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もっと知りたいフッ素の話 その15 フッ素でむし歯予防は本当か?~再石灰化の本質は?

フッ素でむし歯予防を謳うコマーシャルや、各地で、フッ素の集団洗口導入でも説明される、フッ素による歯の再石灰化。再石灰化については論者の間でも定義がことなるようです。今回は秋庭賢司さんにフッ素による再石灰化についてまとめていただきました。

むし歯予防の決め手とされる「再石灰化」は歯石と同じく唾液中の過剰なリン酸カルシウムの石灰沈着に過ぎない         

(要旨)

フッ素によるむし歯予防の根拠は1フルオロアパタイト(フッ素コーティング)、2再石灰化、3虫歯菌への酵素阻害作用とされるが、1は否定され2は明確な根拠はない。3の虫歯菌への酵素阻害作用だけは確実とされる。しかし3は、体にも有害である。

(論旨)

歯フッ素症(斑状歯)は虫歯が少ない、という観察結果からエナメル表面の脱灰(溶解)を最小にし、フッ素の取り込みを最大にすることがむし歯予防の目標とされてきた。このことは、脱灰と歯フッ素症の出現という害作用を前提にすすめられてきた。しかし、近年、フッ素量とむし歯の発生とは相関関係にない事が明らかになり、いわれてきたような、フッ素によるFA(フルオロアパタイト)の形成も否定されている。だが多くの歯科関係者は未だにフッ素コーティングにより直接、歯が強くなると信じている。

そのあとで注目されたのがフッ化物による再石灰化論であるが、もともと、以下に述べるように再石灰化そのものの定義が統一されておらず、曖昧なためわかりにくいことになっている。フッ素コーティング技術ならむし歯の予防に値するが、再石灰化論はフッ素が間接的(いわば触媒のように)に歯を強くするというもので、その理論上の意義(貢献)は後退している。

現在、子どものむし歯の減少に伴い、より軽度の疾患が予防、治療の対象となってきている。

初期エナメル質う蝕の再石灰化は表層が残り、内部のみが脱灰している穴のないむし歯が対象となっている。

ここで、用語の曖昧さについて言及すると、英語でRemineralization(再鉱質化)というときは、Demineralization(脱灰)に対応しているものの、Recrystalization(再結晶化)   Recalcification(再石灰化) 形成後のエナメル質には細胞がなくなっているので再生そのものができない。修復とは沈着と歯磨きによる研磨作用をいう等の用語もありわかりにくい。

再石灰化については、下記にように論者により定義がことなる。

  1. 再石灰化とは、初期虫歯の休止や後戻り(Silverstone1988)。
  2. フッ素により形成されたフッ化カルシウムが脱灰部分の沈着修復の材料になる。
    FA(フルオロアパタイト)の形成は否定している(花王、押野2003)。
  3. FAが形成され脱灰部分の沈着修復の材料となる(ライオン中島2016)。
  4. フッ素の助けで、脱灰部分が唾液のカルシウムとリンを再吸収すること。
    ヒトの歯は形成時にフッ素は不必要。サメなどはフッ素があると早く形成、なくても可能。
    (ライオン動画2分)http://clinica.lion.co.jp/oralcare/shoki-mushiba.htm

もともとむし歯では再石灰化(石灰沈着)が病変として観察されている。これは歯の脱灰に対する防御反応であり、唾液中のタンパクや無機塩が溶けた部分に沈着することや、脱灰部の結晶が大きくなること(結晶の表面積が大きくなり酸の入る隙間が減少する)をいう。

エナメル質虫歯の断面は表層から下に4層(表面層、病巣本体、混濁層、透明層)とその下の健全エナメル質からなる。表面層と混濁層の結晶は虫歯の他の部位や健全エナメル質の結晶のどれよりも優位に大きい(Silverstone1983)。透明層(石灰化層)では石灰化が起こり健全エナメル質より結晶は小さく緻密である。これは1960年代まで「う蝕抵抗性の獲得」といわれていた現象である。そしてなぜかこの頃から再石灰化という用語が出現(1965)し、水道水フッ素化国が増え、WHOの水道水フッ素化勧告(1969)に至っている。

実験的に作ったエナメル質う蝕では、表面から僅か0.3ミリまでの深さで反応は表面に起こる。

この再石灰化病変の際に起こる石灰沈着を人工的に起こし再石灰化と称しているのである。従って現在言われている再石灰化は、中性や弱アルカリ性で自然に起こる唾液中の過飽和な無機塩類(リン酸カルシウムなど)が萌出後の歯表面に沈着する(2~3年かかるエナメル質の成熟)健全な生理的反応ではなく、虫歯のある酸性下で強制的に沈着を起こさせる病的反応である。

つまり、再石灰化は起こるのか、起こらないのかではなく、現在言われている再石灰化という用語は、本来(防御反応である病変)とは違う意味で使われ一人歩きをしているといえる。

英文の文献には再石灰化治療やフッ化物治療(Fluoride Therapy)はフッ素を利用した微少充填治療であり、予防の決め手、自然治癒や体に優しい方法と宣伝されている。

Fluoride Therapyは、治療である以上、診断と治療は医療機関でやるべきである。磨きにくい見えない部分の虫歯は発見が難しく、X線でもわかりにくい。表面が崩れた虫歯になるまで4年から5年はかかるとされている。

日本では、エナメル質初期う蝕は病名になり、その治療は保険適応になっている(2017年2月)。

フッ素は平滑面う蝕(平らな表面)に効果があり、交合面(かみ合わせ)には効果がないとされ、溝を埋めるシーラントが利用されている。

 

いわゆる再石灰化のメカニズム(NaF:フッ化ナトリウムを使用)

 石灰化は病変である。もともと中性の環境下で体液(血液、唾液)中の過飽和なミネラル(主成分はリン酸カルシウム)が沈着する現象であり、尿管結石、腎臓結石、胆石、肺の石灰化、唾石、歯石、血石(歯肉縁下歯石)など多数ある。これらの石灰化には再石灰化という概念はない。

外界と交通している口腔内では、飲食物等の条件で酸性やアルカリ性に変化しやすく、エナメル質の脱灰(溶解)や唾液中の過飽和なミネラルなどの沈着による修復が常におこり得る。この沈着は唾液環境が中性になれば自然に起こり(受動的沈着:passive remineralization:といわれる )酸性下では起こらない。病的な石灰化を虫歯の修復に好都合と評価し、脱灰の起こる酸性の環境下での石灰沈着を期待したのが、フッ素が介入する再石灰化療法(Fluoride Therapy)である。従ってこの石灰沈着(主成分は諸説ある)は通常の石灰化ではなく、フッ素症に特有のカルシウム代謝阻害を主とする病変である。フッ素症では過剰となった血液中のフッ素イオンがカルシウムと結合して骨、関節や靱帯などの軟組織にも沈着する。同じ仕組みで口腔内のフッ素は掃除しにくく、細菌の出す酸により酸性下にある歯垢に濃縮される。かつて骨そしょう(脱灰)症の治療にフッ化ナトリウムが投与され、かえって骨が脆くなったため中止されたが、いまだに虫歯予防でのいわゆる再石灰化治療は全盛である。

う蝕実験では、フッ素が僅か(0.1ppm)でも歯の浸漬溶液中にあれば再石灰化が起こる(中山2016)としている。フッ素は歯垢(プラーク)中に濃縮され、水道水フッ素化では1ppmでも十分であり、10ppm(64ppmとする研究もある)位で効果を発揮する。この場合歯垢中には有機酸によるH+イオンが豊富にあり脱灰できる酸性下の状況にある。またNaFからのフッ素イオンが豊富であり、フッ化カルシウムやFAを形成し、低濃度のフッ化カルシウムからフッ素がイオン化してさらに再石灰化の供給源となる (つまり、食事中のカルシウムやお茶のフッ素でも十分であるはずである)、但し消費されるので毎日補給が必要としている。

実験う蝕では、再石灰化したとされる写真はあるが、これがFAである確証がなく、フッ化カルシウムでもない軟X線で白く写るため、フッ化カルシウム様物質と表現している(Featherstone 2000)。

エナメル質表層に再石灰化が起こると表面のみをふさいでしまい、中に沈着物が浸透できない(古屋ほか2002)とされる。またFAができる反応は加水分解なのでH2Oができて内部の結晶化が進まない。最初はACP(Amorphous Calcium Phosphate:無定形非結晶質のリン酸カルシウム:永久歯萌出後のエナメル質の成熟や、脱灰部分の沈着に関与:歯石と同じ成分でX線で白く写る不透過性)が形成され沈着するが、結晶化への変換は生体では未確認である。

しかしFイオンは歯垢中のHイオンの酸性度が強いほど多量のHF(フッ化水素ph4.7で1.27%,ph2.5で90%:成田試算2017)を形成し、その刺激により、う蝕抵抗性を示す再石灰化病変ができる可能性はある。

僅かなフッ素の予防効果があるとすれば、HFによる細菌への酵素阻害、糖代謝阻害の影響とも推測される。これらは歯垢の存在が前提(除去は不要)で従来の虫歯予防概念とは異なるものである。また歯ブラシは歯肉のマッサージ以外ではフッ素の運搬道具となる。フッ素洗口後30分以内のうがい禁止の根拠も示されていない(S.Wei 可児ほか訳本医歯薬出版1988)。

また低濃度頻回応用(250ppmを毎日行う)の効果が勝るが、週1回法(900ppm)を採用する理由は管理を優先しているものと思われる。

(結論)

いわゆる再石灰化は実験での再現性に乏しく、口腔内で起きたとしても歯石と同じく唾液中の過剰なリン酸カルシウムの石灰沈着に過ぎないといえる。

以上

2017 年12月15日  文責 秋庭 賢司

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