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フランス新型高速炉ASTRID計画:仏原子力庁(CEA)、資金難から規模縮小の意向 — 頼みは日本からの出資

仏原子力庁(CEA)は、資金難から、計画中の新型高速炉ASTRIDの規模縮小を仏政府に伝えたもよう。

フランスの経済紙Les Echosによると、第4世代原発として計画中の新型高速炉ASTRIDについて、計画の中枢を担っている仏原子力庁(CEA)は規模を縮小する方向で再検討しているそうです。理由は資金難。フランス政府は今年末までに明確な方針を決定する予定です。

フランスの高速炉計画は、実証炉スーパーフェニックスが、当初の期待に反して使い物にならなかったことから、1997年に廃炉が決定されたことでいったん頓挫しました。しかし、「第三世代原発」として華々しく登場した軽水炉「欧州加圧水型炉(EPR)」の建設が難航して工期が大幅に遅れ、建設費用が見積りの3倍に高騰していることと、当初期待していたほど売れないことから、フランス原子力庁(CEA)は次の「第4世代原発」として高速炉ASTRIDの開発を進めています。

日本は2016年末、高速実験炉「もんじゅ」の廃炉を決めましたが、経済産業省は高速炉開発を諦めたわけではないことを示すため、このフランスのASTRID計画に日本も相乗りすることを発表しています。

以下、Les Echosの記事の「要訳」です。


ASTRID計画は、これまで電気出力60万kWの高速炉を2039年までに運開させること想定して進められてきた。しかし、独自に得た情報によると、CEAは仏政府に対して、当初60万kWとしていた出力を10〜20万kWに縮小したい旨を伝えた。直接の理由は、計画に参加しているフランス電力(EDF)、フラマトム Framatom、オラノ Orano(旧アレバ Areva)などの民間企業からの資金が充分に集まらないため。関係者は「60万kWの計画には、民間の食指が動かなかった」と語っている。

ASTRID計画には、これまで4.5億ユーロ(約608億円)の政府資金が投じられており、この他に民間パートナーのフランス電力(EDF)、フラマトム、オラノからの出資や経費負担もある。関係者は民間の出資も含めた既出総額は「6〜7億ユーロ(810〜946億円)だろう」としている。2019年の政府予算でも1.7億ユーロ(約240億円)が計上されており、2019年末までの民間も合わせた累積支出は8.5〜9億ユーロ(約1150〜1216億円)にのぼると見られている。

ASTRID計画を担当している技術者は500〜600人。うち約半数が政府機関であるCEAで、残りが参加民間企業19社からの出向。日本からも2014年から数十人が出向している。

しかし、参加の民間企業は、高速炉は原理的にはいいものとしながらも、それほど乗り気でない様子。オラノのフィリップ・ノッシュ会長に聞くと、世界でいろいろな高速炉研究が行われているので「技術的なブレークスルーもあるかも知れない」という返事[1]。EDFも、既存の第1・2世代原発の寿命延長と、第3世代原発である欧州加圧水型炉(EPR)でリプレースするのに頭がいっぱいな状態だ[2]

身内からの反応が鈍いなか、CEAの頼みの綱は外国からの協力。とくに、高速炉「もんじゅ」の廃炉を決めた日本にはASTRIDの費用の折半を期待している。今後は中国にも参加を呼び掛けるとしている。

出典:« Nucléaire : le réacteur du futur Astrid en suspens »Les Echos, 30/01/2018


【訳注】

[1] 裏返せば「現状のASTRIDではダメ」という含みが読み取れます。

[2] フランスの原子力開発は、伝統的に、フランスの独自技術によるプルトニウム・サイクルをめざす仏原子力庁(CEA)系列と、経済性を優先して外国技術導入にも積極的なフランス電力(EDF)系列が拮抗する形で進められてきました。1960年代後半には、発電用原子炉をめぐって、フランスが開発した黒鉛ガス炉を推すCEAと、スケールメリットが期待できる米国製軽水炉の導入を主張するEDFとの間で激しい「核戦争」が繰り広げられました。このときはEDFの勝利で決着しました(当初は加圧水型炉=PWRと沸騰水型炉=BWRの両方を輸入する計画でしたが、BWR担当企業が脱落してPWRだけが残りました)。EDFが使用済燃料の再処理、MOX燃料にあまり積極的でなかったり、EPRにこだわっているのもこの流れといえます。
本記事の裏事情として、このライバル関係が現在も陰に陽に続いており、ASTRID計画も高速(増殖)炉にこだわるCEAが立ち上げ、推進しているという背景があります。

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