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「栄養成分表示を活用しよう」をどうよむか~トランス脂肪酸の表示義務化は先送り

消費者にとって、表示は食品選択のための重要な情報です。2009年9月から内閣府消費者委員会の中に、食品表示部会ができ、直近では2016年6月29日に部会が開催されています。原料原産地表示や機能性食品表示など、消費者の知りたい情報と事業者の思惑のなかで議論が続けられています。

消費者庁のwebサイトには、栄養食品については、食品表示についての意義やルール、事業者の申請方法についての情報があります。

http://www.caa.go.jp/foods/index4.html#m04

この中で、食品表示法に基づく食品表示基準において、義務化した「栄養成分表示」について、消費者の活用を促すためとして、「栄養成分表示を活用しよう」の資料が掲載されました。

この資料は、事業者に表示を義務化し、消費者が意味を理解し、食品の選択や、バランスのとれた食生活に活用できることを目的に作成され、p4にあるワークシートを消費者一人ひとりが作成し、たんぱく質、脂質、炭水化物の一日目標量を把握して、食生活に活かせるようにとの意図でつくられたようです。

http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_161004_0003.pdf

p8 p11

資料は栄養素をバランスよくとることを強調がされていますが、この中の、トランス脂肪酸についての記述に注目してみましょう。

トランス脂肪酸は天然の植物油にはほとんど含まれず、水素を付加して硬化した部分硬化油の製造過程で発生します。これを原料とするマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどに多く含まれ、これらを原料とするパン、ケーキ、ドーナツ、クッキーといった洋菓子類、スナック菓子、生クリームなどにも含有されています。一定量を摂取するとLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させ心臓疾患のリスクを高めるといわれ、2003年のFAOとWHOによる共同勧告が発表されて以降、トランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国が増えています。

摂取に伴うリスクとして指摘されているのは、主として虚血性心疾患(冠動脈の閉塞・狭心症・心筋梗塞)の発症と認知機能の低下である。トランス脂肪酸は心臓病のリスクがいわれています。

トランス脂肪酸の健康影響に関する最近の科学的知見(消費者庁)によると、

  • 確証的な根拠(全て若しくはほぼ全ての研究で結果が一致している)・・・工業的に作られたトランス脂肪酸は、冠動脈性心疾患にかかるリスクを高める。冠動脈性心疾患につながるLDL(悪玉)コレステロールを増やすだけでなくHDL(善玉)コレステロールを減らす。こうした影響は過去に考えられていたよりも大きかった。
  • おそらく確実な根拠(大多数の研究で結果が一致するが、一致しない結果もある)・・・工業的に作られたトランス脂肪酸は、冠動脈性心疾患による死亡、突然死、および糖尿病にかかるリスクや、メタボリックシンドロームと診断される内臓脂肪の蓄積(腹囲)・脂質異常(コレステロール、中性脂肪)、高血圧(血圧)、高血糖(空腹時血糖)の数値を高める。
  • 今後の課題・・・現在、WHOでは集団におけるトランス脂肪酸の平均摂取量は最大でも総エネルギー摂取量の1%未満と勧告しているが、摂取が高い人々のことを完全に考慮していないので、このレベルを考え直す必要があるかもしれないと認めている。このことは、人が食べる食品から工業的に作られたトランス脂肪酸を排除する必要性に十分つながる。

WHO / FAOの2003年のレポートで、トランス脂肪酸は心臓疾患のリスク増加との強い関連が報告され、また摂取量は全カロリーの1%未満にするよう勧告されている[14]。平均的な活動量の日本人1日当たり約2グラム未満が目標量に相当する[15]。

トランス脂肪酸を大量に摂取させた動物実験では血清コレステロールへの影響は少なかった。一方、ヒトでの疫学調査ではリポ蛋白 (Lp-α) が増加する可能性が示唆されている[4]。リポ蛋白はHDLコレステロールの主成分の一つであるが、一部のHDLコレステロール(小粒子HDL)は動脈硬化や心臓疾患のリスクを高めるために有害である可能性が指摘されている。

また中年〜老年の健康な女性(43〜69歳、米国)を対象とした疫学調査では、トランス脂肪酸の摂取量が多い群ほど体内で炎症が生じていることを示すCRPなど炎症因子や細胞接着分子が高いことが示た。これについて、研究者は動脈硬化症の原因となる動脈内皮での炎症を誘発している可能性を指摘している。炎症因子についてはアトピーなどのアレルギー症へ悪影響をおよぼす疑いが提示されている。

摂取量が多い場合に、不妊症のリスクが高まる可能性がある。とされています。

こうした中、食品表示部会でもトランス脂肪酸の使用中止が議論され、少なくとも表示をおこなうべきという意見が出されましたが、日本は諸外国と比較して食生活におけるトランス脂肪酸の平均摂取量は少なく、相対的に健康への影響は少ないとの前提のもと、表示の義務化は見送られました。食品安全委員会の調査報告では、日本人が1日に摂取するトランス脂肪酸の平均は全カロリー中0.3%(食用加工油脂の国内の生産量からの推計で0.6%)で、米国では2.6%である。これはWHO勧告にある1%未満をクリアしていることから、日本人の大多数がWHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比の1%未満であり、通常の食生活では健康への影響は小さいと結論付けています。

しかし、これは日本人として「平均的」な食生活を営んでいる場合のことで、過剰なトランス脂肪酸を摂取してしまう人も存在しまする。また、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)に対する耐性が低い人も存在します。日本では消費者団体やインターネット上で反対運動がなされているほかには、ごく一部の企業がトランス脂肪酸低減に取り組んでいる程度で、政府や地方公共団体、業界団体は特段の規制を行っていません。

今回の「栄養成分表示を活用しよう」もトランス脂肪酸についての記述があります。とらないほうがよいことは伝わりますが、現実に表示が義務化されていないので残念ながら消費者としては明確に選択することはできません。

CNJではトランス脂肪酸の使用中止と義務表示化について要望していく方針です。

参考:wikipedia「トランス脂肪酸」(https://ja.wikipedia.org/wiki/トランス脂肪酸