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なんでもかんでも託送料に入れて見えない形で国民負担?~審議の公開と慎重な審議を求める要望書を提出しました

経済産業省が、東京電力福島原第一発電所で起きた事故の賠償や廃炉費用が20兆円を超えるとの試算をしたとの報道されています。電力システム改革を進めていく中で、これらの負担をどうするかについては、さまざまな審議会やWGが作られて、議論がされています。

託送料金での回収の問題点を説明する大島堅一教授

託送料金での回収の問題点を説明する大島堅一教授

2016年9月20日、経済産業省は、「東京電力改革・1F問題委員会(東電委員会)と「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」を設置しました。福島第一原発や事故処理にかかる費用のほか、他の大手電力が保有する原発を含む廃炉費用を原則としてすべての電力利用者に負担させる方向で調整するための検討の場ではないかとされています。

・「東京電力改革・1F問題委員会」(「東電問題委員会」)
http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160920007/20160920007.html

・「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(「貫徹小委員会」)
http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160920006/20160920006.html

これらの委員会では、廃炉費用の一部、および福島第一原発事故の事故処理・賠償費用の一部を「託送料金」のしくみを利用して回収できるようにする議論が、12月(今月)中旬にも取りまとめられようとしています。

 原発事故の責任追及、原子力政策の国民的議論なく、国会での議論もなく、拙速に決めてしまうことに対し、多くの市民・消費者、新電力会社、国会議員、専門家から反対の声が上がっています。(参考)

2016年11月28日、CNJは、経済産業大臣と貫徹小委員会に対して、拙速な結論を出さないよう要望書を提出しました。


2016年11月28日

経済産業大臣

世耕 弘成 様

総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会

電力システム改革貫徹のための政策小委員会 小委員長

財務会計ワーキンググループ 座長 山内 弘隆 様

 

特定非営利活動法人コンシューマネット・ジャパン

 

要望書

 

電力システム改革の趣旨を真に貫徹するため、廃炉費用等の安易な託送料への上乗せを認めず、東京電力改革・1F問題委員会の審議を公開し、電力システム改革貫徹のための政策小委員会(財務会計WGと市場整備WG)が拙速に結論をださないよう、エネルギー政策についての情報公開と徹底した議論を求めます

 

 

特定非営利活動法人コンシューマネット・ジャパンは電力システム改革以後、消費者の立場から、関係審議会を傍聴し、他団体とともに申し入れをしてきました。標記申入れについての理由を以下に示します。

1 電力システム改革における託送料に関する政策および議論の経緯

電力システム改革は、2015年には電力広域的運営推進機関の整備や、電力・ガス取引監視等委員会が設立され、2016年4月1日からは小売りの全面自由化が実施されるなど、電力システム改革のため複数の審議会等による議論により一連の施策が進められてきました。

2016年9月20日、経済産業省は、「東京電力改革・1F問題委員会(以下、東電委員会という、非公開で議論)と「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(政策小委員会はWGとして財務会計WGと市場整備WGがある)を設置し、2016年内に報告書を出すとされています。

一方、2016年9月16日、国が福島第一原発の廃炉費用などのために、新たに8.3兆円(廃炉費用4兆円、賠償費用3兆円、福島原発以外の廃炉費用1.3兆円)の負担について、託送料等を利用して回収するとの報道や同11月27日には、福島廃炉・賠償費が20兆円を超え、一部費用が電気料金に上乗せされる(国民負担が前提)との報道がされたために、市民団体や新電力などから大きな疑問や反対の声が上がっています。

電力システム改革は、3段階の過程を経て実現されるとされていますが、託送料については、発電・送電の分離にともない、発電所における一般送配電機能に関連する設備を、送配電設備に区分すること、電力システム改革と高経年化設備の増加による託送制度の抜本的見直しの可能性があることが記されています。ネットワーク利用の高度化、低廉な託送サービスの実現、安定供給の確保のための制度設計など、慎重な議論が進められてきたはずでした(第7回電気料金制度設計専門会合資料)。

2015年12月18日には小売り自由化後の送配電事業者である一般電気事業者10社について託送料金が認可されました。託送料金は、電気事業法附則第9条1項により、電力会社からの申請に基づき、経済産業大臣が電力・ガス取引等監視委員会の意見を聞いてパブリックコメントを募集し認可されたものです。

一方、2016年5月23日には、総理大臣の諮問に基づき、消費者委員会の下に電力託送料金に関する調査会(調査会)が発足し、そこでの報告書内容については電力・ガス取引等監視委員会も参考にするとされています。

調査会では、託送料金に関する海外の比較、コスト削減のための妥当な託送料金算定手法や資材・役務調達コスト等に掛かるさらなる効率化の手法、消費者への情報提供のありかたについてヒヤリングや調査が行なわれました。原価参入や配賦基準について、送配電部門における発電部門との切り分けや調達費用への厳しい監視、一層の効率化の要請が重要であるとされました。

その中で原発のコストが一部託送料金原価に算定されていることや、電源開発促進税や保留原価に係る、発電にかからないコストが政策コストとして託送料に入れられていることも議論がされました。しかし、全般的に政策経費がどれぐらい託送料に載せられているかについての疑義はだされたものの、資料も不十分で、この視点から意見を出すことについては意見の一致がみられなかったことから、政策コストについての問題については報告書には書かれませんでした。

2 託送料に上乗せすることの不当性

電力の小売り自由化にともない、地域独占と総括原価方式で守られてきた料金規制は根本から変わるわけですが、2020年までは電気料金については経過措置料金、託送料金、インバランス料金、混雑送電線の使用料金、電源線建設費用負担(特定負担)などは規制料金として残ることになります。これまで、総括原価方式や特措法で対応してきた必ずしも公平でない「公平な負担」をどう新制度設計するべきかということになりますが、この議論が十分にされないままに、広く不透明なままに一番回収しやすい託送料での回収を措置しようとすることに根本的な問題があります。

そもそも、電力システム改革で目指したものは、消費者にとっては、低廉で安定的でクリーンなエネルギーを選択できること、電力のステークホルダーにとっても非効率的な市場から、全企業、全消費者の知恵を集める、透明で公正で効率的な、ビジネスチャンスに溢れた競争市場に変えていくことであったはずです。我が国の資源事情に親和的な再生エネルギーを普及させ、国民の多数が望んでいる脱原発のエネルギー市場の実現のためにも、託送料金はそのための重要なピースであり、透明で効率的な料金の形成が重要であり、不透明なコストを上乗せすることは許されません。

3 原子力コストの負担についての議論は別にすべき

今回の原子力のコスト負担を託送料で回収するとの案については、原子力救済・延命策構築にむけた動きであるとの警戒する声があります。東電委員会が非公開で廃炉費用の路線を決定し、公式の財務会計WGではその結論に添った議論を求められているとの見方もあります。

東電委員会は事故炉廃炉費用、損害賠償費用(東電を含む原子力事業者)について議論し、財務WGは減価償却や引当金の在り方も含む一般廃炉関連費用について議論を、市場整備WGはベースロード電源市場、非化石価値取引市場などを原子力のための市場創設についての議論を含んでおり、それぞれが重大なエネルギー方針に関わる審議の場であるにもかかわらず、わずか3か月で、これまでの託送料について積み上げてきた議論等を無視し、青天井ともいわれる原子力コスト等をすべて託送料で回収しようとすることは、到底国民の理解を得られるものではありません。

4 エネルギー政策について、情報公開と徹底した議論を

エネルギー政策そのものについての議論をここで述べることはできませんが、再処理や核燃リサイクルなど多方面の問題の解決が困難ななか、経済合理性を欠くとされながら国策として行われてきた原子力政策やそれを支えてきた会計制度そのものも見直すことが必要です。

今回に限らず、現在の原発会計制度で、使用済み燃料再処理費用や原子力発電施設解体費が企業会計上も電気料金算定上も計算に含まれることになったのは、本来電力会社(と原発事業に依拠しそれを支援している国家)とそれ以外の一般需要家との契約であるべきところ、これまで需要家には知らされず、電気料金という逃れられない形での負担を強いられてきた歴史を振り返る必要があります。事後的に追加費用を一方的に順次上乗せして、その算定方法も国民負担に押し付ける形で変更し続けていることが、今回当たり前のように託送料に廃炉費用や損害賠償費用まで入れ込もうとする暴論につながっているといえます。

国の政策や制度を支えるのは法律だけでなく、健全な会計制度でもあります。電気事業法も政策でゆがめられないよう会計原則に立ち戻り、エネルギー政策を支えるあるべき費用負担について根本から議論し直す必要があります。

以上

 


(参考)

*2016年11月28日には自然エネルギーで豊かな日本をつくろう!アクションが院内集会を開催し、生協を中心に国会銀もふくめ100人近くの参加者がありました。大島堅一さんが基調講演、

http://shizen-ene.blog.jp/archives/1062758356.html

 https://www.facebook.com/video.php?v=1111427485639048


*市民団体である、パワーシフトキャンペーンは新電力へのアンケート調査をしたり、「原発コスト転嫁の前に責任の明確化と政策見直しを」とうったえる賛同署名も始めています。

署名提出 http://power-shift.org/info/160921/

新電力アンケート紹介 http://power-shift.org/info/activity_161124/

【声明】「原発コスト安」は嘘だった-国民への8.3兆円負担転嫁ではなく政策転換を

2016年12月14日には院内集会が予定されています。

「原発の事故処理・賠償費用、廃炉費用の負担~誰がどのように負担するか(仮)」

日時: 1214日(水)11:0013:00

場所: 衆議院第一議員会館 多目的ホール

主催: 原子力市民委員会、原発ゼロの会、市民電力連絡会 eシフト、パワーシフト・キャンペーン、


(補足)

託送料金とは

託送料金とは、電気を送る際に電力会社が必ず利用する送配電網の利用料金をいいます。
新電力会社だけではなく、既存の大手電力会社も送電線網を利用する際には”共通の義務”として、各社が売った電気の量に応じて、地域ごとに決まっている託送料金を負担します。電力自由化前は電力市場は地域ごとの独占事業でしたので、発電事業者と送配電事業者、小売事業者は一体化していました。自由化によって、小売事業者が私たちの家庭に電気を売るためには送配電網を利用するための託送料金を負担しなければなりません。

これまで、地域独占と総括原価方式で電気料金は規制料金として、値上げの場合は物価関係閣僚会議にかけることが必要でしたので、エネ庁の料金審査の審議会や消費者委員会の電気料金値上げ等調査会で厳しい査定や議論がされました。国民からの調査会や意見交換会も行われてきました。

自由化により、電気料金は規制料金ではなくなりましたが、託送料金は規制料金として残されています。送配電事業者と小売事業者との契約になるので、物価閣僚会議の対象ではなく、料金専門会合(電力・ガス監視委員会)が答申をだし、経済産業大臣が認可をすることになりまし。現在の託送料金は、2015年12月18日に認可されたものです。(*1)

これまで、発電も送電も小売りも一体化されてきましたが、小売が自由化されると、託送料金は送電会社の収益として送電会社の財務諸表に計上されることになります。託送料金算定には発電のコストが入ってこないように、算定規則に基づいたさまざまなルールがあります。(ここでは省略します)

託送料は電気料金の3割近くとされて電気料金を最終的に払う私たちにとっても、不当に高くされないように監視していく必要があります。2016年5月23日に消費者担当の河野太郎大臣(当時)託送料金にかかる専門調査会が設置されました。ここでは、託送料金について、海外との比較や、専門会合での議論、電力会社や調達にかかる効率化や、固定費の配布基準の妥当性、有識者からのヒヤリングがされました。しかし、本来託送料にいれるべきでないものの、政策的に入れられている電源開発促進税や使用済核燃料の再処理金などについての、政策(特定)コストを託送料金に上乗せすることについては、政策にかかわることとして十分な議論ができませんでした。(*1)

託送料金で廃炉費用や賠償費用まで回収していこうとする国の方針には多くの疑問があります。原発を巡る費用は巨額であり、廃炉会計の対象資産の問題以外にも、原発施設解体費用、使用済核燃料処理費用、放射性廃棄物の管理費用、事故が起きれば事故処理費用や損害賠償費用など、多くの費目があります。 それらの費用の一部も、貫徹小委員会のWGでの議論対象になっていますが、金額を含め、全体像は見えていないまま、託送料での回収がきめられようとしています。国民への正確な情報と徹底した議論が求められています。

(古賀 真子)

 

*1
託送料金の査定

震災後、①電気料金値上げ(料金査定を受けていない)社は、需要想定や人件費、修繕費、普及開発費等規制料金への折込単価・量なども含め査定がされた⇒北陸・中国・沖縄電力

②小売料金値上申請を出し査定を受けた社は、その査定された需要想定、折込単価・量等を前提に託送料金を算定した。これらを前提に、送配と小売・発電部門の配賦、電力システム改革に伴い送配電部門が備えるとされた費用、送配電部門内での費用の配賦(需要地近接性割り引きなど)の適正性を審査⇒全10社の託送料金が査定された。

*2
内閣府 電力託送料にかかる調査会

①2016年5月23日

・河野内閣府特命担当大臣御挨拶

説明者:山内弘隆 一橋大学大学院商学研究科教授

③2016年6月13日

・電力託送料金に関する送配電事業者からのヒアリング(東京電力ホールディングス株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社・北海道電力株式会社・中国電力株式会社)

  • 電力託送料金の査定方法等についてのヒアリング資源エネルギー庁、電力・ガス取引監視等委員会

http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/takuso/003/shiryou/index.html

④2016年6月29日欧米の電力託送料金制度に関するヒアリング 説明者:服部徹 電力中央研究所 社会経済研究所 上席研究員

⑤2016年7月8日http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/takuso/005/shiryou/index.html

⑥2016年7月15日(報告書)

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