仏セラリーニ教授、GMOとラウンドアップの毒性をめぐる新論文発表へ
モンサント社の遺伝子組み換えトウモロコシNK603と除草剤ラウンドアップががんなどを引き起こすとした論文を科学専門誌に掲載し、その後外部からの圧力で掲載誌編集部によって同論文を撤回されたフランス・カーン大学のジル・セラリーニ Gilles Séralini 教授(分子生物学)が、新たな科学論文を発表することになりました。
セラリーニ教授は、モンサント社が開発した遺伝子組み換えトウモロコシNK603を用いた2年間にわたる長期のラット給餌実験により、NK603と除草剤ラウンドアップが「肝臓および腎臓、ならびに性ホルモンの重篤な障害、そしてとくに乳ガンを引き起こす」との結論を得ました。その結果をまとめた論文「除草剤ラウンドアップおよびラウンドアップ耐性遺伝子組み換えトウモロコシの長期毒性 Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize 」は、1年近い査読を経て2012年にFood and Chemical Toxicology誌に掲載され、世界に衝撃を与えました(この実験の過程はJ.-P. ジョー監督の映画「世界が食べられなくなる日」でも紹介されています)。
しかし、その後欧州食品安全機関(EFSA)や(日本もふくめ)世界中の学者などを動員した大圧殺キャンペーンが繰り広げられ、Food and Chemical Toxicology誌は2013年11月、「提出された結果は、間違ってはいないものの、結論を引き出せるものではない」として、同教授グループの論文を撤回しました。この決定に先だって、同誌の編集委員のひとりとして、1997〜2004年にモンサント社で研究員をしていたリチャード・グッドマン Richard Goodman 米ネブラスカ大学教授(専門:食品アレルギー)が就任しています。
セラリーニ教授は、前の論文と同じ実験データに基づき、新たな統計解析でさまざまな点を補強した新論文をまとめました。「新論文には5つの科学誌から掲載の申し出があったが、最終的にEnvironmental Sciences Europe(Springerグループ)を選んだ」としています。選択の理由は、「同誌が“オープンソース”(査読の基準・経緯、生データもふくめ、すべての情報が公開される)であるため」としています。今回の論文でも実験などの生データもすべて公開される予定です。
セラリーニ教授は「今日の開発企業のデータ隠しはまったく異常だ。これは科学が異常である表れだ」と述べています。新論文を掲載するEnvironmental Sciences Europe誌のヴィンフリード・シュレーダー Winfried Schröder 編集委員は「この論文発表によって理性的な議論ができるようになることを望んでいる。科学的透明性を確立し、その上で、隠すための議論ではなく、必要な方法論上の論争に集中できるようになることが重要」と語っています。
Source: Le Monde 電子版 2014.06.24
(真下 俊樹)