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再稼働すれば電気料金は下げられるは本当か?~関電高浜原発3・4号機の再稼働に伴う電気料金値下げ

関電の「原発再稼働で値下げ」はなぜされたの?

2017年7月21日の電力・ガス取引等監視委員会の料金審査専門会合(以下、専門会合)の査定を経て、8月1日付で、関西電力は、高浜原子力発電所3・4号機の再稼働を受け、平均4.29%(規制分野3.15%、自由化分野4.90%)の電気料金の値下げを行いました。本来、値上げには監督庁の認可が必要ですが値下げの場合は届出だけでよいはずですが、今回はなぜ、値下げなのに査定がされたのでしょうか。

関西電力は3.11以後、全国の原発が停止してから、2度の料金値上げをしています。(注1)。2015年5月の再値上げ(注2)は、電源構成変分認可制度(注3)により行われました。関西電力の再値上げ査定の際には、高浜原子力発電所3号機は2015年11月9日から、4号機は2015年11月30日からの再稼働が予定されていました。しかし、実際には、3号機は2017年6月16日、4号機は2017年7月4日から本格運転(再稼働)が再開されました。いわば、原発が動かないことによる他の燃料費等の焚き増しによる収益悪化を主な理由として2度の値上げをした以上、原発が再稼働すれば速やかにその分を値下げすべきとの「条件付き値上げ」の一部条件成就による強制的な値下げだったといえます。

電気料金認可制度の今

もともと、小売規制料金については、地域独占と総括原価方式のもと「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」であるかを確認するため、値上げ・値下げの如何を問わず、経済産業大臣の認可を受けて行われるとされていました。しかし、電気事業制度改革を進める中で、料金算定ルールの透明性を確保した上で行政の関与を少なくし、電力会社の自主的な経営効率化の効果を需要家に機動的に還元する観点から、2000年に料金値下げ時の届出制が導入されたのです。(電気料金制度については下記参照)

事業環境の変化を踏まえた 料金改定手続について 2017年7月7(資源エネルギー庁)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denryoku_gas/denryoku_gas_kihon/pdf/004_08_00.pdf

電力システム改革が進められる中、2016年4月から電力の小売り自由化が始まりました。「だれでもどこでも自由に電気が選べる」をうたい文句にはじまっています。消費者委員会の調査などによるとスイッチングは思ったほどすすんでいません。(注5)。電気料金制度については、その経緯から自由化後の料金の妥当性や規制の残る託送料金のしくみまで、まだまだ消費者の理解がすすんでないことが、とかく安ければよい、値下げなら手放しで歓迎ということになりやすいように思えます。

はじめての値下げ査定

専門会合の査定は、再稼働にともなう関電からの供給約款変更認可申請の提出に基づき、「高浜原子発電所3号機。4号機の再稼働に伴い、火力燃料の焚き減らし等による料金原価低減分の値下げが適正になされているか」を確認するものでした。(『』内は専門会合資料より。下線は筆者)

これは、2015年5月の関西電力の供給約款変更認可申請にかかる査定方針で、『「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議報告書」(2012年(平成24年)3月)で、料金改定実施後、その改定の原因となった事象が解消された場合には、再度料金改定を行う必要がある。」今回の関西電力の値上げ申請は、浜原子力発電所及び大飯原子力発電所の再稼働時期の遅れを理由とするものでしたから、高浜原子力発電所及び大飯原子力発電所が再稼働した場合には、値上げの原因となった事象が解消され、値下げを行う必要が生ずることとなる。値上げ認可時に、電気事業法第100条に基づき、原因となった事象が解消された場合には速やかに料⾦値下げを実施するよう、条件を付す。値下げの具体的な内容については、以下のとおり考えるべきである。

(参考)申請の前提

今回の関西電力の申請においては、高浜原子力発電所3号機が平成27年11⽉30に、4号機が平成27年11⽉9にそれぞれ再稼働することを前提として、前回認可時よりも増加する燃料費等の追加費用が計上され、値上げ率が算定されている(大飯原子力発電所が原価算定期間内に再稼働することは想定されていない。)

2015年5月の関西電力の供給約款変更認可申請にかかる査定方針によれば、具体的な値下げの条件については原価算定期間内、想定より遅れた場合、算定期間終了後について分けられ、値下げ率については決めず、電気料金審査専門小委員会(現、料金専門会合)でのフローアップを通じ、適正な値下げがされることを確認する。・・少なくとも一昨年(平成25年)改訂以前の水準まで、着実に電気料金を下げていくことを目指すべきである』とされています。

今回のフォローアップは値上げ条件解消の場合の義務的値下げについて値下げ幅の妥当性を審査するものであり、再稼働後3か月内に値下げをするという「条件」に合せたものでした。(2015年6月の値上げの認可に際しては、消費者委員会による審議等を踏まえ、消費者庁が取りまとめた「関西電力の家庭用電気料金値上げ認可申請に関するチェックポイント」の中で、原価算定期間終了後に原発再稼働した場合の値下げについても意見がだされていました。(注6))

原発再稼働と電気料金値下げには相関関係なし?

3.11以降、市民・消費者団体は、①原発を大きく減らす②自然エネルギーを大きく増やす③電力(ガスを含むエネルギー)制度の自由化を進めることを目的にエネルギー政策を注視し、再生エネルギーへのシフトを目指した活動を続けてきました。今回、関電が再稼働し電気料金の値下げがされることについては、日本商工会議所からのオブザーバー委員からは、単純に再稼働を歓迎する発言がありましたが、消費者代表委員(辰巳委員)からは、高浜原発のコストを検証すべきとの意見もでました。また、関電の地元のオブザーバー委員(原委員)は、「再稼働のメリットのロジックがあいまい。再稼動によるデメリットはどう料金に反映されるかは吟味してほしい。原発のリスク管理のための安全対策やそのほかコストをどう入れているか、将来発生する原発のコストとリスクどう考えるかきちんと議論したうえで、正しく折り込まないと正しい判断はできない。原発に頼る電気はいらない」と発言しました。

再稼働コストはどれくらいかかるかについては、それぞれの費用項目に溶け込んでいて明言は難しいと関電は言います。

今回、原子力発電について、208億円の削減がされています。定検台数が3台から1台になったことで184億円の削減ができたとされています。

原発関連で大きな数字は、設備投資額の中の安全対策費用です。設備投資そのものは2011年から減少していますが、2011年以降、原発の安全性向上対策費用が計上されています。注目すべきは2011年から始まった原発安全対策費の設備投資額総額に対する割合が、2011年が4%、12年6%に対して、13年から16年の4年間では平均25%強となっていることです。新規の投資の4分の1を原発安全対策費用が占めているのです。発電コスト(のみ)の安い原発を再稼働されれば値下げの原資が生ずるとの説明ですが、この先も安全対策には追加費用がかかると思われます。最終処分問題も解決されない中、「動かせるものは動かす」という政策を維持することに問題はないでしょうか。(エネルギー基本計画については次回)

経営効率化による値下げ分とは?

結論からいえば、値下げは消費者にとっては歓迎すべきものです。しかし値下げ幅が適当かどうかは2度の値上げをしたことからも厳しくチェクされる必要があります。関電の説明資料では、冒頭、「今回の電気料金の値下げは、2度の値上げによりご迷惑をおかけしたお客様に高浜発電所3,4号機の運転再開による火力燃料等の削減分と、経営効率化の深掘りの成果等を、ご使用量が多くなる夏場に向けて、出来るだけ早くお返しすべく実施いたします。」とされています。

値下げ原資877億円の中身は?

注目すべきは、今回の値下げでは、燃料費だけの削減では値下げの原資全部にはなりえなかったという事実です。

今回、関電の値下げ原資は877億円とされています。2017年7月11日の料金専門会合(注7)の資料4-1の3頁では、「値下げ後の原価は1兆9538億円とされ、値下げ前の料金収入2兆415億円に比べ、▲877億円の値下げとなり、値下げ率は平均4.29%となります。」とされています。

この値下げ前の料金収入は、今回の原価算定の前提となる販売電力量と値下げ前の電気料金単価により計算されています。関電の資料によると、値下げ前の原価は2兆8967円(販売電力量を1457億kwhで計算)と算定されていますが、値下げ後の原価は1兆9538億円(販売電力量は1144億kwh)とされています。つまり313億kwh分という見込みの8割にも満たないほど、販売電力量が大幅に減っているのです。小売りの自由化による競争による顧客の流出、省エネの普及など電力需要が減っていることによるものでしょうが、売上見込みが下がったことにより、値下げ原資も減っているとされているのです。

では、減った原資はどこから補われたのでしょう。原価の全体の減少は9429億円ですが、その差額そのものが値下げ原資ではなく、877億円が値下げ原資とされています。しかもそのうち高浜3・4号機再稼働による値下げ分は410億円に過ぎず、関電の経費節減努力による467億円が値下げの原資として計上されています。

値下げ原資は経営効率化によるものとされていることについてみてみましょう。修繕費は427億円減少しています。過去に緊急避難的に繰り延べられた修繕工事の費用の原価への上乗せを行わず、経営努力による原価の削減が行われ、火力燃料費の削減分を上回る値下げが経営効率化によってもたらされているとされています。減価償却費、公租公課も減少していますが、人件費は増えています。

再稼働分と経営効率化等により、原価減少の9.3%が値下げの原資で、高浜再稼働によるものはその46.7%ということですので、約4.3%が計算上の再稼働による値下げ分となるようです。

再稼働と値下げ原資の計算は?

この、再稼働することによる値下げ原資の計算はとてもわかりにくいものです。公共料金等専門調査会で関電に質問したところ、「原発稼働との関係では、稼働率16.2%という今回の織り込みが、従来の料金の折り込みが稼働率7.2だったので、稼働率としては9%改善をして、稼働率1%について46億円を掛けた410億円が値下げ原資にあたる。仮にこれを0%(非稼働)と比較すれば、単純に七百数十億円のメリットということで16%分ということになるが、いわゆる可変費としては根っこからといいますか、全く動かない場合と16%の違いは七百数十億円というのは計算結果として出てまいります。」ということでした。稼働率見込みの差額を稼働率1%あたり46億円のメリットがあるという計算のようですが、その計算根拠は消費者には理解しにくいと感じます。数字から見れば確かに平均4.29%の値下げと整合的といえますが、これを再稼働による値下げと説明することには無理がないでしょうか。しかも、この中には再稼働コストや今後将来的に発生するコストを全く含んでいないのです。

また、燃料費は1兆477億円から半分近い5225億円に減少しています。これは経営効率化の効果とはいえません。値下げ前後の原油価格と為替レートは大きく変動しています。燃料費や購入電力料が減っているのは原発再稼働のおかげではなく、前回の原油価格105.9($/b)が55.2($/b)に、為替レートが78.9(円/$)が112.7(円/$)となっています。燃料費の削減は自助努力ではなく国際経済情勢の変化によることが大きいのです。

再稼働反対の声に対して、関電が再稼働で電気料金を値下げしたと強調することについては大いなる疑問があります。

値下げは2回目の値上げの際に課せられた縛りによるもの、実際に値下げの原資に再稼働が貢献しているかについては再稼働コスト等の厳密な検証がされるべきだと思います。

電気料金はどこまでさげるべき?

低圧分野の料金(従量Aの平均的なモデルにおける支払額の推移) 赤数字は燃料費調整費

公共料金等専門調査会で追加された説明資料(注8)41頁には、低圧分野の料金(従量電灯Aの平均的なモデルにおけるお支払額の推移)がしめされています。調査会で関電に質問した平成25年5月以前のグラフも追加したものを示します。

一番左の部分は調査会で関電に答えていただいた数字をいれたものですが、第一回の値上げ前の水準と比較して、今回の値下げでもまだ15%以上も高いことがわかります。(うち約1%は燃料等調整費で低減化されています。)

関西消費者団体連絡懇談会(事務局長飯田秀郎さん)が関電の従量電灯A(標準的な月使用量260KWh)の月額料金(税抜)の推移をまとめました。

関西電力の従量電灯A:標準的な月使用量(260kwh)の場合の月額料金(税抜き)の推移

今回の値下げでも最初の値上げ前まで下がっていません。

関電に限らず、燃料費調整費の低減により、他の電力会社についても電気料金を下げることができる要因として再度検証してみる必要がありそうです。

託送料金はなぜ下がらないのか

今回、関電の説明によれば、関西エリアの電力需要の大幅な減少に伴い、託送料金の単価は上昇するとの検討結果がでたとされています。低圧電力の場合、現行の単価7.81円/kWhに対して関電の算定結果では7.94円/kWhとなるとされています。今回は現行の託送料金が決められてから1年程度であるため「混乱を避けるために」託送料は据え置くとされています。

関電の説明によれば、「託送原価は想定されていた電力需要が1486億kWhだったのに対して、今回の需要が1346億kWhと140億kWh減少したため、125億円分減少したとされています。しかし、現行の託送原価は7055億円(2015年認可)を電力需要1486億kWhで除して4.75円としたものですが、今回は託送原価を6557億円とし、需要量1346億kWhで除すと4.87円になるところ、125億円分を填補することで4.75円の託送単価を維持したということです。規制料金である託送料金を値上げするとなれば再度の査定が必要となります。「混乱をふせぐため」というより、査定を避けるために飲み込んだと言った方が正確ではないかと思います。早く消費者(お客様)に利益還元するための需要期である8月に向けた迅速な値下げという説明には少し無理があるように思います。

一般的には電気料金が下がれば託送料金も下がると思うでしょう。「発電分のうち送配電に必要な分を託送原価に入れる。」と言われ、実際に30%程度が託送原価に算定されている現実からすると、燃料費減少分が託送原価に反映されないということは、特に新規事業者にとっては納得しがたいことでしょう。一般電気事業者が託送網を独占し、託送料金が規制料金であることから考えると、今回のように再稼働により強制された値下げでは託送料金は「需要の減少により本来上がるべきところ据え置いた」との説明についていまのところ疑問の声はでていないようですが、電力自由化のなかで、電気料金や託送料金を今後どう算定するかについては改めて緻密な議論が必要です。

(古賀 真子)


(注1)平成24年11月、経済産業大臣宛てに、原価算定期間を平成25年度から27年度の3ヵ年とする平均11.88%の規制分野料金の値上げ認可申請。(自由化分野は平均19.23%)その後、公聴会、電気料金審査専門委員会、消費者庁でのチェックポイントにもとづく検証等を経て、平成25年4月2日に経済産業大臣より、規制分野で平均9.75%の値上げ実施の認可。同年5月1日より実施。(自由化分野は平均17.26%)

(注2)平成26年12月、電源構成変分認可制度に基づき、電気料金の値上げにかかる電気供給約款の変更を申請し、平成27年度の電気料金について、平均10.23%の規制分野料金の値上げ認可申請。(自由化分野は13.93%)その後、公聴会、電気料金審査専門委員会、消費者庁でのチェックポイントにもとづく検証等を経て、平成27年5月12日に経済産業大臣より、規制分野で平均8.36%の値上げ実施の認可。同年6月1日より実施(自由化分野は平均11.50%)

(注3)2012年料金値上げ後の電源構成変化に応じた機動的な料金. 改定を可能とために導入された制度。電気料金値上げの認可を経ていることを条件に注1、当該原価算定期間内において、事業者の自助努力の及ばない電源構成の変動があった場合に、総原価を洗い替えることなく、当該部分の将来の原価の変動のみを料金に反映させる料金認可改定。

【参考】電源構成変分認可制度の概要
http://www.cao.go.jp/consumer/history/03/kabusoshiki/kokyoryokin/doc/140820_shiryou1_1_part5.pdf

(注5)電力・ガス小売自由化に関する消費者の意識について

平成29年3月2日

内閣府消費者委員会事務局

電力・ガス小売自由化に関する消費者の意識について
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/doc/028_170302_shiryou2.pdf

(注6)

  • 原価算定期間終了後に再稼働する場合は、原則として、1基再稼働するごとに値下げを行うべきである。この場合、原価算定期間内に値下げする場合と同様に、再稼働の翌々月までを値下げの実施時期とすべきである。
  • 値下げの実施時期や値下げ率等の適正性を確認・検証するとともに、広く情報を公開する観点から、値下げの時期を問わず、電気料金審査専門小委員会(※現在の料金審査専門会合)によるフォローアップが必要である。等の条件が盛り込まれました。

(注7)

*関電の専門会合資料

電気料金値下げについて
http://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_electricity/pdf/025_04_01.pdf

経営効率化への取組みについて
http://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_electricity/pdf/025_04_02.pdf

(注8)

*関電が、第30回公共料金等専門調査会に提出した資料

電気料金の評価について
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/doc/030_170317_shiryou1.pdf

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