間内に消費されたすべての電力量に限定された料金メニューを少なくとも1つ提供しなければならない。

(6) 供給者は、最終消費者に対し、請求にかかわる算定要素を標準的な概念と定義を用いて請求書のなかに掲げなければならない。

(7) 連邦ネット庁は、最終消費者に向けたエネルギー供給の請求書に関し、1項ないし5項に基づく最低限の内容と6項に基づく標準的なフォーマットについての詳細を、29条1項に基づく供給者に対する定めにおいて決することができる。

 

41条 家庭顧客に対するエネルギー供給契約、法規命令への委任

(1) 基本供給以外の家庭顧客に対するエネルギーの供給契約は、簡明で理解しやすいものでなければならない。契約はとりわけ以下の定めを含まなければならない

1 契約の存続期間、料金の適応、解約日及び解約期限並びに顧客のキャンセル権、

2 供されるサービス(提供されるサポートサービスを含む)

3 支払いの方法

4 契約で定められたサービスが守られなかった場合の賠償責任及び補償についての規定

5 料金のかからない、速やかな供給者の変更、

6 料金メニューとサポートサービスについての最新の情報を入手する方法、

7 紛争時に供される紛争解決手続についての権利についての情報(111条bによる消費者の苦情のための調停機関名及び住所、連邦ネット庁の電力及びガスに関する消費者サービスへのコンタクトデータを含む)

民法施行法246条の1項及び2項に基づく情報義務は影響を受けない。

(2) 家庭顧客に対しては、契約締結の前にさまざまな支払の方法が提供されなければならない。先払いについて合意する場合、従前の請求期間における消費又は類似の顧客の平均的な消費に依拠しなければならない。顧客が自分の消費量が著しく少ないことを明らかにした場合、そのことを適切に考慮しなければならない。先払いの履行期限は供給の開始時前には到来しない。

(3) 供給者は、顧客に対して、適切な時期に(遅くとも通常の請求期間が経過する前までに)、透明かつ理解しやすい方法で、契約条件の変更の予定及びキャンセルの権利について説明しなければならない。供給者が契約条件を一方的に変更した場合、最終消費者は解約期限を守ることなく契約を解約することができる。

(4) エネルギー供給企業は、家庭顧客向けの請求書上またはその添付書類において、これらの顧客に向けた広告媒体において、並びに、インターネットサイトにおいて、1項2文の定めについての一般的な情報を掲げなければならない。

(5) 連邦経済・技術省は、連邦食糧・農業・消費者保護省の了承のもと、連邦参議院の同意を得た法規命令によって、家庭顧客へのエネルギー供給(ただし基本供給を除く)についての詳細な規則を定め、契約の規定を統一的に定め、特に契約の締結、対象及び終了についての規定を定め、契約相手方の権利と義務について定めることができる。ここでは両当事者の利益を適切に考慮しなければならない。EU指令2009/73/EG及び2009/73/EGの各付属書Ⅰで予定された対策を守らなければならない。

 

42条 電源表示、電力請求書の透明性、法規命令への委任

(1) 電力供給企業は、最終消費者向けの請求書上またはその添付書類において、これらの顧客に向けた広告媒体において、並びに、電力の販売のためのインターネットサイトにおいて、以下の事項を掲げなければならない

1 前歴年及び前々歴年に当該供給者が用いた全エネルギー源構成に占める個々のエネルギー源(原子力、石炭、天然ガス、その他の化石エネルギー源、再生可能エネルギー法によって援助された再生可能エネルギー、それ以外の再生可能エネルギー)の割合; 遅くとも11月1日以降は前暦年の値を掲げなければならない;

2 環境影響、少なくともCO2排出量と放射性廃棄物量(1号に掲げた発電用の全エネルギー源構成に起因し得るもの)ついての情報

(2) エネルギー源構成及び環境影響についての情報には、ドイツの発電における平均値を併記するとともに、消費者にやさしく、かつ、適切な大きさでグラフを用いた視覚的な方法で示さなければならない

(3) 電力供給企業が最終消費者向けの販売においてエネルギー源構成の違いによる商品の差別化を図る場合、これらの商品及び残りのエネルギー源構成について、1項及び2項を準用する。1項及び2項における義務には影響を及ぼさない。

(4) 発電側で1項1号に掲げるエネルギー源のどれに該当し得るのかが明確でない電力量については、ドイツのENTSO-E[3]-エネルギー源構成から5項1号及び2号に掲げる再生可能エネルギーによる電力を控除したものを基礎とすることができる。適当な負担で可能な場合は、ENTSO-E-構成を適用する前に、電力量の二重計上を避ける手立てを講じなければならない。加えて、1文及び2文で算定したエネルギー源構成は、1項1号に掲げたカテゴリーによって分類して掲げられなければならない。

(5) 1項1号及び3項による電力表示の目的において、再生可能エネルギーによる電力の使用とすることができるのは、電力供給企業が

1 再生可能エネルギーによる電力の発電源証明を用いる場合(再生可能エネルギー法55条4項によって管轄庁によって消却されたもの)、

2 再生可能エネルギー法によって援助された電力を同法の規定のもとで掲げる場合、又は、

3 再生可能エネルギーによる電力を4項で算定したエネルギー源構成の一部として同項により掲げる場合、

に限られる。

(6) 電力の製造者及び供給元は、その供給関係において、1項の義務者が情報提供義務を満たし得るようにデータを提供しなければならない。

(7) 電力供給企業は、年に1度、電力表示の正確性を検証するため、連邦ネット庁に対して、1項から4項によって最終消費者に供されたデータ、電力表示の基礎とされた電力量を届出なければならない。連邦ネット庁は、再生可能エネルギーの割合に関するデータについては環境連邦局に伝達する。連邦ネット庁は、様式、範囲及び届出日を定めることが出来る。フォームが用意された場合、データは電子的に伝達されなければならない。

(8) 連邦政府は、連邦参議院の同意を必要としない法規命令によって、1項から4項の情報の提示、とりわけ国内で比較可能な方法での提示、発電側での帰属先が明確ではない電力のエネルギー源構成の定め(4項にかかわらず)、及び1項から4項の情報提供のためのデータの調査及び伝達の方法について定めることが出来る。法規命令が定められない場合、連邦ネット庁は29条1項の定めによって1文の規定を定めることが出来る。

 

【解説】

上記はドイツのエネルギー事業法(Energiewirtschaftsgesetz)の中から、消費者保護及び消費者に対する環境情報の提供義務に関する部分(40~42条)を抜き出して翻訳したものです。40条~42条は2011年7月の法改正によって大幅に改訂され、現在に至っています。

この法律は、供給者に対し、請求書、広告媒体、インターネットサイトにおいて発電源についての情報や環境情報(特にCO2排出量や放射性廃棄物量)を表記することを義務付けています。情報は明瞭で理解しやすい方法によらなければならず、グラフを用いた視覚的な方法でおこなうことが必要とされています。

発電源は、原子力、石炭、天然ガス、その他の化石エネルギー源、再生可能エネルギー法によって援助された再生可能エネルギー、それ以外の再生可能エネルギーの6種類に分けて表示することが義務付けられています。

また、法律は、消費の抑制や需要のコントロールにつなげるため、前年同時期の消費量や同じ消費者グループの平均的消費量についての情報の提供も義務付け、さらに、エネルギー消費量の抑制や需要の調整(コントロール)につながる料金メニューの導入も義務付けています。

さらに、料金に関する情報として、自治体に支払う営業許可料(コンセッション料)と送配電網の使用料、場合によっては計測事業に要する料金を表示しなければなりません。これは、料金構成の透明化を意図したものです。

(ここで翻訳した法文は、2012年12月20日の(小)改正後のバージョンをもとにしています。文意をくみ取りやすくするため、一部の訳文をカッコに入れました。アンダーラインは訳者によるものです。)

 

 


 

ドイツ 電力基本供給政令(Stromgrundversorgungsverordnung

2006年10月26日制定(最終改正2014年10月22日)

 

2条 契約締結

(1) 基本供給契約は書面で締結しなければならない。・・・

(3) 基本供給契約には、契約の成立に必要なすべての事項を盛り込まなければならない、とりわけ:

1. 顧客に関する事項

2. 設備の住所及び計測器の表示又は計測器の設置場所

3. 基本供給事業者に関する事項

4. 基本供給をおこなう配電網の配電事業者に関する事項

5. エネルギー事業法36条1項における基本供給料金(Allgemeine Preise)に関する事項、その際、以下の負担が基本供給料金の一部を構成している場合は、それを区別して掲げなければならない

a) 電力税

b) 営業許可料

c) 再生可能エネルギー法60条1項、コージェネレーション法9条7項、送配電網利用料政令19条2項、エネルギー事業法17f条5項及び解列可能需要政令18条における転嫁金及び賦課金

d) 送配電網利用料金、及び、エネルギー供給網操業者に対する計測事業所及び計測の料金

・・・基本供給事業者は、これらに加えて、基本供給料金から売上税及び5号に掲げる負担を控除した残額を区別して掲げなければならない。基本供給事業者は、1文5号の負担及び3文の事項のそれぞれの金額を、基本供給料金の表示とともにインターネットサイトで公表しなければならない。・・・

 

5a条 法律又は規定による負担が増減した場合の新たな料金決定

(1) 基本供給料金の算定にかかわる2条3項1文5号の負担が増減した場合、基本供給事業者は基本供給料金を新たに算定し、その結果に従って料金を変更することができる。2条3項1文5号a)ないしc)の負担が減少した場合、基本供給事業者は基本供給料金を遅滞なく新たに算定し、差額を料金に反映させなければならない

 

【解説】

1 政令の正式名は「低圧配電網からおこなう家庭に対する基本供給及び電力の代替供給のための一般的条件についての政令」(Verordnung über Allgemeine Bedingungen für die Grundversorgung von Haushaltskunden und die Ersatzversorgung mit Elektrizität aus dem Niederspannungsnetz)です。

2 「基本供給」(Grundversorgung)は、日本の電気事業法における一般供給に該当し、予め公表された料金・条件に基づいて供給をおこなうものです。消費者が電力の供給元を選択しない場合には、自動的にこの基本供給に基づく電力供給が適用され、基本供給事業者は供給の義務を負います。地域内で最も多くの数の消費者に電力供給をおこなっている事業者が基本供給事業者となります。どの事業者が基本供給事業者になるかは、3年に1度、電力供給実績をもとに決め直されます(以上についてエネルギー事業法36条)。

基本供給に基づく電力供給には、電力供給を受けられない人の出現を防ぐという役割があるため、一般の電力供給契約と比べより一層公共的な性格が強い点に特徴があります。そのため、基本供給の供給条件は、予め公表されるだけなく供給契約の条件も法定されています。その細目を定めているのが「電力基本供給政令」です。なお、ドイツでは供給料金の認可は完全に撤廃されています。

なお、ガスの供給事業に関しても、「ガス基本供給政令」(GasgrundversorgungsV)が定められています。内容は電力基本供給政令に沿ったものとなっています。

3 訳出したのは、基本供給事業者に課されている表示義務に関する部分です。基本供給事業者は、電力料金を構成する公的な賦課金、送配電網利用料(託送料)をすべて表示するだけでなく、公的な賦課金と送配電網利用料が下がった場合は基本供給料金を引き下げる義務を負います。これによって、これらの料金が下がったにもかかわらず、電力販売料金が下がらないという事態を防ぐ趣旨です。

4 ドイツの家庭向け電力料金は平均で28.84ct/kWh(2013年)ですが、その約50%は公的賦課金が占めます。内訳は、電力税、売上税、自治体向け営業許可料、再エネ法賦課金、コージェネ法賦課金などです。また、残る50%のうち20%を占めているのが送配電網利用料です。逆に言うと、電力料金のうち原価(電力調達価格と事業者のマージン)は約30%にすぎません。このため、公的賦課金や送配電網利用料を消費者に対して明示し、電力料金をそれに連動されることは、電力価格を透明化し、不当な価格形成の防ぐうえで少なからぬ意味を持ちます。

5 この政令は2014年8月に改正され、公的賦課金と送配電網料の負担額の減少時の基本料金引き下げ義務が新たに定められました。その背景になったのは、当時、欧州裁判所(第4部)に係属していた訴訟です。この訴訟では、ドイツの政令における基本供給(Allgemeine Versorgung)に関する定めがEU電力・ガス自由化指令に違反するか否かが争われました。ドイツの政令では、基本供給の料金変更の際に遅くとも6週間前までに料金の変更を公表し個々の顧客に通知することが義務付けられていたものの、基本供給事業者は変更の理由と契約解除の可能性を明示する義務までは課されていませんでした。この点がEU指令における消費者保護規定に反するか否かが争われたのですが、欧州裁判所は2014年10月23日、以下のように述べてドイツの電力・ガス基本供給政令がEU指令に違反しているとの判決を下しました(C-359/11, C-400/11)。

「顧客には供給契約を解除すること、及び料金の値上げに対処する権能が保証されなければならない。これらの権利を完全かつ実際に行使し、契約の解除又は料金値上げへの対処について十分な情報をもとに判断するために、顧客には、変更の発効前の適切な時点で、原因、条件及び程度についての情報が与えられなければならない。ドイツの規定はこの条件を満たさない。」

ドイツの政令改正は、この欧州裁判所の判決を先取りして、基本供給における消費者保護の水準を引き上げたものとも言えます。

自由化された電力・ガス市場における消費者保護のあり方については、近年、多くの事件で争われるようになり、消費者に対する情報提供の必要性を重視する判決が数多く出されています。欧州裁判所の上記判決はこうした流れに沿うものですが、消費者保護重視の流れは今後も強まっていくと予想されます。

 

[1]  基本供給(Grundversorgung)。ユニバーサルサービス。

[2]  コミュニケーション網システムによる計測

[3]  欧州電力系統運用者ネットワーク

⚫︎千葉恒久

弁護士。日本環境法律連盟所属。ドイツフライブルグ大学で環境法研究。ドイツの再生エネルギー事情に詳しい。著書「再生可能エネルギーが社会を変える~市民が起こしたドイツのエネルギー革命」(現代人分社) ほか。コンシューマネット・ジャパン協力者。

(参考著書)

千葉恒久著『再生可能エネルギーが社会を変える―市民が起こしたドイツのエネルギー革命』
ドイツの再生可能エネルギー法が市民運動のなかで生まれ育って来た経過について詳しい紹介がなされています。

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