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遺伝子組換え表示制度に関する検討会はじまる~EU並みの表示制度は可能か?

1996年に日本に遺伝子組み換え食品が導入されて、約21年が経過しました。遺伝子組み換え食品については、消費者団体、生協や食の安全を求める市民団体が、国際的にも市民団体と連携しながら反対運動を続けてきました。(末尾参考:参照)

逆説的な言い方をすれば、遺伝子組み換え食品(以下、GM食品)への反対運動は、単に反対するだけでなく、食の原点や日々の食の在り方を見直す契機にもなりました。日本では栽培されていないことから、未承認のGM食品が流通することを防ぐために水際での検疫体制の強化やトレサビリティの導入、ナタネの交雑についての市民の調査活動はGMOフリーゾーン(遺伝子組み換え作物拒否地域)運動という国際的な反対運動との連携にもつながりました。GM大豆に対抗し、大豆畑トラスト運動なども進められてきました

重要なGM表示制度の問題

市民が一貫して求めてきたのは、GM食品への表示による、食べたくない人の権利を守る運動でした。このことは正確でわかりやすい表示によってしか消費者は情報を得ることができません。表示を求める署名運動なども幾度も行われてきましたが、業者の反対も強固で、表示問題が消費者庁に移管されてのち、表示の一元化の取り組みが始められた最後の課題としてようやく動き出したというのが現状です。

国は、厚労省と農水省が中心となって「遺伝子組換え食品の表示制度について、1997年から2000年までの検討が行われ、2001年4月から、JAS法及び食品衛生法に基づき、安全性審査を経た大豆、とうもろこし、ばれいしょ、なたね及び綿実の5つの農産物とこれを原材料とする24加工食品群に表示を義務付けました。その後、表示義務対象品目が追加され、現在は、食品表示法において、大豆、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜及びパパイヤの8つの農産物とこれを原材料とする33加工食品群等(下図)が遺伝子組換え表示の対象となっています。

【加工食品 33食品群】対象農産物
原材料 加工食品 33食品群
大豆 1.豆腐・油揚げ類、2.凍り豆腐、おから及びゆば、3.納豆、4.豆乳類
5.みそ、6.大豆煮豆、7.大豆缶詰及び大豆瓶詰、8.きなこ
9.大豆いり豆、10.「1から9」を主な原材料とするもの
11.調理用の大豆を主な原材料とするもの
12.大豆粉を主な原材料とするもの、13.大豆たんぱくを主な原材料とするもの
枝豆 14.枝豆を主な原材料とするもの
大豆・もやし 15.大豆もやしを主な原材料とするもの
とうもろこし 16.コーンスナック菓子、17.コーンスターチ、18.ポップコーン
19.冷凍とうもろこし、20.とうもろこし缶詰及びとうもろこし瓶詰
21.コーンフラワーを主な原材料とするもの
22.コーングリッツを主な原材料とするもの(コーンフレークを除く。)
23.調理用のとうもろこしを主な原材料とするもの
24.「16から20」を主な原材料とするもの
ばれいしょ 25.ポテトスナック菓子、26.乾燥ばれいしょ、27.冷凍ばれいしょ
28.ばれいしょでん粉、29.「25から28」を主な原材料とするもの
30.調理用のばれいしょを主な原材料とするもの
アルファルファ 31.アルファルファを主な原材料とするもの
てん菜 32.調理用のてん菜を主な原材料とするもの
パパイヤ 33.パパイヤを主な原材料とするもの

表示は、従来のものと組成等が同等のものについて、「遺伝子組換えのものを分別」及び「遺伝子組換え不分別」の場合は義務表示、「遺伝子組換えでないものを分別」及び「組み換えられたDNA等が検出不可」の場合は任意表示となっています。従来のものと組成等が著しく異なる場合は義務表示となっています。現在、遺伝子組換え表示が義務付けられている品目は、8農産物とこれらを原材料とした33加工食品群です。主な表示義務対象品目は、豆腐、納豆、みそ及びコーンスナック菓子であり、現在のところ、しょうゆ、大豆油等の植物油脂及び液糖などは義務表示の対象外となっている。日本では、最終製品において組み換えられたDNA等が検出できない品目については、義務表示の対象外としており、韓国やオーストラリア等も同様である。EUでは、DNA等の検出の可否にかかわらず、表示が義務付けられている。意図せざる混入率は、国によりそれぞれ異なっており、日本では5%、EUでは0.9%となっている。なお、米国については、現在のところ、詳細は不明である。」

「」内は下記の2017年4月18日 第1回遺伝子組換え表示制度に関する検討会 資料2

遺伝子組換え食品の表示制度をめぐる情勢 平成29年4月消費者庁食品表示企画課より抜粋(当該資料は現状の表示制度を理解するためによく整理されています)

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/genetically_modified_food_170426_0003.pdf

表示制度はどうあるべき?

今回の表示制度の検討趣旨は、2017年4月18日の第一回の開催資料によれば、「遺伝子組換え表示の在り方については、食品表示法の制定過程における「食品表示一元化検討会」において、一元化の機会に検討すべき事項とは別に検討すべき事項と位置付けられ、消費者基本計画(平成27 年3月24 日閣議決定)においては、インターネット販売等における食品表示や加工食品の原料原産地表示等と共に、個別課題として実態を踏まえた検討を行う事項と整理されている。
遺伝子組換え表示制度は、その導入から約15 年が経過しており、この間、遺伝子組換え食品のDNA等に関する分析技術が向上している可能性や、遺伝子組換え農産物の作付面積の増加により流通の実態が変化している可能性がある。
そのため、消費者庁において「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(以下「検討会」という。)を開催し、自主的かつ合理的な選択の機会の確保を実現するために消費者が求める情報及び遺伝子組換え農産物の流通状況等を踏まえ、今後の遺伝子組換え表示制度の在り方について幅広く検討を行うこととする。」とされています。(下線および太字は著者)

遺伝子組換え表示は、選択に資するための表示として15 年前に導入されましたが、表示義務のあるものには遺伝子組換え作物は使われず、義務でないものへの使用が広がり、結果として表示によって選択できる環境でないまま、また制度への理解が進まないまま現在まで来ました。その間に世界の遺伝子組換え農産物の作付け面積は40 倍にも増え、日本が大量の遺伝子組換え作物の輸入国であることも多くの消費者は知らずにいます。

今の表示方法は「遺伝子組換え」、「遺伝子組換え不分別」、「遺伝子組換えでない」(任意表示)の3 つですが、実際に「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」といった表示を目にすることは少なく、役に立つ情報とはなっていません。また、「不分別」といった表現もわかりにくいものです。この「遺伝子組換え不分別」という表示を正しく理解している消費者はきわめて少なく、見て理解できなければ表示の意味がありません。「不分別」表示は、遺伝子組み換え原料を使っているか使っていないか分からない消費者を惑わすあいまいな表示です。

日本では8作物が遺伝子組換え作物として販売流通が認められていますが、遺伝子組換えである場合に表示義務があるのは、8作物と、それを原料に使用した納豆、豆腐、味噌など33 種類の加工食品に限られていますが表示義務の対象でない食用油や醤油などのほとんどが遺伝子組換えあることが消費者はわかりません。義務対象のものに「遺伝子組み換えでない」との記載が多いことから、食品の購入にあたって、遺伝子組み換えか否かを「選択できている」と考えている消費者も多いようですが、全くの誤解です。

では、義務表示品目を増やせばよいかといえば、表示義務の対象品目が限られているのは問題として義務表示の拡大がされてきたわけですが、現実には表示義務の対象となっている33 食品群*を覚えることはむずかしく、食生活をその33 食品群だけで済ますことはできず、遺伝子組み換え食品を食べたくないと考える消費者にとって、ほとんど参考にならない制度となっています。

もう一つの大きな問題は、意図せざる混入率5%が高すぎるということです。海外に目を転じると、EU0.9%、オーストラリア・ニュージーランド1%、韓国3%となっており、日本の高さが目立っています。さらに、意図せざる混入の場合、5%以下なら「遺伝子組み換えでない」と表示できるのも問題です。「遺伝子組み換えでない」という表示をみれば、このルールを知らない消費者は「この食品には遺伝子組み換え原料は入っていない」と判断するでしょう。ところが、実際は入っている可能性があるわけですから消費者を誤解させる表示と言えます。

消費者が望む遺伝子組み換え表示制度は、食品添加物のように、すべてのGM食品を義務表示の対象とすることと、意図せざる混入率はEU並みの0.9%に引き下げることが理想です。DNA技術の進化で醤油などの加工品や飼料への表示が可能となること、また、トレサビリティの考え方や見直しで望ましい表示制度は可能かもしれません。

審議会は5回開催され、団体からのヒヤリングなども行われています。消費者庁の審議の行方を注目しましょう!

第6回開催の傍聴が公示されました。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/genetically_modified_food_171107_0001.pdf

1.日時
平成29 年11 月17 日(金) 14:00 ~16:00
2.場所
中央合同庁舎第4号館 共用220 会議室(2階)
東京都千代田区霞が関3-1-1
3.議題
(1)遺伝子組換え表示の表示方法の考え方
(2)その他

 

(古賀 真子)


 

(参考)

GM食品問題については、Vision21の安田節子さんのHPが参考になります。

http://www.yasudasetsuko.com/gmo/column.htm

生協・市民運動については、グリーンコープ生協のHPがわかりやすいです。

http://www.yasudasetsuko.com/gmo/column.htm

農研機構のHPより

http://www.naro.affrc.go.jp/nias/gmo/index.html

世界の栽培状況(2016年)

● 遺伝子組換え農作物の国別栽培面積

遺伝子組換え農作物の国別栽培面積

● 世界の遺伝子組換え農作物栽培面積の推移

世界の遺伝子組換え農作物栽培面積の推移

● 世界の主な遺伝子組換え農作物の作付面積比率

世界の主な遺伝子組換え農作物の作付面積比率

● トウモロコシの輸入と国内の利用状況

トウモロコシの輸入と国内の利用状況

● ダイズの輸入と国内の利用状況

ダイズの輸入と国内の利用状況

日本で承認されている遺伝子組換え農作物等リスト

● 生物多様性に影響がないと確認されたもの

農林水産省ウェブサイト内「カルタヘナ法に基づく生物多様性の保全に向けた取組>遺伝子組換え生物等の承認と確認>第一種使用規程の承認状況」より
http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/torikumi/(農林水産省ウェブサイトに移動します。)

遺伝子組換え農作物(平成29年5月18日現在)

アルファルファ 6件
イネ 24件
カーネーション 13件
シクラメン 2件
セイヨウナタネ 19件
ダイズ 50件
テンサイ 2件
トウモロコシ 102件
バラ 4件
パパイヤ 1件
クリーピングベントグラス 1件
ワタ 44件
合計 268件

遺伝子組換え樹木(平成29年5月18日現在)

ギンドロ 2件
合計 2件

遺伝子組換え動物(平成28 年5 月25 日現在)

カイコ 6件
合計 6件

● 食品としての安全性が確認されたもの

厚生労働省ウェブサイト内「遺伝子組換え食品>遺伝子組換え食品及び添加物の安全性に関する審査状況>安全性審査が終了し公表された遺伝子組換え食品及び添加物リスト」より
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/idenshi/index.html(厚生労働省ウェブサイトに移動します。)
(平成29年5月1日現在)

食品

じゃがいも 8品種
大豆 25品種
てんさい 3品種
とうもろこし 203品種
なたね 21品種
わた 45品種
アルファルファ 5品種
パパイヤ 1品種
合計 311品種

食品添加物

α-アミラーゼ等、合計25品目

● 飼料としての安全性が確認されたもの

農林水産省ウェブサイト内「飼料の安全関係>飼料安全法に基づく基準・規格等>組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性に関する確認が行われた飼料及び飼料添加物一覧」より
http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/siryo/(農林水産省ウェブサイトへ移動します。)
(平成29年1月26日)

飼料

なたね 17件
とうもろこし 25件
大豆 18件
わた 19件
てんさい 3件
アルファルファ 3件
合計 85件

飼料添加物

リボフラビン等、合計8件

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