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ガス自由化でガス料金は高騰しないか?ガス自由化小委員会に意見書提出を!

消費者団体でのガス自由化についての学習会

消費者団体でのガス自由化についての学習会

電力の自由化に続き、ガスの自由化の議論も進んでいます。ガスシステム改革は自由化と保安について別々の小委員会が設けられています。ガスシステム改革小委員会は14回開催されており、国民の意見も随時募集しています。私たちにとって望ましいのは、安定的で使いやすく環境負荷も少ないエネルギーとしてのガスの供給をできるだけ低廉に受けられることです。電力とは異なり、ガスは大規模な都市ガス業者は少なく、導管敷設やその後の保守にも多くの手間暇がかかります。料金やサービスだけでなく安全性も重要な問題です。

ガス事業法では都市ガスと簡易ガスを規制しており、今回の改正はこの2つの形態についてなされますが、一方でオール電化やLPGとの競合、簡易ガスや特殊な熱供給事業もあり、都市と地方では様々な事情があり、ガス小売市場は大変複雑です。電力自由化と並行して、電力会社のガス事業への参入や相互参入、他業種からの参入も予定されている中で、既存の簡易ガスやLPGなどとの競争環境をどうするべきか、料金規制や最終保証サービスをどうするか、自由化後の売り方や消費者への説明はどうあるべきか、多くの注目すべき論点があります。コンシューマネットでは、2014年10月23日にガスシステム改革小委員会あてに意見を提出しました。2014年5月27日の保安についての申し入れに続く意見書です。皆さまもぜひ、意見を出してください。


2014年10月23日

経済産業大臣               宮沢 洋一 様

ガスシステム改革小委員会               委員長  山内 弘隆 様

 コンシューマネット・ジャパン 共同代表 古賀 真子

共同代表 真下 俊樹

(エネルギーシステム改革市民委員会)

ガス自由化についての意見及び要望

2013111月に総合エネルギー資源調査会基本政策分科会の下に設置されたガスシステム改革小委員会(以下、「小委員会」といいます)では、ガスが低廉かつ安定的に供給され、消費者に新サービスなど多様な選択肢が示されるガスシステムの構築に向けた(一般ガス事業の)自由化の検討が進められてきました。小委員会では、導管が全国的に接続されていないなか、中小企業者が大半である一般ガス事業の実態やオール電化や他ガス事業との競合のなかで、電力システム改革による電力小売りの全面自由化と相まってエネルギーの相互参入や他業種との連携などの環境整備も念頭に置いた議論がされてきました。

自由化による競争の活性化が、新規参入形態を含めたガス事業者の独創的な経営戦略により、エネルギー選択肢の拡大と低廉な料金の実現がなされれば需要家(消費者)にとって歓迎すべきことです。しかしながら、これまでのガス事業の歴史的展開や、現在の自由化をめぐる議論の動向産業分野における利用計画の多様化に伴う天然ガスシフトの促進政策、系統電力需給のピーク緩和調整弁としての機能が天然ガス火力に期待されていることなどを考えると、今後のガス自由化によって家庭用の小口の需要家(消費者)にしわ寄せが起きる懸念があります。

私どもエネルギーシステム改革市民委員会では、これまで、料金値上げ認可の経過措置の必要性、消費者も参加した競争監視第三者機関の設置の必要性等について、小委員会に意見を提出してきました。

これまでの小委員会の議論を踏まえ、自由化における消費者利益を確保するために、消費者の立場から、改めて下記意見を提出させていただきます。

 

1.移行措置及びガス事業の競争監視第三者機関設置について

(第14回ガスシステム改革小委員会で示された“利用者保護のための措置”の小売料金規制に係る移行措置について)

小売全面自由化時の他事業者の参入容易性や、他エネルギーとの競争状況には地域差があることを考えると、現実的な規制なき独占が生じる懸念があります。事業者間の競争状況としては、LPガスやオール電化など他エネルギーとの競争や、小売全面自由化後のガス小売事業者間の競争などが考えられます。 

小委員会では供給区域内の平均的な他エネルギーとの競争状況を示す指標として、ガス事業者単位の供給区域内利用率を、料金規制の移行措置除外の指標とするとの提案に対して「サンプル調査から原則75%以下は他エネルギーとの競争状態があり、そのガス事業者全体を移行措置から外してもよいのでは」との趣旨の発言もあったようですが、これでは、公営事業者を除き約9割のガス事業者が移行措置の対象から外れることとなり、実質的に公共料金としては骨抜きとなります。ガス自由化においても、公共料金として保護すべきであるとの大前提を崩すことは問題です。

供給区域内利用率を移行措置適用基準の1つとするのであれば、消費者保護の見地からの競合基準は、約3割とすべきとの指摘もあります 。20%の消費世帯が他燃料だから競争状況が激しいとの評価により、残りの80%の消費世帯の料金規制を外すことは、他燃料に転換できない80%の消費世帯にとっては、規制の撤廃による料金保護のメリットを失うことになります。

諸外国の例を見ると、自由化後、むしろ料金は上昇していますが、欧州や米州の大半では、上限価格となる家庭規制料金の保護策が残っていることに注目すべきです。上限価格となる料金規制を残しても、ガス事業者の多様な値下げ設定には支障にならなず、むしろ安易な料金規制の緩和や撤廃は、料金値上げに対する事前の歯止めがなくなり『消費者利益の阻害』になります。

以上の理由から、次の2点を要望いたします:

1.移行措置は原則必要とするとともに、移行措置除外基準は消費者代表も含めた委員会で上限価格設定の導入も含めて決めること。

2.  ガス事業の競争状態については、全国一律で判断するのではなく、各地域での競争状況を第三者的な立場から具体的に監視する、消費者代表も含めた機関を設けて地域やガス調達形態などガス事業の実状に応じてキメ細かな判定基準の下に判断すること。

2.ガスに特有の自由化に伴う料金高騰化監視の必要性と他省庁との連携について

現実的な問題として、電力は(旧)一般電気事業者と新電力間の競争、(旧)一般電気事業者同士の競争、と分かりやすく、かつスイッチングコスト(消費者が供給者を切り替える・乗り換えるコスト)がほとんどかかりませんが、ガスの場合は他のエネルギー源との競争もあり、自由化により消費者の選択肢が増えるとは言い切れません。

ガスにおいては、都市ガスからLPG、またその逆であっても機器の交換が必要となり、ガスから電力、またその逆であっても大幅に家庭内機器の交換・買い替えが必要になります。

変更するにも、元のエネルギー源に戻すにも、非常に大きなスイッチングコストが掛かります。たとえば、オール電化に乗り換えた人が、都市ガスが安くなったからといってヒートポンプ給湯器や貯湯槽を捨てられません。事業者側からすると、「消費者にとって、単価では乗り換えたほうが単純計算上得であるが、スイッチングコストをなかなか回収できない」というギリギリの線まで値上げすることが可能となります。

ガスに限らず、このような競争環境の場合、それぞれのエネルギー単価を少々下げたとしても、他のエネルギー顧客をガスに切り替えさせるさせることは困難であり、異なるエネルギー供給業者間で、過剰な顧客獲得競争が起こるとは考えにくいといえます。むしろ、暗黙の紳士協定のようなものが作用し、一種のカルテルのような形で消費者利益を阻害することが懸念されます。

都市ガス事業者はLPGレベルまでジワジワと値上げしようとし、その一般ガス事業者の心理が分かっているLPG業者もジワジワ値上げする、ということが起こる可能性も否定できません。一般ガスもLPGもこれをやりすぎると、オール電化に変更するでしょうが、スペース的や住宅構造上、電化できない人、心理的に電化は嫌だ、という消費者は存在します。

 競争環境の整備は必要ですが、消費者保護を考えるのであれば、この面でも上記の要望2で述べた消費者代表も含めた競争監視第三者機関の設置が必要です。

「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」(液石法)は、LPガスについては標準価格表の公表と個別に供給条件が違う場合における消費者トラブル例も報告されています。

また料金値上げ申請を公表しないガス事業者が多いなか、料金改定を届出制とした場合には「著しく不適切な料金設定により大問題」と判断されても事後命令による改善となり、その間に消費者利益が損なわれます。自由化後は、料金約款の審査段階で届出制料金規制が働くとされていますが、変更命令が出るまで消費者不利益となりますし、変更命令の発令基準自体も厳密な検討が必要です。

新規参入がない既存ガス事業者の少量需要料金が、新規参入との競争の激しい多量需要料金からのコスト補填を受けられずに料金値上げをする場合でも、行政による事前のコスト検証と消費者への丁寧な説明による透明性を確保することにより、消費者に安心感と納得感を提供すべきです。また、自由化における料金監視は他の消費者保護規制をふまえて、どの省庁における監督が適当かの議論もなされるべきです。

 

以上から、次の2点を要望いたします:

3 料金改正は届出制ではなく、申請段階で料金の妥当性を検証し是正できるようにすること。

4 小委員会で、あらためて消費者庁、公正取引委員会等との役割分担の議論をすること。

以上

 

[1] 都市ガスの料金競争がおきているかどうかの評価には、消費者の利用実態や消費志向を考慮する必要があります。どのような理由で都市ガスを選択利用しないのかの分析が重要ですが、導管の敷設があっても他のエネルギーを利用しているのは、オール電化やLPガスが、都市ガスより割安なものであることと、器具の買い替えの負担が考えられます。小委員会資料は「各地域における新規参入者の分布を見ると、新規参入が活発に行われているのは、関東、関西及び中部と、いずれも大手ガス事業者(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス)の供給区域内である」としており、実際には新規参入者が少ない地域も相当にあります。このことは、市場原理、即ちガス事業の採算性に起因するものと考えられ、地域によっては大口需要家向け市場だけでなく、家庭需要向け市場での新規参入を見込める可能性も低いと思われます。

一般ガス事業者の供給区域内における家庭用需要に関する普及率は、全国平均で約70%、都市部に供給区域を有する第1グループでも約80%となっており、ガス導管が普及している地域でも、平均で約3割、都市部でも約2割の利用者は、LPガスやオール電化など、他のエネルギー源を利用しているものと考えられます。

なお、ガス導管が比較的普及している三大都市圏の供給区域においても、需要家が新たに都市ガスの利用を希望する場合、需要家宅の近傍までガス導管が延伸していないので、その引込みの「工事負担金制度」としてガス事業者が負担する一定額以上の多額の費用を需要家に求めるような“都市ガス未普及の地域”は今も点在します。特に山間や郊外など田園地域では、供給区域となる「市区町村字」単位が都市部に比べて相当に広いため、供給区域内であってもガス導管の未普及区域が広く、区域周縁の供給区域外と同様に負担を伴うことがよくあります。地方ガス事業者ほど都市ガス普及率は低いという傾向がある都市ガスの供給区域内であってもガス導管が未普及の区域では、ガス導管引込みの追加負担を諦めてオール電化やLPガスを利用することになります。都市ガスが選択肢になり得ないにも関わらず、それを分母とした都市ガスの供給区域内普及率を他燃料との競合指標とすることは、競争実態を正確に反映しているとは言えません。競争実態を正確に把握するには、ガス導管を需要地に引込む場合に需要家負担のない地域に限定した全世帯における都市ガス利用者の割合とすべきです。


(参考)

2014年5月27日

 

ガスシステム改革小委員会

  委員長 山内 弘隆 様

 

 

需要家保安に係る保安責任のあり方についての意見

エネルギーシステム改革市民委員会

第8回の小委員会においては「需要家保安に係る保安責任のあり方」が論点となるということですが、新規参入者、ガス市場整備課、ガス安全室だけでなく一般ガス事業者間でも自由化後の保安体制については意見が分かれているとされています。

消費者としては、自由化における消費者メリットである、ガスの安全な安定供給、料金の抑制、需要側の選択肢と事業者の機会の拡大による一層の料金抑制やサービスの向上を望むものですが、ガス漏えい(着火災、爆発)やガス器具不完全燃焼の事故は、広範囲に死傷者が出る可能性もあることから、今後、保安責任がどう制度設計されるかは関心の高い問題です。特に今回の自由化の対象である住宅併設店舗や一般家庭における1万立方メートル未満の需要家には大口需要家のような保安能力を期待できず、これらの需要家の給湯機器や厨房機器などの消費機器において事故が多いとされています。以下のように意見を述べます。

1 現行か、より一層安全の担保される保安基準を維持しつつ、自由化による新規参入の促進による業界の活性化を図るためには、適正かつ合理的な保安制度を構築し、その経過措置として保安は従前の都市ガス事業者に委ねることとし、小売りについては別事業としての新規参入を促進すべきである。

2 小売り事業については、競争によるコストダウンを促進させるべきである。

電力自由化とも足並みをそろえて、公正な競争環境のもとで、地域独占の枠を外すこと、同種の他業種との相互乗り入れ、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなどの総合的なエネルギー効率を高める取組みなどができる環境をより一層促進させるべきである。

3 保安の重要性を強調するあまり、新規参入者に保安についての過剰な負担を課すことにより参入の障壁となることは、新規サービスへの取り組みが後退することにつながり、消費者利益を害する恐れがある。

4 保安については、料金が低廉化することも重要ではあるが、保安水準が低下することで需要家の身体、財産の安全が損なわれてはならない。

一方で、保安責任分担のありかたも、家庭用消費者におけるガス消費機器の事故件数が多い一方、保安にも要求されるレベルが異なること、技術進歩によりマイコンメーターなどの活用で代替できることもあることから、すでに自由化されているLPガスや海外の事例なども勘案して、定期保安と緊急保安の保安に必要な種類を類型化するなどして安全を保持しつつ、合理的な保安水準保持をすべきである。

5 保安不備に起因したガス事故においては、損害賠償能力(資力)ある業者が最終責任を負うべきとの意見もあるが、賠償能力と保安責任は一体として考えるべきものではなく、それぞれの事故原因により責任の所在は異なると考えられる。賠償責任保険によって担保することも考えられる。

以上

(注)本意見書では、「ガス」「ガス事業」とは一般ガス事業(いわゆる都市ガス)を指します。


(古賀 真子

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